ニュース

『連ちゃんパパ』作者が描く「あだち充を漫画家にした男」の豪快エピソード! 『あだち勉物語』ありま猛インタビュー(1/3 ページ)

昭和の漫画業界はすさまじかった……!

advertisement
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 パチンコを題材に、ほんわかした絵柄でギャンブル中毒をシビアに描き、2020年のネット上で大いに話題になった怪作『連ちゃんパパ』。その作者であるありま猛さんは、漫画家あだち充さんの兄であり自身も漫画家だったあだち勉さんの弟子であり、そして赤塚不二夫さんのフジオ・プロに所属して腕を磨いたという、昭和漫画史の証人でもありました。

 そのありまさんの新作が、『あだち勉物語 ~あだち充を漫画家にした男~』。サンデーうぇぶりで連載され、このほど第1巻が発売となりました。かつて発売された、あだち勉さんを描いた漫画『あだち充物語』になぞらえたタイトルから分かる通り、この作品はありまさんの記憶にあるあだち勉さんの破天荒なエピソード、そしてフジオ・プロをはじめとする当時の漫画家や編集者たちの姿をコミカルに描いた群像劇です。

 というわけで、この単行本発売に際してありまさんへのインタビューを再び敢行! 破天荒ながら漫画好き以外にはなかなか伝わってこなかったあだち勉さんの人となりを、あらためて語ってもらいました。一体「あだち充の兄」は、どのような人物だったのでしょうか……。

advertisement

インタビューがきっかけで世に出た『あだち勉物語』

――『あだち勉物語』が始まるまでの経緯を、あらためて教えてください。

ありま 勉さんが亡くなった後も、勉さんを知っている人たちで集まって定期的に飲んでいたんです。だいたいみんな昔のフジオ・プロのアシスタントとかなんですけど、「俺もあのいたずらをやられた」とかそんな話ばっかりしていて。つまみがいらないくらい勉さんの話だけで間が保つ(笑)。そういう話をしてる時に、誰かに「これ、漫画にしたらどう?」って言われたんです。

――そこがこの作品の原点だったわけですね。

ありま そうです。それじゃあ……とどんな漫画にしようか考えてみて、最初の2話分くらいのネームを作ってみたんですよ。その頃に『連ちゃんパパ』がネットで話題になって、ねとらぼさんがインタビューに来て、そこでぽろっと勉さんの話が出たことで今回の連載に結びついたんです。棚からぼたもちというか(笑)。

――あのインタビューでも話題になっていましたが、漫画を読むと改めて勉さんの破天荒さがよく分かります。しかし、『あだち勉物語』に描いてあることってどこまで実話なんでしょうか……?

advertisement

ありま ほぼ実話です。そのままでは漫画にならないから脚色も多少はしてますが、例えば3話に出てくる牛乳のいたずら(牛乳と嘘をついて原稿修正用のホワイトを水で薄めたものを他人に飲ませる)とかは実際にやってましたね。あれ、トキワ荘の人たちの間では定番のいたずらだったようで。勉さんはそれは知らなかったみたいだけど、赤塚先生はいたずらだって分かってて飲んだんじゃないかな。

これ、実際にやったそうです

――すごい……。

「迷惑な人」あだち勉とギャンブル

――早くも強烈なエピソードの数々ですが、勉さんってどんな人だったんですか?

ありま 一言で言うと「迷惑な人」ですね! 人が困るのが大好きだから理屈をこねて他人を困らせるし、相手がうろたえればうろたえるほどうれしいんだけど、特に困らないで平気だと逆にむくれちゃう。

 あと、寂しがりやでもありました。そのへんは赤塚先生にも似ていたと思います。赤塚先生もいざとなるとシャイな人で、テレビの取材を受けたりすると照れ屋だからお酒を飲んでから行ってました。「緊張してしゃべれない」と言ってましたけど。だから赤塚先生と勉さんはウマが合ったんだと思います。

advertisement
いたずら大好き!
そして実は寂しがりや……

――お酒といえば、勉さんはお酒はどうだったんでしょうか?

ありま それが、赤塚先生と知り合うまでは全然飲まなかったんですよ。どうやらお父さんがけっこう飲む人で、何があったのかは知らないですが、それを反面教師にして飲まなかったようです。その後赤塚先生と知り合ってからは飲むようになって、「俺は自分で下戸って言う奴のことは信じねえ」とか言ってました。

――へー! 意外ですね。

ありま だから『あだち勉物語』の1巻のあたりの時点では、本当は全然飲んでないんですよ。酒も飲まずによくあんな馬鹿騒ぎができるもんだなと思いますけど(笑)。その後、充さんのマネジャーをやるようになってからは、もう朝起きたら飲んでるような感じでした。編集者と飲みに行ったりという用事もあって、「飲まないわけにはいかない」って言ってました。

――お酒以外の遊びも、ありま先生はいろいろと勉さんに教えられたりしたんでしょうか?

advertisement

ありま 教えてもらうというより、逃げられないんですよ。「必ず来い」「いくらお前が独立して単行本を出そうが偉くなろうが、師匠は俺だ」「選んだお前が悪い」っていう理屈ですから。だからもう、いろんなところに引きずり回されました。やっぱり麻雀が一番多かったですね。フジオ・プロで麻雀を広めたのも勉さんだし、1人でフリーの雀荘行ったりしてましたよ。夜中に緞帳張ってやってるような、ヤミの雀荘とかも付き合わされましたね。

フジオ・プロに麻雀を広めたのは勉さんだった

――おお、それはまたアンダーグラウンドな……。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  2. 高校生の時に出会った2人→つらい闘病生活を経て、10年後…… 山あり谷ありを乗り越えた“現在の姿”が話題
  3. ディズニーシーのお菓子が「異様に美味しい」→実は……“驚愕の事実”に9.6万いいね 「納得した」「これはガチ」
  4. プロが教える「PCをオフにする時はシャットダウンとスリープ、どっちがいいの?」 理想の選択肢は意外にも…… 「有益な情報ありがとう」「感動しました
  5. 「防音室を買ったVTuberの末路」 本格的な防音室を導入したら居住空間がとんでもないことになった新人VTuberにその後を聞いた
  6. 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  7. 間寛平、33年間乗り続ける“希少な国産愛車”を披露 大の車好きで「スカイラインGT-R R34」も所有
  8. 「もしかしてネタバレ?」 “timeleszオーディション”候補者がテレビ局を退社 ディズニーの“船長”としても話題
  9. 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
  10. グルーミングが出来ない生まれたての子猫、とんでもない体勢になり…… 想像以上のへたくそっぷりに「どこにも届いてないww」「反則級」