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負けヒロイン側のアラサーを描くと聞いたときは死ぬかと思った 『ハイスコアガールDASH』28歳教師・日高小春の輝きあのキャラに花束を(2/2 ページ)

格ゲーがめっちゃ強い28歳の女の先生なんて、好きになっちゃうじゃん?

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ガーディアン・フォボス

 前作『ハイスコアガール』では、メインキャラにそれぞれ魂のキャラが存在していた。ハルオはガイル(「ストリートファイター2」)。何が何でも勝つために向き合う、勝利への執念を表したキャラだ。大野晶はザンギエフ(「ストリートファイター2」)。みんなに弱いと虐げられ苦しみ続けていた当時のザンギエフの姿に、抑圧された生活を送っていた彼女の思いがシンクロし、耐えつつ粉砕するキャラとして表現された。

 そして高校生小春に芽生えたのはフォボス(「ヴァンパイアハンター」)だ。フォボスは複雑な操作を要求されるテクニカルキャラで、あの手この手と技術を駆使し、遠距離近距離問わず対応し戦うキャラクター。中でも「コンフュ―ジョナー」という技は、相手を浮かせることで有利を取り即死コンボをたたき込むことができる(とはいえ難しいです)。この技術を駆使しながら多角的に攻め、つかんだら一気に押し切るスタイルは彼女の恋愛での姿勢に完全にシンクロ。

 前作でハルオとの大切な試合に負けた後、手段ではなく心からゲームに夢中になったことで、フォボスが彼女の心に目覚めた演出はうまいなーと思ったものだが、今回10年を経てよみがったフォボスは「押す」ためのキャラクターではなくなった。この覚醒シーンがマンガらしい表現を駆使しどえらいかっこいいのでぜひ作品で見てほしい。「ヴァンパイア」シリーズで初めて登場したフォボスを見た人なら、当時の衝撃を思い出すであろう「圧」を感じる象徴的なシーンだ。

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魂のキャラクターにおいて、ブランクなんてない(『ハイスコアガール DASH』1巻より)

 「ヴァンパイアハンター」のフォボスは、古代マヤ人によって作られた究極の番人、ガーディアンという設定だ。超必殺技にも「ファイナルガーディアン」という技があるほど。

 今回彼女がスティックを握ったのは1巻のラスト。ゲーセンで自分の生徒が、他の人間に絡まれたときだ。どんな格ゲーでもいいから勝負をして、負けたら痛い目に遭わせると言われた生徒。それを見た小春に炎が宿り、心のフォボスが目を覚ます。

 今までコンフュを駆使した「攻めのフォボス」だった小春は、今回生徒を守るためのフォボス、ガーディアンになった。相手の攻撃をことごとくガードキャンセル(フォボスの場合は壁を前に出して押し返す特殊なもの)で弾き返す鬼の防御は、「私の生徒に指一本ふれさせない」という彼女の意思の表れたプレイスタイル。しかもここで彼女、自身の最大の強みであるコンフュからの即死コンボを使わないでたたきのめしている。相手の単発攻撃を全てガードキャンセルしまくって一切攻めさせず、心をボキボキに折るのはもう「指導」の領域。

 このフォボス戦の一連の「ガーディアン」として生徒を守るというネタ、前作『ハイスコアガール』執筆時から仕込んでいたのだとしたら、小春のキャラクターの作り込みにかなりゾクリとくる。

かつては自分の恋のために鬼になったけど、今回は生徒のための鬼だ(『ハイスコアガール DASH』1巻より)

 加えて彼女の、ハルオや大野以上に修羅になる鬼のような憤怒の感情のシーンでは、豪鬼(『スーパーストリートファイター2』)が心に登場している。これもかつて彼女が、大野に意地でも勝ちたくて使っていたキャラクターだ。その試合自体は一瞬の心の揺らぎで大野が勝ったのだが、鬼の気持ちはしっかり根付いていたらしい。

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 鬼攻めの豪鬼の怒りと、冷静な守りのフォボスがそろった小春。ゲームが人生を変えるのは子どもだけじゃない、大人もだと証明してくれる熱すぎるシーン。ただ変えたのが「生徒のため」だったのが、今回の作品らしいところだ。男子中高生キラー感のあった前作の恋愛女子小春像とは別の、大人の女性としての魅力がさく裂する。

教師日高小春の輝き

 実は途中、小春がゲームに関して後悔するほどに距離を置いてしまう瞬間が描かれている。生徒が学校に持ってきたPSPを見て、彼女は「こんなもの」と言ってしまうのだ。子どもが一番嫌悪する、好きなものの価値をさげすむ簡単で残酷な言葉! ゲームが中高生のころ大好きだった小春、こんなこと絶対言いたくなかったはずだ。「こんなものって…言っちゃう人間になったんだなぁ」

大人になると、絶対言いたくないのに出てしまう発言って、あるんだよなあ(『ハイスコアガール DASH』1巻より)

 本当にそう思っていないのが分かるがゆえに、大人が読むと息苦しくなるようなシーン。でもその後の対応で、きちんと生徒にPSPを返しに行くシーンがとてもいい。父親を見てやばさを本能で判断し、大事な宝であろうPSPをそこでは渡さず、ちゃんと本人を探して手渡している。ここはゲームを愛した人だから分かる勘だ。

 学校ではトラブルを起こしがちで、どうやら家庭に問題がありそうで、そしてPSPでこっそりゲームをし続けている片桐美和。おとなしくいじめられやすい体質だが、芯は通っていて、ゲームセンターで才能を開花する山井真治。普段は欠席気味、学校にくるとフリーダムでなにをしでかすか分からない星奈未来など、放っておくわけにはいかない生徒が続出。1巻では小春はまだ覚醒しておらずぼんやりしているので、まともな会話はできていない。ただフォボスと豪鬼が心によみがった彼女は、恋をしていた中高生のときよりはるかに強くなっているはず。

 もう二度と負けヒロインとは言わせない、という強烈なオーラを感じる『ハイスコアガール DASH』。

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 9月25日に発売された2巻では、さらに小春の情熱とかつてから持っていた「鬼」の部分が、今度は生徒たちに向けて発揮されはじめていてテンションが上がる。とあるシーンでのやらかしは、多分ハルオや大野でもできないくらい激しい。加えて彼女は、1巻では自分がガーディアンとして戦ったけど、2巻では自分が戦わず、次世代の子供自身に引き継がせる選択を取っているのも注目してほしいポイント。暴走しがちだけど、理性も育ったステキな女になっている。それでいて中高生時代からのように、勢いで言い出したもののどうすればいいか分からず戸惑っちゃう部分は変わっていないのが、人としてとてもキュート。主人公としての物語的な感情振り幅の充実度合いが前作よりすごい。

 「大丈夫…春麗(チュンリー)だって、まだ30代だもん――。」という胃が痛くなるような初期の公式キャッチコピーはブルースすぎて強烈だったが、現在「この教師、妙齢のコンフュ―ジョナー」という勝ち確が見える力強いキャッチコピーが追加された。イケてるぜ小春。「婚期」という社会の決めた嫌らしい言葉なんてぶっとばせ。

前作の片思いの日々を思い出してもん絶する日高小春先生のシーンは、前作ファン必見のワンシーン。かわいいぜ、まぶいぜ(『ハイスコアガール DASH』1巻より)
9月25日には2巻が発売に

(C)Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX

たまごまご

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