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6歳の少年が目指した「完乗」ドリーム 「こうして私は“全線完乗”した」 苦節50年、漢乗り鉄涙の記録(3/5 ページ)

6歳の少年が目指し、50年かけてついに達成した鉄道旅客路線「完乗」。どんな思いでその夢を追い続け、そして到達したのでしょう。感動物語です。

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「完乗」のルールはいろいろ 最も大切なのは……?

 「完乗」にはルールがあります。鉄道ならどこまで対象とするかです。レールがあって列車が走ればいいというわけではありません。遊園地の乗り物なども対象とすればキリがありません。いや、今は情報が入手しやすいから対象にしても良いような気がしますが(笑)。


鉄道路線だけを網羅した市販の地図「全国鉄道旅行」(昭文社)で乗車路線を塗りつぶした。乗っていない路線がひと目で分かる

 多くの乗り鉄は「鉄道事業で定められた鉄道と索道のうち、鉄道の路線」を対象としています。

 鉄道事業は国の許認可事業です。建設、運行には届出が必要です。従って国土交通省鉄道局の「鉄道要覧」という台帳に記載されています。これが根拠になります。索道はロープウェイやリフトのこと。これらは対象外となります。私は乗りもの好きですから、行った先にロープウェイやリフトがあれば乗りますけれど、記録はしません。

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 鉄道の定義には、一般的な鉄道のほかに、モノレール、ケーブルカー、新交通システム、磁気浮上式鉄道も含まれます。ただし私有地で完結するものは遊具または施設として対象外となります。

 例えば、ディズニーリゾートライン(関連記事)は鉄道事業ですが、園内のウエスタンリバー鉄道は遊具です。大井川鐵道のSL・きかんしゃトーマス号(関連記事)は鉄道ですが、富士急ハイランドのトーマスとパーシーのわくわくライドは遊具です。鉄道好きとして乗りに行きましたけれど記録しません。

 それから、貨物専用線、車庫との出入りに使う線路など、旅客列車が走らない路線も乗れないので対象としません。「日本の鉄道旅客路線を全線」という書き方なのはそれが理由です。最近は貨物線に乗れるツアーもあり、もちろん興味深くて乗りに行きます(関連記事)けれど、乗車路線としては記録しません。

 逆に、旅客路線でも乗りにくい区間があります。津軽線の新中小国信号場~海峡線大平分岐部は、北海道新幹線開業前は特急「白鳥」、寝台特急「北斗星」、寝台特急「カシオペア」が走っていました。2021年現在はカシオペアの団体列車ツアー、豪華クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」(関連記事)しか通りません。

 ここから先はルールが個々異なります。私は「地図の路線を塗りつぶすだけ」という、もっともハードルの低いルールです。当初は「乗っていれば寝ていてもいいや」でした。寝台特急では眠ったまま乗車する区間も長距離を塗れます。でも最近は「なるべく景色を見たい」と思っていて、日の出から日没までと心掛けています。寝台特急で寝ていた区間も、旅を続けるうちに昼間に乗る機会があります。いまも暗くなって景色を見ていない路線は乗り直そうかなと思っています。

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 さらに上級ルールは「全ての駅で下車する」「複線では上り線と下り線の両方乗る」「運行会社が変わったら乗り直す」などがあります。なかなか大変ですね。私とは違う考え方です。当人は楽しんでいるはずです。

 乗ったことは個々で記録し、誰かが証明してくれるものではありません。決められたスコアブックなどもありません。「自分で記録する」だけです。「自分が満足できる」が一番大事です。他人に証明する必要もありません。ウソをついて完乗したと言ってみても、自分が虚しいだけです(笑)。

「完乗」の旅で良かったこと、役立ったこと

 完乗を目ざす旅は趣味です。遊びです。自己満足が大事です。実用面に期待してはいけません。

 しかし、旅を続けて良かったなと思うことはいくつもあります。旅先には発見が多く、未知の経験がたくさんあります。

 北海道の空の広さ、日本にも地平線があること。峠を越える列車に乗れば、分水嶺を通ると川の流れの向きが変わります。伊予灘の夕陽、肱川の雄大さはドイツの絶景、ローレライに通じます。桜島の噴煙に大地のチカラを感じ、開聞岳の美しい山の形に魅了されました。

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 食べ物も行く先々で変わります。もっとも驚いた経験は北海道のお新香巻き。ほとんどの地域ではお新香巻きというと黄色いタクアンですよね。でも北海道は茶色のキュウリの古漬けです。カンピョウ巻きか、具が腐ってのるかと思ってしまいました。古漬けお新香巻き、おいしい。

 日常生活でも旅した経験は役に立っています。ほとんどの人とちょっとだけ地元会話ができます。出身地や最寄り駅を聞けば、大抵近くで列車に乗っているわけですからね。完乗率が50%くらいの会社員のころ、営業トークに役立ちました。景色や食べ物の話をして「自分のふるさとを知っている人、好感を持ってくれた人」には、誰しも親近感が沸くもの。営業マン的には「ツカミはOK」です。今は……そうですね、ゲームタイトル「桃太郎電鉄」などがちょっと有利かも。行先も名産も道順も見当が付きますからね。

 ずっと後で気が付いたんですけれど、これって趣味の本能「全て集めたい」なんです。

 地図を広げて、乗った路線を黒ペンで塗りつぶしていきます。トレーディングカードをコレクションブックに収録していく快感に似ています。アイテムを収めるRPGやアドベンチャーゲームのようでもあります。全部集めたい。全部乗りたい。「乗車路線のコレクション」です。意地の悪い人に出会うかもしれませんが、鉄道にモンスターはいません(笑)。どの路線も楽しい旅でした。

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