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意味がわかると怖い話:「階下の男」(2/2 ページ)

足音をめぐるトラブル。

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「階下の男」解説

 「下の男」が聞いていた足音は、どうやらとうに正気を失っていた彼の幻聴だったようです。しかし、男の主観的には「このアパートは壁と床が薄く、ある室内で生じた音は近隣に筒抜けになってしまう」ことは〈事実〉でした。

 2週間ほど前の(本当は存在しない)足音に対して強い怒りを抱いていた階下の男。そんな彼が、語り手にカーペットと壁用のシートを贈ったのは、「部屋の防音を強化させる」ためでした。その上で、「何か」を浴びてもすぐ脱げて洗い流せるレインコートを着込んで何をしようとしてるのか……説明するまでもありませんね。

 

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 今回の話は、筆者の体験談がモデルになっています。大学時代に一時期住んでいた部屋で、隣の部屋の男性から「〇〇がなくなった、キミが盗ったんだろう」とたびたび言われることがありました。軍手や靴下と言った、盗まれるようなものじゃない、そしてどこかによく紛れそうなものばかりでした。

 ある晩、夜中に私はふと目を覚まし、部屋の外にあるトイレに向かおうとドアを開けました。するとドアの前に、隣の住人が立っていたのです。驚いて「何してるんですか?」と訊ねると、彼はニコッと笑って「今夜から毎晩、キミのことを見張ることにしたんだ」と言いました。

 さすがに怖くなった私はそのまま部屋を出て、歩いて行ける大きな駅前のカプセルホテルに宿を取り、翌日その足で引っ越し準備を始めました。あのまま彼の隣に住んでいたら、何か取り返しのつかないことになると思ったのです。

 空想癖の豊かな人(やわらかい言い方)って怖いですね!

 ところでひとつ困った点を挙げるなら、その部屋はアパートではなく祖母の家の一室であり、「隣の部屋の男性」は、今でも法事などで顔を合わせる叔父だということでしょうか。

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白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba

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