「歩けなくなってもいつも一緒にいた」 飼い主の介護に懸命に答えたワンコ、たくさんの愛をくれた愛犬に感謝(1/2 ページ)
「ペットの介護エピソード」第6回は犬のチビちゃんです。
近年、飼い主の「ペットは家族の一員である」という意識が高まり、ペットに対しても健康で長生きできるように、生態や習性に合わせた適切な飼養管理が行われるようになってきました。生活環境や栄養状態の改善、ワクチンや駆虫薬の普及、獣医療の進歩などさまざまな要因で、ペットの平均寿命が延びています。
「一般社団法人ペットフード協会」による「令和2年(2020年)全国犬猫飼育実態調査」では、犬の平均寿命は14.48歳、猫の平均寿命は15.45歳。10年間で犬は0.58歳、猫は1.05歳寿命が延びています。成犬・成猫は1年で人間の4歳分の年齢を重ねるといわれており、大きく寿命が延びていることが分かります。
寿命が延び、愛するペットとともに長く暮らしていけることはとても幸せなことですが、長寿化ゆえに新たな課題も発生しています。それは加齢により生じる体の不調です。
ペットも人間と同じで、歳を重ねるにつれ体力や免疫力が落ち病気にかかりやすくなったり、足腰が弱ってきたりします。それだけでなく、認知症や寝たきりになって、人と同様に介護が必要になるケースも。もちろん加齢だけでなく、病気やケガなどが原因で介護が必要になることもあるでしょう。
そこで、ねとらぼ生物部ではペットを介護した経験のある読者にアンケートを実施。寄せられた数々のエピソードと写真を紹介するとともに、介護の現実や厳しさだけでなく、その経験から生まれるペットへの深い愛情や命の尊さを伝えていきます。
第6回 「チビ」ちゃんと飼い主の目ん子ちゃんさん
―― 介護が始まったときのペットの年齢と、きっかけを教えてください
15歳のときに、加齢と腫瘍の手術の影響で介護が必要になりました。16歳で死ぬまで私が介護を担当していました。
―― どのような介護をしていたのでしょうか
手術前から夜は吠えて、昼は寝ていました。手術の後、後ろ足が衰えて歩行の介助をし、歩けなくなってからは、私が毛布にくるみ布団で一緒に寝ていました。出掛けるときも箱に入れて車に乗せて、いつも一緒でした。
―― 介護する中で一番大変だと感じていたことを教えてください
オムツのサイズがちょうどいいのが無くて、人間の赤ちゃん用のを使うなどしたことです。
―― 介護生活のなかでの学びや気付いたことがあれば教えてください
チビはとても賢い子で、頑張ってと言うと生命力を振り絞って元気になりました。本当に飼い主をあいしてくれる子で、最後は私の腕の中で犬生を終えました。私の心に寄り添ってくれた、忠犬でした。寝たきりになる前は時々脱走して、家族総出で探すこともあったけど、でも介護がつらいとは思わなかった。それはきっと、チビが私にくれたたくさんの愛があったからだと思います。
―― 介護生活の中で心掛けていたことがあれば教えてください
チビの身体に匂いが残らないよう、清潔さを心掛けていました。
―― 介護していたペットへの思いを教えてください
チビは母犬「チロ」から生まれたのですが、授乳が下手だったため、私が夜1時間おきに起きて授乳させていました。そのような経緯もあり、他のどの子よりチビとの絆は強かったです。
本当に私をあいしてくれてありがとう。君は命を懸けて私にたくさんのことを教えてくれた。純粋な愛が傷ついた心を癒やすこと、人生で一番大切なことを。掛け値なしに君は私をあいして、愛を表してくれた。本当にありがとう。
―― 介護中の方へのアドバイスがあれば教えてください
体力的にきついこともあるかと思いますが、命があるだけもうけものと思って、頑張り通してください。
―― 最後にチビちゃんとの1番の思い出を教えてください
私はクリスチャンで、賛美歌のCDをかけて歌を歌うことがよくありました。そのとき、ピアノ曲に合わせてチビが一緒に遠吠えをしていたのです。「チビも一緒に歌ってるねー」と息子たちも喜んでいました。私は夫と死別して、3人の子どもを育てていました。チビが一緒に歌ってくれたときは、息子たちも幸せそうでした。
(了)
介護が必要な症状はさまざまですが、今回のチビちゃんのように歩行が困難になるケースは、適切に体を動かすことができなくなることにより、胃腸など別の部分に不調を来すなど症状が広がることもあります。ねとらぼ生物部ではガイア動物病院(東京都杉並区)の院長 松田唯さんに筋力が低下した場合のスムーズな生活の方法、予防方法などを聞きました。
―― 加齢やその他の要因(手術の後遺症など)で動物の足の筋力が低下し歩行が困難になった際、生活をスムーズにするためにどのような対応をするのが望ましいのでしょうか
どのような病気でも、生活の質(Quality of Life:QOL)をできる限り下げないようにしていくことを考えましょう、とはよく言われることです。
飼育されている動物にとって一番重要なのは、「食べて」「排せつして」可能なら「自由に移動できること」かなと思っています。足が不自由になった場合は……。
- 「食べる」
近くにご飯を置いてあげることで、食事しやすい環境をつくる。ただ、逆にやや遠くにご飯を置くことで足を動かし、筋力の低下を防ぐというやり方もあります。
- 「排せつする」
後ろ足が不自由になっていると、排せつも思うようにできなくなっていく場合が多いです。尿や便を意識的に出せなくなっているのであれば、人間が定期的に介助してあげる必要があります。意識的に出せたとしても、トイレまで行けない・間に合わない可能性があるのでオムツの使用を検討するといいかもしれません。
- 「自由に移動する」
一番難しい話ではありますが、不自由の程度によってさまざまな方法が提案されています。少しふらつきがある程度ならToe Grips(トゥ・グリップス)という爪に装着するゴム性のキャップを使用する、ゴム性の靴下を履かせる、滑り止めマットを敷くといったことでかなり楽に歩けるようになります。完全に足を動かせないなら、車椅子や補助用ハーネスを利用するといいと思います。
―― 筋力の衰えを予防する方法、少しでも筋力低下を遅らせるような方法があれば教えてください
まずは、関節炎や骨の病気など動くことで苦痛を感じるものが無いかどうかの確認が必要です。もしあるのなら治療を優先するべきです。
動かして良いのであれば、考え方は人と同じでとにかく筋肉を使って運動することです(動かしすぎで関節炎などにならないよう、気を付けながらやりましょう)。一番良いのは、自力で動いてくれること。そのためには、動きたくなることをやってあげる必要があります。ご飯を持って名前を呼んでみる、好きなおもちゃがあるなら一緒に遊ぶ、おやつを隠して探してもらう、外に連れていく……など、好きなことを探してあげてください。
その他にリハビリと言いますか、人が介助した上での運動です。動物任せ(自由に運動)だと正しい歩き方をしないがゆえに、一部の筋肉ばかりを使って筋肉のバランスが不均一になり、将来的に関節炎の原因になってしまう場合があります。また、足先をつまんで反射を利用した筋肉への刺激方法などもあり、自力でほとんど足が動かせない場合にも有効です。詳しくは獣医師に相談してみると良いと思います。
サプリメントを利用する手もあります。サプリメントなので、「この様な効果があります!」とはいえないのですが、おやつタイプになっているものも多く販売されているので楽しく実施することができます。例えば、人間用のサプリメントで有名なHMB(β-hydroxy-β-methylbutyrate)は筋肉の分解を抑えるとともに、合成を助けてくれる働きがあるといわれています。これが含まれるサプリメントは犬猫用としても販売されています(例:筋トレわんわん/筋トレにゃんにゃんなど)。
―― 老齢のペットと暮らす飼い主さんに、食事や生活習慣に関してアドバイスがあればお願いします
足が不自由になるということは、自由に動くことができない、だけでは終わりません。運動ができなくなってくることで胃腸の運動も悪くなってくるので、便秘や食欲低下を起こす場合があります。ですので食事内容にも気を配り、食物繊維を多めに摂るなどの配慮が必要になってきます。サイリウムという下痢や便秘予防に使える成分もサプリメントとして開発されています(動物にも使用できるものは病院でしか処方できない可能性もあります)。
また、歳をとってくると動物も認知症になる可能性もあり、場合によっては歩けなくなってしまうこともあります。認知症を根本的に治療できる方法はありませんので、どうやって進行を抑えるかということをメインに考えていきます。自宅でもできることで考えると、先述した内容(運動する、頭を使っておやつ探しなど)に加え、日光浴(特に朝日)やブラッシング(皮膚の神経を刺激することで頭の活性化につながる)をやってあげると良いと思います。
他にも床ずれなど若いころにはなかった問題がいろいろと出てくることから、相当な時間と手間がかかると思います。これまで長い間一緒にいた動物さんたちと過ごせる、最後の時間として楽しみながら付き合ってもらえると幸いです。
(了)
少しでも健康で長生きしてほしいからこそ、介護に全力を尽くし、自身の生活や心身に大きな負担を掛けてしまう飼い主さんも少なくありません。状況によってはペット介護サービスを利用する、同じく介護をしている人たちと情報を共有するなど、1人で抱え込まない環境づくりも大きな助けになるでしょう。
これからペットを迎えようと考えている人や、現在介護の必要がない飼い主さんは、健康寿命を伸ばす対策をする、介護の知識を取り入れるなど、少しずつ準備を始めておくと良いかもしれません。介護も含めて大切なペットとの一生です。その時間も愛せるようにペットと寄り添い続けていきたいですね。
ねとらぼ生物部では、引き続き「ペットの介護エピソード&お写真」を募集しています。犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
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