中央大学の研究グループがイヌ用人工血液(人工血漿)の開発に成功 安全性と有効性も確認、市場は世界規模(1/2 ページ)
動物医療への貢献が期待されます。
中央大学理工学部・小松晃之教授の研究グループが、イヌ用人工血液(人工血漿)の開発に成功したと発表しました。
血液は赤血球、白血球などの細胞成分(血球)と、タンパク質、ビタミンなどが溶けた液体成分(血漿)で構成されています。血漿中にはタンパク質「アルブミン」が豊富に存在し、血液の浸透圧や循環血液量を維持する役割を担っています。
人間の場合、献血液から分離したアルブミンは製剤化され、臨床で広く使われています。しかし、イヌの場合は原料となる血液を確保することができないため、これまでイヌ用のアルブミン製剤はありませんでした。
今回、小松教授らはブタの血漿から取り出したブタアルブミンに合成高分子ポリオキサゾリンを結合することにより、「ポリオキサゾリン結合ブタアルブミン(POx-PSA)」を合成。それがイヌに投与可能な人工血漿(血漿代替物)になることを明らかにしました。
さらに、慶應義塾大学、東海大学、埼玉医科大学、東京大学と共同でPOx-PSA溶液の安全性と有効性を確認しました。
POx-PSAの製造工程はわずか2段階で、収率は高く、特殊な装置は一切必要ないとのこと。溶液は凍結乾燥することで粉末となり、得られた白色粉末は1年以上安定して保存でき、水に溶解し再生した溶液は凍結乾燥前と全く同じ性質を示すといいます(POx-PSA溶液は副作用を引き起こさない原理から、ネコにも投与可能な人工血漿になると考えられているそうです)。
長期保存可能なイヌ・ネコ用人工血漿が溶液または粉末として動物病院に常備され、いつでも供給できる体制の確立は、動物医療にとって長年の夢だったとのこと。今回の研究はペットの輸血治療における画期的な発明であり、動物医療への貢献が期待されるとしています。
この研究成果は、シュプリンガー・ネイチャー(SPRINGER NATURE)社のオンライン総合科学雑誌『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)誌(2023年6月14日付)』に掲載されます。
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