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二束三文で買った“ワシの像”が3千カラットの人工ルビー(時価総額1千万円)だった!? 京セラと持ち主を取材(1/2 ページ)

果たしてホンモノなのか……!?

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 フリマサイトにて二束三文で手に入れた“ワシの像”が、2008年当時世界最大級と呼ばれた“3000カラットの人工ルビー”製だった可能性があると、大きな話題を呼んでいます。当時人工ルビーの製造を手掛けた京セラ社と持ち主を取材しました。

 このワシ像を手に入れたのは、鉱物収集を趣味に持つ木の実(@konomi17)さん。「某所で鳥の置物として二束三文で売られてたモノ 特に印も何もなかったけど調べていったら2008年のとある新聞記事に行きついて目が点になっている」とツイートしたところ、3000件以上拡散し、大きな話題を呼んでいます。ツイートに添付された新聞記事には、京セラ社が世界最大の人工ルビーのワシ像を作ったと書かれていました


話題のワシ像(画像提供:木の実さん)

付属していた鑑別書(画像提供:木の実さん)

 木の実さんによると、ワシ像の大きさは全長が約13センチ、直径が5.5センチで全体は赤色。「ソーティング」と呼ばれる「中央宝石研究所」の簡易鑑定書も付属しており、「613.8グラム 合成ルビー」といった情報が記載されています。

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 木の実さんがこの情報をもとに調べたところ、2008年に京セラ社(京都市伏見区)が約3千カラットの人工ルビーの製造に成功し、高さ約12センチ、約5センチのワシの像を制作した――という記事を発見。木の実さんは「何故か添付されてた数年前にとられたソーティングがダメ押ししてくるのだけど、正直誰か嘘だと言って欲しい この鷲ちゃん、世界に何体いるの…?」とつづりました。


木の実さんが所有するワシ像の全体写真(画像提供:木の実さん)

全長が約13センチ、直径が5.5センチ(画像提供:木の実さん)

持ち主を取材

 ねとらぼ編集部はこのワシの像について調査すべく、持ち主の木の実さんを取材しました。

――ワシ像を発見したきっかけを教えてください。

木の実自分のアカウントを見ていただいてもわかる通りいわゆる鉱物収集オタクでして、その日なんとなく「合成ルビー」で検索して偶然発見しました。

――出品された方はどういう方でしたか。

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木の実匿名配送を利用したので正直こちらからではわからないです。ただ他の出品物から見るに石には興味のない一般の方だとは思います。

――価値があるものかもしれない、と気づいたのはどのタイミングでしたか。

木の実購入ボタンを押したときは気付いてませんでした。

 彫刻(カービング)されたものはあまり集めたことがなかったので知識がなく、とりあえず海外製だと思って「ruby carving」等で検索してみたのですが該当がなく(そもそも最初はワシではなく鷹だと思っていました)。出てくるわけないだろうと思いつつも日本語で検索したところ、(京セラの人工ルビー鷲について取り上げた)あるブログの記事に行き当たりまして………。

 商品が届いてから自宅のジェムテスターでガラスではないことを確かめて、念のため新聞記事が本当に存在するかも図書館で調べて確認した後、あのツイートをしたという流れです。あまりのことにうれしさより困惑の方が強かったですね。

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――もし本当に京セラ製である場合、ワシさんをどうしたいですか。

木の実皆さんの反応を見る限り1000万円の文字がすごく先走っているようですが、現実的な話をするなら合成石ですし多分そこまでの価値はないかと……。

 ただこれだけ大きな合成ルビーの彫像なんてあまり作られないかと思いますし私には分不相応なので、望まれるならしかるべきところに行ってほしいです。若輩者の戯言ですが、私は単にワシちゃんが再び世に出るために一時の仮宿として選ばれただけだと思っています。


京セラ社を取材

 続いて取材したのは京セラ社。Twitterでワシ像が話題になっていることを伝えると、2007年~2008年に報道関係者に配布されたという「宝飾応用事業」の関連資料を探し出してくれました。


京セラ社の資料に載っていたワシ像の画像(提供:京セラ)

 資料によると、京セラのワシ像は約3000カラットの合成ルビーからなり、円柱の直径は5センチ、高さは12センチ、想定価格は1000万円。

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 再結晶宝石をはじめ、ブライダルリングやアクセサリーなど、長年宝飾事業を展開している京セラが、長く培ってきた再結晶宝石の結晶育成技術によって育成した高品質な再結晶ルビーの原石を、高い技術を持つ海外のクラフトマンが彫刻したものと紹介されており、“世界最大級のルビー製ワシ像”だと記されています。

 2007年12月にアラブ所長国連邦のドバイで開催された宝飾展示会「ドバイ国際コンベンション」で世界初披露されたほか、京セラ社が主催する宝飾用品展示販売会 「彩美展 2008」でもお披露目されたことがあるそうです。

 資料に掲載されている京セラ社のワシ像と、木の実さんが手に入れたワシ像はかなりよく似ており、サイズもほぼ同じですが、制作が2007年前後ということもあり、京セラ社内で当時ワシ像の制作に携わった人や関係者を見つけることはできませんでした。

 また木の実さんのワシ像の写真は確認しているものの、実物の成分等を分析しなければ、ワシ像が京セラ製なのかどうかの判別は付かないとのことでした。


中央宝石研究所を取材

 最後に取材をしたのは、ワシ像に付属していた「ソーティング」に社名があった中央宝石研究所。「VN」から始まるナンバーの記載があったことから「613.8グラムの合成ルビーを鑑定した履歴が残っていた」とのこと。

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ワシ像に添付していた鑑別所(画像提供:木の実さん)

 さらに当時鑑別を手掛けた大阪支店にも確認してもらったところ「鳥の彫刻のような形の合成ルビーを鑑定している」とのことで、木の実さんが手に入れたものが、合成ルビー製である可能性がグッと高まりました。

ワシ像をついに鑑別

 しかしながら、宝飾関係では製品と鑑定書がすり替わっていたといったこともままあるようなので、以上の結果を木の実さんに伝え、正確な鑑別を行うためには、現時点であらためて木の実さんが持つワシ像を専門機関にて調べてもらう必要があると伝えました。

 すると、木の実さんから「日本宝石科学協会さんで鑑別してきた」との連絡があり、鑑別書の写真を送ってもらうことができました。


合成ルビーだったワシ像!(画像提供:木の実さん)

 そこにはあのワシ像の写真とともに「合成ルビーと認む」の文字が。

 木の実さんに「見事本物の合成ルビーだったのですね! すごいです!」と連絡したところ、「偽物と呼ばれやすい合成石だからこそ本物の合成ルビーという表現はなかなか不思議な感じがします」とコメントを寄せてくれました。

 結局京セラ製か否かについては現時点で不明ですが、フリマアプリでの買い物から始まった奇跡のようなお話でした。

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