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脱毛やダイエット……思春期の子どものコンプレックスに、保護者はどう向き合う? 親子で話し合うきっかけを作る漫画が参考になる(1/2 ページ)

自分の気持ちを見極めることが大切。

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 「たった3年の高校生活。1秒でも早くカワイイ私で過ごしたい」といったコピーを掲げ電車内に出稿された、高校生を対象とした美容整形の広告がTwitterで物議をかもしています(関連記事)。

 車内広告だけでなく、昨今ではインターネットでも外見至上主義=ルッキズムをもとにコンプレックスを煽る表現やコンテンツを目にする機会が増え、問題視されています。そんな中で、思春期の子どものコンプレックスと親の向き合い方について描いた漫画がTwitterに投稿され、記事作成時点で1600件以上のいいねを集めて話題になっています。


思春期の娘がダイエットしていることを知った母は……

 作者は、漫画家でイラストレーターのフクチマミ(@fukuchi_mami)さん。フクチさんは、長年性教育に携わっている村瀬幸浩先生とともに書籍『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』(KADOKAWA、1430円)を手掛けており、話題の漫画もその一部を抜粋したものです。

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現代でコンプレックスは「持たされるもの」になっている?

 漫画に登場するのは、高校二年生の息子と、中学二年生の娘を育てるサノさん夫妻。娘は運動部に所属しており、土日の部活がある日は昼食代を渡してお弁当を買うように伝えていました。しかしある日、娘がダイエットのためにカロリーゼロのゼリー飲料で昼食を済ませていることが、他の保護者からの情報で判明したのです。


最近は強迫観念的に脱毛やダイエットを勧める広告が多い

 村瀬先生によると、思春期の悩みで多いのが、「太っている」「毛深い」「身長が低い・高い」「胸や外性器の大きさ・形」など、外見に関すること。近年はSNSなどで脱毛やダイエットを勧める広告を目にする機会も多く、不安を煽られた子どもたちが強迫観念的に「このままじゃいけないのかな」と思いこんでしまうこともあるそうです。


現代においてコンプレックスは「持たされるもの」になってきている

 特に思春期は他者と比較してコンプレックスを抱きやすい時期。村瀬先生は「現代においてコンプレックスは持たされるものになってきているんじゃないかな」と自身の考えを語ります。

自分の意志で変えられないことへの言及はマナー違反


自分の意志で変えられないことについて言うのはマナー違反

 そもそも、人の顔や体はそれぞれに違うもの。それらを「自分だけのもの」としてポジティブに受け止めるのは、自分らしく健やかに生きていく上でとても重要なことだと村瀬先生は語ります。

 ポジティブな意味で「自分が思ってるほど他人は自分を見ていない」という認識を持てればよいものですが、フクチさんは、女性は特に周囲から外見について言及されることも多いと現状を振り返ります。実際に、それをきっかけにコンプレックスを負ってしまうことも少なくありません。

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 しかし、見た目やアイデンティティなど、自分の意志で変えられないことに関して言うこと自体がそもそもマナー違反。特に、からかいやそれを評価するようなことは禁句です。村瀬先生は、これについて、私たち一人ひとりが意識することで、社会を変えていかなくてはならないと語ります。ですが、まだこの考えが広く浸透しているとは言えず、その点も保護者を悩ませています。

「なりたい姿」と「そう思わされているもの」の見極めが大切


メディアや雑誌の写真は加工していることも多い

 また、メディアが与える影響についても考えなければいけません。メディアに登場する著名人の写真は、ウエストを細くするなどの画像加工がされていることも多く、必ずしもありのままの姿ではありません。体のサイズも、イメージのために実際とは違う数字を公表していることも珍しくないのです。

 しかし、それを知らない子どもはそれを見て自分と比較し、「こうなりたい」と無理なダイエットをしたり、コンプレックスを持ったりしてしまいます。

 親としては、子どもに「そのままでいいんだよ」と伝えたいもの。しかし、実際には、大人でも自分の体型に引け目を感じたり、「ダイエットしなきゃ」が口癖になっている……なんてことも。


「なりたい姿」が本当に自分の価値観なのか、見極めることが大切

 しかし、覚えておきたいのは、変化しようとすること自体が悪いわけではないということ。子どもも大人も、自分が心地よく過ごせる体になるために、変化しようとするのはよいことです。

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 村瀬先生は、大切なことはその「なりたい姿」が本当に自分の価値観からなのか、メディアや広告などの情報から「そう思わされているもの」なのかを見極めることだと伝えています。

反響を受けた漫画について、作者に聞いた

 漫画には、「これは本当にその通りだなと思った」「コンプレックスをあおるような広告はやめて欲しい」「コンプレックスを感じるのは思春期の自分探しとして大切だと思うけれど、マーケティングに踊らされず、過度なコンプレックスを持たずに生きたい」など、多くの共感の声が寄せられています。

 SNSで反響を集めたこの作品について、描いたきっかけや、伝えたい思いなどを作者のフクチマミ(@fukuchi_mami)さんに聞きました。

-このトピックを漫画で取り上げたきっかけについて教えてください。

フクチさん:思春期は、内面も外見においても、他者を意識したり、他者の中での自分を意識したりするようになる時期です。私自身もそうでした。

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 一方で、私が10代だった90年代の雑誌では「こうあるべき」と不安を煽る広告風記事の全盛期でした。今となっては美容整形外科の広告だったとわかるのですが、当時はあまり意識していませんでした。

 今もメディアは変わりましたが、お金儲けのため意図的にコンプレックスを刺激するように作られた広告が溢れていて。それに10代の子どもが日々さらされていることは問題だと思っていて、外見とコンプレックスについての漫画を描きました。

-最近では、ティーン向けの整形の広告表現が議論を呼びました。こうした現状についてはどう思われますか。

フクチさん:10代は見た目がぐっと大人に近づく時期ですが、脳も体もまだまだ発達の途中。未熟なんです。また思春期は特に他人からどう見られているのかが気になったり、コンプレックスを抱きやすい時期。それと同時に世の中の「こうあるべき」というメッセージを敏感に感じ取る時期でもあります。分かってやっているのかは分かりませんが、そんな年代の子どもに向けて整形の広告を打つことは一線を超えているように感じます。

-Twitterでの反響を受けて、この漫画を通して伝えたいメッセージを改めてお聞かせください。

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フクチさん:大人の役割は、まだ未熟である子どもが健やかに育つよう見守り、応援すること。その子どもをお金儲けの対象として扱うことは、大人としてどうなのか考えてみる必要があると思います。


 子どもたちがさまざまな情報にアクセスしやすくなっている一方で、心を傷つける情報にも遭遇しやすくなっている昨今。接するコンテンツの良し悪しを見極め、心を守る判断基準を子どもたち与えることは、親に求められる新しい責任だと言えるのではないでしょうか。

 この漫画を収録した『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』は、2022年12月に出版された「おうち性教育はじめます」シリーズの第2弾。『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(KADOKAWA、1430円)と共に、Amazonや全国の書店で販売中です。


『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』(KADOKAWA、1430円)
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