「歌手デビューしませんか？」怪しいスカウトに遭遇したVtuberの体験談漫画に反響　作者「夢をエサにした搾取許せない」（1/2 ページ）

　Vtuberのもとに「歌手デビューしませんか？」とメッセージが――怪しいスカウトに遭遇した体験談漫画が注目を集め、1万件を超えるいいねが寄せられています。

　漫画を投稿したのは、Vtuber「玉川くもり」として活動している玉川ユキ（@tmgwxxxx）さん。玉川さんのもとには「うちで配信しませんか？」「うちの事務所に所属しませんか？」などさまざまなスカウトがTwitterのDMで届くそうです。

　そんな中で、「うちで歌手デビューしませんか？」というDMが届きます。玉川さんは歌が得意ではなく、聞いたうえでスカウトしてるならヤバイし、聞かずにスカウトしているならもっとヤバイと感じます。しかしスカウトの話は一通り聞いているため、LINEで連絡して通話でのやり取りをOKしました。

　相手はまず名前を聞いてきます。スカウト対象の名前を知らないのはかなりおかしなことです。玉川さんが「LINEでも名乗りましたよね」と言うと、今度は本名を聞いてきます。

　デビューの話についてはろくに説明せず、玉川さんの活動内容も知らない通話相手。声がおかしいことに、「なぜボイスチェンジャーを使っているのか」と玉川さんが問うと「地声ですよ」と言いはり、しつこく本名を聞き出そうとしてきます。

　不審さから、途中で話を打ち切った玉川さん。何らかの詐欺だったのではないかと思ったそうです。Vtuberに限らず、架空のオーディションで応募者を集めて高額なレッスン料を払わせる「オーディション商法」など、芸能関係の仕事にあこがれる気持ちにつけ込む悪質業者は以前から報告されており、国民生活センターも注意を呼びかけています。

　漫画には「怖い」「怪しい」という声のほか、自分のことをろくに知らない相手から勧誘が来た、VtuberではないのにスカウトDMが来たといった体験談も寄せられていました。

　編集部では玉川さんにこの出来事についてお話を聞きました。

――　この出来事を漫画にしようと思った理由を聞かせてください

玉川さん　「どういう意図でスカウトしたのだろう」と、通話後に調べてみたところ、「オーディション商法」という悪質なビジネスがあることを知りました。夢を追う人たちを食い物にしているそのやり方が許せなかったこと、今まさに、この事務所は他の人にもスカウトを持ちかけているであろうことから、私が漫画として発信することで、一人でも多くの人がオーディション商法というものを知って、搾取される人を減らすことができれば、と思ったためです。

――　ほかにもこういう話を体験したり、人から聞いたことはありますか？

玉川さん　芸能系に進んだ友人が、似たような経験をしたと聞いています。それもあり、夢をエサに若者を搾取するやり方が許せませんでした。私自身は、ここまで怪しい勧誘を受けたことは今回が初めてです。

――　（漫画に登場した業者は怪しい点だらけでしたが）特に不審に感じた部分はどこでしたか。自衛のためのアドバイスがあれば聞かせてください

玉川さん　執拗に名前を聞いてきたところです。本名や住所を知っていれば、Web上でも実生活でもその人を特定して脅しや詐欺を仕掛けられるので、だから個人情報が欲しいのかな……？　と感じるほど何度も本名を聞かれました。私の少ない体験談ではありますが、真っ当なスカウトであれば、契約書にサインする段階まで個人情報を聞いてくることはありませんでした。スカウトを受ける皆様にも、個人情報は大切にしてほしいと思っています。

――　SNSでの反響について感じたことを一言お願いします

玉川さん　多くの方が「そういう悪徳商法がある」と知ってくださったことで、少しは被害者を減らすことができたのではないかと思っております。夢を追う方々の助けになれていたらとてもうれしいです。

作品提供：玉川ユキ（@tmgwxxxx）さん