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24時間365日、年中無休の獣医師のお仕事って……? 「食卓の安全を守る」産業動物臨床獣医師について解説します(1/2 ページ)

元産業動物臨床獣医師の筆者が解説します。

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 「動物のお医者さん」として、日々動物たちの健康を支える獣医師たち。犬や猫など人間とともに暮らすペットの医師、というイメージが強いですが、獣医師のなかには家畜を専門にする「産業動物臨床獣医師」という分野があるのをご存知でしょうか。人間の生活に欠かせない家畜たちの健康を守る、産業動物臨床獣医師の仕事はどのようなものなのか。牛の獣医師として従事していた筆者が解説します。

島津春香

酪農学園大学獣医学群卒業。牛の獣医師として従事し、2023年3月からWebライターとして活動中。自宅の一室を動物部屋として改装し、多数の動物たちと暮らしています。noteTwitter(@shi_ma_haha)

 皆さんが「獣医師」と聞くと、ペットである犬や猫の獣医師を想像する方が多いのではないでしょうか。実はその仕事には、農林水産分野、公衆衛生分野、動物愛護関係、小動物臨床分野など、さまざまな分野があります。なかには聞き慣れないものもあるかもしれません。本記事では、私が働いていた農林水産分野である牛専門の獣医師の仕事について紹介します。

牛ってどんな種類があるの?

 牛と聞いて皆さんがイメージするのは、「白黒の模様で牛乳を出す牛」ではないでしょうか? しかし、日本で飼育されている牛はその種類だけではなく、たくさんの種類が存在します。まず、牛乳を出す牛のことを「乳用牛」と呼びます。乳用牛は牛乳を出すことができる牛のため、妊娠できる若いメスのみです。代表的な乳用種は以下の5種類。

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私たちが牛と聞いてイメージする「ホルスタイン」 ※画像は筆者撮影
  • ホルスタイン
  • ジャージー
  • ブラウンスイス
  • ガーンジー
  • エアシャー

 みなさんがイメージする白黒模様の牛は、ホルスタイン。日本では一番多い乳用種として飼育されています。次に多いのが、ジャージー。3番目に多い種類はブラウンスイスですが、国内で1000頭程度しか飼育されていません。残りのガーンジーとエアシャーの2種類は圧倒的に飼育数が少なく、とても珍しい存在です。

実際の診療風景 ※画像は筆者撮影

実は「和牛」は日本に4種類存在する

肉用牛の黒毛和種 ※画像はイメージです

 次に、お肉になる肉用牛がいます。肉用牛も日本では数種類飼育されており、みなさんがよく耳にする「和牛」は、実は4種類存在します。

  • 黒毛和種
  • 褐毛和種
  • 日本短角種
  • 無角和種

 日本では主に黒毛和種が飼育されています。次に褐毛和種が多く、ほかの2種はとても珍しい品種です。農林水産省のWebページでは、牛の種類について写真とともに詳しく紹介されています。肉用牛は、和牛の他に以下の牛も肉用として流通しています。

  • 交雑種
  • 乳用種の雄
  • 引退した乳用牛

 交雑種というのは、肉用種と乳用種を交配して生まれた種類です。あまり名は知られていませんが、和牛より安価なため市場にも多く流通しています。また、乳用種でも雄は牛乳を出せないため、肉用牛として育てられます。乳用種の雌の場合も年をとって妊娠できなくなると、引退して肉用牛になります。

 これらの乳用牛、肉用牛である牛たちを診るのが、牛の獣医師の仕事です。とはいえ、具体的な業務はイメージしづらいですよね。毎日一体どんな仕事をどんなスケジュールで行っているのか、ご紹介します。

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