20代後半で出会った「ポポロクロイス物語」を25年間追い続ける ファンサイト管理人の半生
2000年から続くファンサイト「ポポロクロイス探偵局」管理人さん。
毎年のように話題の新作が登場するゲームの世界。その一方で、長年にわたって同じ作品を遊び続けている人たちもいます。そこで本記事は「10年以上、同じRPGを遊び続けている方」にその作品と出会ったきっかけ、遊び続けている理由などを伺う読者募集企画。
今回は、「ポポロクロイス物語」シリーズのファンサイト「ポポロクロイス探偵局」を21年にわたって運営している、ぱぐ☆5匹さん(@pugfive)にお話を伺いました。
「ポポロクロイス物語」とは
「ポポロクロイス物語」は、1980年代に朝日小学生新聞にて連載された漫画作品(作・田森庸介さん)。1990年代以降、同作を原作とするゲーム、アニメが登場した。
ゲーム版初代作「ポポロクロイス物語」(PS)は1996年7月に発売。暖かみのあるグラフィック、ポポロクロイス王国の王子ピエトロの成長、家族愛などを描いたストーリーが高く評価され、「PS黎明期の名作RPG」と評されることも。
ピエトロとの旅立ち
「ポポロクロイス物語」を初めて知ったのは、私が20代後半のころ。ゲーム雑誌を読んでいると初代作「ポポロクロイス物語」の紹介記事があり、その独特な絵柄の雰囲気、キャラクター、アニメーションなどに強く心をひかれました。
―― 当時のゲームファンなら遊んだことはなくとも、まるで絵本のようなキャラデザなどに見覚えがあるかもしれませんね。
発売当日、ワクワクしながらオモチャ屋さんに買いに行って、主人公ピエトロ王子に思いっきり感情移入して、二人三脚でありつつも一人称の冒険を進めていきました。
今でも強く印象に残っているのが、スタッフロールで流れる主題歌「ピエトロの旅立ち」です。歌詞で描かれるピエトロの冒険と成長の軌跡がなんともうれしい一方、「これで冒険は終わってしまうんだ」という一抹の寂しさ。そんなないまぜになった気持ちを抱きながら、当時まだブラウン管だった画面を眺めていたことを思い出します。
いまだにカラオケでこの曲を歌おうものなら、あらゆる記憶がよみがえってきてしまい、涙なしには歌えない、聴けないというありさまです。
※涙なしには歌えない、聴けない:「ポポロの主題歌の破壊力はシリーズ作全てに当てはまります」とのこと
―― ぱぐ☆5匹さんにとっての「ポポロクロイス物語」シリーズの魅力とはなんでしょうか。
一番の良さは「優しさ」でしょうか。
エンディングを迎えた後、心の底から温かな気持ちが湧いてきて、「その世界のキャラが幸せでいてくれることが本当にうれしくてたまらない」と感じずにはいられない、そんな優しさにあふれた作品だと思います。
それから、「ポポロクロイス物語」シリーズは小説「ポポロクロニクル」を含めるとピエトロのお父さん(パウロ国王)、ピエトロ、その息子・ピノンの実に3世代にわたるストーリーなのですが、過去作では謎だった世界の秘密が後続のシリーズ作で明かされていき、追いかければ追いかけるほど奥行きが広がる世界観にも大きな魅力を感じています。
ファンとしてはうれしいことに、最新作「ポポロクロイス物語 ~ナルシアの涙と妖精の笛」(iOS/Android)では今なお新たな物語が紡がれていて、私は「その内容を踏まえたうえで、過去のシリーズ作を最初からプレイしなおす」という楽しみ方をしています。
そうすることで新たな視点で物語に触れることができますし、さらにプレイ回数を重ねていくと、以前は気付けなかったことにも気付けるようになり、ポポロの作品世界をより広く大きく感じられるようになっていきます。
―― 各作品のストーリー自体は変わらないけど、見え方が変わっていく。そこに同じ作品を遊び続ける楽しさを感じたわけですね。
物語の大きな流れを楽しんだり、各作品のつながりを考えたり、まだ解き明かされていない謎に思いをはせたり……と、いろいろな面白さがあります。ちなみに、初代作発売から25年たった今も、答えがありそうで見つからない謎がいくつも残っていて、探求のしがいが大いにありますね。
21年間続くファンサイト「ポポロクロイス探偵局」
初代作をクリアして原作漫画を読んで以降、私はゲーム雑誌でポポロ情報を積極的に集めはじめ、アニメ版、ゲーム版続編の放映/発売日を心待ちにするように。どの作品もリアルタイムに追いかけてきました(※)。
※どの作品もリアルタイムに:ゲーム版第5作「月の掟の冒険」(PS2/2004年発売)に関しては「当初はアニメ放映より先にゲームが発売される予定だったのですが、制作の遅れのためにアニメ放映が先に。ゲームを終えるまで、アニメ視聴を封印していました」とのこと。
―― ファンサイト「ポポロクロイス探偵局」を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?
「ポポロクロイス物語2」(PS/2000年発売)をプレイし終えたときに「こんなにも素晴らしくて、いとおしい物語が終わってしまう。この気持ちをどこにぶつけたらいいんだろう」「よし、それじゃあ、ファンサイトを立ち上げてポポロの良さを世に訴えていこう」と。
それまでにも「ファンサイトを作ってみたい」という気持ちはあったのですが、すでにいくつもあったので「でも、後から立ち上げるのもなあ」と踏ん切りがつかなかったんですよね。そこにクリアしたときの幸福感と寂寥感で、一気に火がついた感じです。
ただ技術的には「Webサイトってどうやって作るの?」「HTMLって何?」という状態。大いに苦労しましたが、今となっては良い思い出です。
「ポポロクロイス探偵局」ならではの要素として力を入れてきたコンテンツの1つは、非売品を含めた関連グッズを紹介する「ポポロ資料館」。販促用のポップなど一部は入手できていませんが、ほぼほぼ網羅しているという自負があります。
また、現在は設定解説、考察などを行うコラムのコーナー「ポポロ広場」が主力となっています。以前のように毎週更新をするのは難しくなっていますが、それでも常日頃からポポロの世界の謎や出来事の関連性について考えているので、頭の中でパズルのピースがガコン! とはまるたびに、思うところを書いています。
コラムの文章は年月を重ねるにつれて長くなっているので、それだけポポロの世界への見識や思い入れが強く、深くなっていることの証だと思います。考えれば考えるほど、深く知れば知るほど、広がりを見せてくれるのもポポロの魅力の1つなのでしょう。
―― それから現在まで、約20年にわたってサイト運営を続けてきて良かったことは?
人の縁が広がったことが何よりの宝です。
オフ会で知り合ったファン仲間の結婚式に招待してもらったり、出会ったころは高校生だった方が、今では立派な飲み仲間になっていたり……。
―― 「ポポロクロイス物語」のオフ会って、よく行われているんですか?
東北オフ、関東オフ……と各地で開催されたり、コミケ終わりに集まったりと、いろいろな形で行われてきました。
私が主催している名古屋オフに関して言うと、2000年からほぼ年1回のペースで続いています(コロナ禍のため2020年以降、開催が難しくなっていますが)。
2018年の名古屋オフでは、開催日が「ナルシアの涙と妖精の笛」リリースの約1週間前だったこともあり、開発元epicsの代表取締役社長で、ゲーム「ポポロクロイス物語」シリーズの歴代プロデューサーの山元哲治さんに意を決してお誘いを投げかけてみました。
短い時間ながら本当にご参加いただけることになり、すさまじいサプライズになりました。
また、同年末には「ポポロクロイス物語」の原作漫画生誕40周年記念として開催されたポポロ初の公式イベント「ポポロファンフェスタ2018」がありまして。会場運営にある程度の人手が必要ということで、実行委員会からお声を掛けていただき、スタッフの一員として関わることができたのも貴重な思い出になっています。
これから「ポポロクロイス物語」を楽しむなら
ポポロの各作品のストーリーは、どこから手を付けても楽しめるようになっています。ただ全く触れたことがないなら、やはり2021年で25周年を迎える初代作からプレイすることをオススメします。
特に「ピエトロとナルシアがどのようにお互いを想う気持ちを抱くようになり、その想いをどう育んでいったのか」「そして、想いの行き着く先は?」といった点に注目しながらプレイすると、最新作(ナルシアの涙と妖精の笛)まで楽しめると思います。最初はあんなに初々しかったのに……と、これ以上多くは言えません(笑)
本企画では取材させていただける読者の方を募集しています
関連記事
“1000回遊べるRPG”を4000回遊んだ男 「SFCトルネコの大冒険」に挑み続けるプレイヤーが語る「不思議のダンジョンには、まだ不思議がある」
求道者のごとく追い求める「トルネコ」の理論的限界。「竜退治はもうあきた!」 ドラクエファンが「メタルマックス」を30年間遊び続けることになった理由
発売当時からプレイし続けている方(シリーズ、派生作も含む)。【10年以上同じゲームをやってる人取材】中学生→二児の父親になるまで「テイルズ オブ デスティニー2」をやっても飽きない理由
主人公と同じくらいの年齢で始めて、今では30代。【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】不条理で猥雑な「クーロンズ・ゲート」の世界に心を奪われて、もう23年たってしまいました
「ハマった人の心には永久に残り続ける作品と思います」。【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】「メタルスラッグ4」を遊び続けることになった17年前の約束
「目隠し状態でプレイしてコンテニュー数を10回以下にできる」レベルでやり込んでいるとのこと。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.