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禍々しい136体の妖怪像が話題 学芸員が「なんのために作られたのか不明」「類例は見つからず」という造形物が謎すぎる(1/2 ページ)

「有識者による活発な意見交換に期待」。

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 日本妖怪博物館(広島県三次市)にある謎の136体の妖怪像が禍々しいとTwitterで紹介され、「手塚治虫&水木しげるな感じ」などと話題になっています。一体どういうものなの……?

136体ある謎の妖怪像

 人間の体を持ちながら、異形の頭部を持つ謎の像。全部で136体あり、立っているものが36体、座っているものが100体あるといいます。タコのような頭を持つものや、二つに分裂した頭を持つもの、ゾウに似た頭を持つものなど、一つ一つ形が違っていて、何か意味を持たせているようにも見えます。

 展示に添えられた紹介文には絵巻や錦絵などをモチーフにして作られた木彫ではないかと紹介されています。136体という異様に多い数、こだわりある造形から「執念とも呼びたくなるほどの作者の熱意を感じさせる」とも。伝承によるとかつて存在したとされる、福島県いわき市の威徳院という寺にあったものだとされているものの、裏付けとなる資料は発見されていません。

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頭部が一つずつ異なる
座っている像は100体
造形と数に異様な執念がただよう

 136体の妖怪像を企画展「妖怪のかたち2 あつめて・くらべて・かんがえる」にて展示しているのは、「湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)」。同館に所属する学芸員・吉川奈緒子(きっかわなおこ)さんに、妖怪像の正体について話を聞きました。


――妖怪像について、現時点で判明していることを教えてください。

吉川さん 当館では、座っている像を「妖怪座像(ようかいざぞう)」、立っている像を「妖怪立像(ようかいりゅうぞう)」という名前で紹介しています。「妖怪座像」は100体、「妖怪立像」は36体あります。いつ、どこで、誰が、なんのために作ったのかはわかっていません。類例も現在のところ見つかっていません。現時点での推測を含めた、当館で発信している情報をまとめると次のとおりです。

【いつ】江戸時代後期から幕末ごろの技術をもった仏師による作である、という推測をしています。その上で、像の制作年代は、「江戸時代後期以降」と表記しています。さかのぼれるとして最も古かった場合が江戸時代後期で、そこからどれほど時代が下るか(新しくなるか)は現在のところ不明ですので、幅を持たせた表現にしています。

【どこで】不明です。

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【だれが】「妖怪座像」と「妖怪立像」は、ひとりの人物、あるいは同じ技術をもった工房に関わる人たちによる作と考えられます。

【なんのために】不明です。

【なにを】像の材質は、当館のおこなった調査によりヒノキである可能性が高いことがわかっています。

 また、根拠となる文献などがない情報が2点付随しており、1点目は「かつていわき市にあった威徳院という寺にあった」ということ、2点目は「立っている像は“魔像三十六体(まぞうさんじゅうろくたい)”と呼ばれていた」ということです。2点とも、湯本氏が収集を行っていた際に併せて集められた情報で、関連情報として展示の際にお出ししています。1点目の情報によると像のふるさととされる福島県で2021年、県立博物館に「妖怪座像」「妖怪立像」を貸し出し、展示していただいた際にも、新たな情報は出てきませんでした。

 「妖怪」に関する資料はそもそも、今回の像だけでなく、いつ、どこで、だれが作ったのか、不明なものがたくさんあります。ただ、だからと言って価値がないわけではありません。今はまだ何なのかはっきりわからなくとも、これらの資料が失われないように保存し、後世につないでいくことが重要であると考えています。また展示公開することによって、広い範囲で、さまざまな有識者による活発な意見交換がなされることにも期待しています。

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――なるほど。では、妖怪像たちはどういった経緯で博物館に所蔵されることになったのでしょうか。

吉川さん 当館の現名誉館長である湯本豪一氏は、川崎市市民ミュージアムで学芸員・学芸室長を務めるかたわら、長年、個人で妖怪資料を収集していました。その5000点にも及ぶ、日本最大級の妖怪コレクションの中に含まれていたのが、「妖怪座像」100体と「妖怪立像」36体です。像は、もとは個人など、いくつかのグループに分散して所蔵されていたものを、湯本氏が集めたと聞いております。

 像を含めた湯本氏のコレクションは、2016年に三次市に対して寄贈され、そして2019年に当館、湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)が開館しました。

――妖怪像はネットで話題になっていますが、反響などは届いていますか。

吉川さん 「妖怪座像」100体と「妖怪立像」36体は、これまで2019年の博物館オープン時に18体をピックアップし、2020年には136体すべてを展示しました。現在開催中の春の企画展「妖怪のかたち2 あつめて・くらべて・かんがえる」は、3回目の展示になり、今回も136体すべてを展示しています。

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 当館はお客様による展示資料の写真撮影を可能としております関係で、撮影されたお写真がSNS上にアップされることが多々あります。「妖怪座像」と「妖怪立像」は、これまでも展示の度に注目を集めてきましたが、今回が最も大きく拡散されたようです。おかげさまで、多くのご取材をいただいております。お客様のお声は直接はいただいていませんが、当館と所蔵品に関するSNS上でのお声は検索して拝見し、参考にさせていただいています。

――ありがとうございます。最後に、三次もののけミュージアムの魅力や見どころを教えてください。

吉川さん 当館には約5000点の所蔵資料があり、その内容は、絵巻や錦絵などの美術品、着物や根付などの日用品、玩具、幻獣ミイラなど、書ききれないほど多岐にわたります。古いものですと江戸時代から、新しくは最近のものまで、妖怪がずっと私たち日本人の身近にあった文化であるということをお伝えできる展示になっています。年4回、さまざまに切り口を変えて、妖怪で企画展もおこなっています。

 また、三次は江戸時代に作られた妖怪物語「稲生物怪録」の舞台となった土地です。ぜひ、妖怪物語ゆかりの地で、妖怪博物館の見学をお楽しみください。


 妖怪像について、Twitter上では「手塚治虫&水木しげるな感じ」といった感想や、「現代人の所業ぽくて、タイムリーパーの存在を疑いたくなる…」などと深掘りして考える人たちの意見が飛び交っています。

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 学芸員の吉川さんが語るように、妖怪像が作られた目的や、どこで作られたものかなど、詳細は謎に包まれています。これまで複数回にわたり展示されてきましたが、有力な情報は集まっていないとのこと。今回の拡散を機に、有識者からの意見などが集まることを期待したいところです。

画像提供:ハマ(@Hama_Kuma_)さん

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