年に1度だけ、わずか15分のレア体験 秋田港の「貨物線」特別列車に乗ってきた:月刊乗り鉄話題(2018年8月版)(1/3 ページ)
あのレア列車「あきたクルーズ号」に、年に1度だけ安く乗れるチャンスがありました。乗ってきましたよ。
秋田県の秋田港へ、珍しい列車に乗ってきました。「あきたクルーズ号」といいます。列車でクルーズと言えば、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」(関連記事)やJR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」(関連記事)のような豪華観光列車を連想します。しかし「あきたクルーズ号」のクルーズは本来の意味の「クルーズ船」です。秋田港駅と秋田駅を結び、秋田港に寄港するクルーズ船の乗客を送迎するための列車です。
いま、世界的にクルーズ船の旅が人気です。日本では豪華客船として紹介されます。しかし、1泊当たり食費込みで、船内エンターテインメントもほとんど無料という船を選べば、意外とお手軽なツアーもあるそうです(関連記事)。国土交通省によると、2017年は日本の港にクルーズ船が2764回も寄港し、過去最高になりました。このうち、秋田港にも21回クルーズ船が寄港しました。
全国の自治体でクルーズ船の誘致が活発に行われる中で、秋田県は2018年4月に東北地方初のクルーズターミナルを完成させました。この秋田港と秋田駅を結ぶアクセス列車として、JR東日本が運行する列車が「あきたクルーズ号」です。2017年に試験的に運行した時は、ローカル線用の気動車を使い、秋田港への乗降は非常用スロープのような貧弱な設備でした。しかし、2018年からは本格的に取り組みました。専用車両の列車を仕立て、秋田港駅にプラットホームを建設し、バリアフリーにも対応しています。
乗り鉄から見て、あきたクルーズ号の魅力は2つ。1つは「貨物線ルートを走る」こと。秋田クルーズ号は、秋田駅〜土崎駅間は奥羽本線を走ります。土崎駅〜秋田港駅間は「貨物線」です。ふだん旅客列車が走らない貨物線に乗れるのです。関東では時々、JR東日本と旅行会社がタイアップして「貨物線乗車ツアー」が行われます。これも大人気。だから秋田の貨物線にも乗りたい。乗ってみたい!
もう1つは「クルーズ船客専用列車に乗れる」こと。前述したように、あきたクルーズ号はクルーズ船のお客さんのための列車ですから、きっぷを一般販売しません。土崎駅〜秋田港駅間はたった1.8キロですけれど、総額で10万円以上もするクルーズ船ツアーに参加して、秋田を観光するオプションツアーに参加しないと乗れません。いくら乗りたくても少しハードルが高いのです。
年に1度、「秋田港海の祭典ツアー」ならば1400円で乗れる!
そんなあきたクルーズ号に乗れるチャンスが巡ってきました。去る2018年7月28〜29日に開催された「秋田港海の祭典」に行く人のために「あきたクルーズ号だけに乗れるツアー」が発売されたのです。料金は大人1400円。小人1200円。参加申し込みは2人から。年に1回、かなり高額なクルーズ船ツアーに参加しなくても、1人たったの1400円であきたクルーズ号に乗れるのです。
しかもこのツアーは、料金に道の駅秋田港のお買い物券500円分と、秋田駅ビルのお買い物券500円分が含まれています。差し引くと往復乗車費用としては大人400円、小人200円です。えっ、いいんですか、JR東日本さん。もっともうけてもいいんですよ。列車にもプラットホームにもおカネかかってるでしょ?
……と大企業のお財布事情の心配はそこそこに、早朝の秋田駅へ行ってきました。
今回は7月29日の初便となる8時発の秋田港行きに乗りました。前日の28日は秋田港行きが5本、秋田行きが6本でした。花火大会があったため、秋田港駅22時発の列車も設定されていました。29日は秋田港行きが4本、秋田行きが5本です。混雑を避けるためか、往路のみ列車を指定します。8時発は早い時間だったのでお客さんは少なめ。先頭の展望室付き車両に座れました。
あきたクルーズ号に使われている車両は、2016年まで「リゾートしらかみ」(関連記事)として使われていた観光車両です。リゾートしらかみ時代は「ブナ編成」と呼ばれ、緑色を基調としたデザインでした。これがあきたクルーズ号に改装されて、白と青が基調のデザインになり、いかりやかもめのイラストが添えられています。
あきたクルーズ号は4両編成で、両端の2両は運転台付近に展望スペースがある座席車です。中間の2両はコンパートメント、仕切り扉のない個室です。眺望重視ならば座席車、荷物が多いときやグループでワイワイガヤガヤと楽しむならコンパートメントが良さそうです。もっとも、乗車時間は15分。近いっ。秋田港、近いよっ。もっと乗っていたいよ……。
秋田駅を発車した列車は、奥羽本線を特急並みのハイスピードで走ります。車窓の見どころは進行方向左側の「貨物駅」と、進行方向右側の「秋田総合車両センター」。機関車とかコンテナ貨車とか、列車の車庫を眺められます。速度が高いので一瞬ですけれど、秋田総合車両センターには解体を待つ「583系寝台電車」が! ……(涙)。
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