魔王を先に倒された勇者の哀れな末路 立場を失った勇者が性悪魔法使いにいじられる漫画が意外といい話(1/2 ページ)
勇者の条件とは。
魔王を倒した勇者が称賛される陰には、先を越された悲しい勇者の物語があった? 漫画「魔王退治、してない方。」が、哀れながらも心にしみる良い話です。
「勇者一行が魔王を退治」の号外を手に落ち込む“魔王退治してないほうの勇者”。かつて旅立ちの日、盛大に見送ってくれた故郷の人々にどのつらさげて帰ればいいのかと途方に暮れています。
あまりにもいたたまれない状況に、旅の仲間はとっくに離散。魔法使いだけは故郷までおともすると言ってくれましたが、その理由は忠義や信頼の類でなく、単に「弱くて哀れな人間をそばで見ていたいだけ」という、たちの悪いものでした。
実はこれまでの冒険中、主人公は弱いくせに上級モンスターへ挑んでは返り討ちにされてばかり。散々な失態で魔法使いを喜ばせてきました。さらに、このまま帰郷すれば、冷遇されるか同情されるか、いずれにせよみじめな目に遭うのは明白。サディスティックな魔法使いにとって、旅はここからがお楽しみの本番というわけです。
やがておかしな2人連れは、かつてドラゴンの襲撃から守った村にたどり着きました。もっとも、その戦いぶりは散々で、まるで歯が立たずに仲間からも村人からもあきれられる始末。しまいにはドラゴンが同情して自ら退散してくれたという、勇者にとっては最悪、魔法使いにとっては最高の思い出が残る場所です。
勇者は村人に見つかって、当時のやられっぷりをいじられるはめに。しかし、それ以来ドラゴンが人間をあわれんで優しくなり、ほかの魔物から村を守ってくれていると聞き、皮肉めいた結果に戸惑います。
そんな勇者を端で見ながら、魔法使いは心の中でつぶやきます。「敵に情けをかけられるほど弱くても戦う。哀れな姿を人にさらして、笑いものになったとしても……それこそ本当の勇気……なんて、死んでも言ってあげませんけど」――と。複雑な感情を秘めたほほえみを、勇者に「またバカにしてんだろ」となじられると、「哀れんでただけです」と、また嫌味で返すのでした。
同作は漫画家の野村UFO(@UFOnomura)さんが、『少年サンデーS増刊』に寄稿した読み切り作品。サンデーうぇぶりでも公開されています。
作品提供:野村UFO(@UFOnomura)さん
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.