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ハリウッドはなぜ立ち上がったのか 歴史的なストライキを“AI”“ストリーミング”他キーワードをまとめて徹底解説(1/2 ページ)

ハリウッドの組合とは? ストの目的は? 脚本家が勝ち取ったものは? そして今後は?

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 2023年、米映画・テレビ界では1960年以来初めて、脚本家と俳優の組合が同時にストライキを行う事態となり、両組織の会員計17万人以上が活動を中止し、さまざまな作品やスタッフを含む業界全体が影響を受けています。こうした中、現地時間9月27日にはついに、5月初旬から約150日間続いた脚本家組合のストが終結し、ハリウッドが再開の動きを見せ始めました。

 このまま俳優組合のストも終結に向かえば、通常運転に戻る……かと思いきや、今度はマーベルやディズニーで夢を生み出す視覚効果技術者たちが労働組合加入の兆しを見せていて、映像芸術の根幹を巡る闘いはまだ続きそうです。2023年をハリウッド史に刻むであろう、歴史的なストライキについて解説します。


米俳優組合のストライキの様子(画像は米俳優組合 公式Instagramから)

そもそもハリウッドの組合って? 夢の世界を守る立役者

 ハリウッドには米映画・テレビ作品を生み出すフィルムメイカーやクリエイター、技術者たちが属する組合が複数存在します。特に有名なのは、米監督組合(DGA)米脚本家組合(WGA)米俳優組合(SAG・AFTRA)の3つで、各会員数は1万8000人、1万1500人、16万人規模。米国で製作される映像作品の多くは、こうした組合の会員たちによって作られています。

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 組合の主な役割は、雇用主であるスタジオ側と交渉して会員の最低賃金や就労時間、安全管理などを含む労働条件を定めること、クリエイティブ面で会員の権利を守ることで、近年はハラスメント防止やダイバーシティー推進にも積極的に動いています。また、組合に属する“先輩”監督や脚本家、俳優たちがメンターとなり、若い会員に成功・失敗体験を共有しながら、ともに高め合っていくコミュニティーでもあります。

ニコール・キッドマン、クイーン・ラティファらが組合の大切さについて語る動画

 毎年、アカデミー賞に向けた賞レースの後半では、これら組合賞の結果が注目されますが、それは米映画界を担う作り手が作り手を祝する機会であるため。フィルムメイカーにとっては、批評家や観客が選ぶ賞とは異なる、特別な意味を持つのです。2020年のSAGアワード授賞式では、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で助演男優賞に輝いたブラッド・ピットが、俳優仲間への感謝とリスペクトにあふれるスピーチで会場を沸かせた様子が印象的でした。

2020年のSAGアワード授賞式で、会場をあたたかい笑いの渦に包んだブラッド・ピット

今回のストライキの目的は? キーワードは雇用条件、配信、そしてAI

 こうした組合の主な契約相手となるのが、映画スタジオやテレビ局、配信会社など350社以上からなる業界団体・Alliance of Motion Picture and Television Producers(AMPTP)。組合側とスタジオ側は、基本3年ごとに業界状況や社会情勢などを考慮しながら、契約内容を見直します。しかし2023年の契約交渉に際しては、組合側が求める条件とスタジオ側の条件が乖離(かいり)しており、歩み寄りが見られないまま、脚本家組合が5月2日に、俳優組合が7月14日にスト入りしました(監督組合はスタジオ側と合意したため、ストはなし)。


米俳優組合のピケットラインには俳優アニャ・テイラー=ジョイ(「クイーンズ・ギャンビット」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」)の姿も(中央)(画像は米俳優組合 公式Instagramから)

 両組合の主張の詳細は異なりますが、主な争点はともに、雇用条件の改善(報酬アップ含む)、配信二次使用料、AI使用ルールの3点です。1つ目は、脚本家の場合、主にテレビ・配信シリーズにおいて、一定数の脚本家を一定期間、雇用することを求めるもの。これが認められない限り、脚本家の収入が安定することはなく、未来の脚本家を目指す次世代が少なくなると組合は主張していました。俳優組合も、経済情勢に応じた報酬アップを求めています。

 2つ目は、世界的な配信普及という業界の変化に応じて、作品の二次使用料支払いモデルの見直しを求めるもの。従来のテレビ放送では、再放送のたびに脚本家や俳優に再使用料が入りましたが、配信においては、視聴回数も視聴エリアも大幅に拡大されているものの、プラットフォームが視聴数を公開せず、作品の成功に応じた報酬が得られていない点がかねて問題視されていました。そのため、組合側は、視聴データの共有や再使用料支払いモデルの更新を求めています。

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 3つ目は、AI使用ガイドラインの明確化。脚本家は、AI発達により、例えば脚本家が草稿したアイデアをAIに完成させる(またはその逆)ことも可能となる未来に向けて、AI使用ルールを設定すべきだと主張。俳優は、スタジオがシーン背景に出演する俳優たちの姿をスキャンし、その身体的特徴を永久的に使用できるAI技術も発達するなか、インフォームドコンセントの必要性、出演契約時にAI使用許可を強要することへの懸念などを訴えています。

 すでに音楽業界では、AIが人気ミュージシャンの声のみならず、曲調や歌詞までも生成して楽曲を発表し、再生数を稼ぐ事態になっており、AIにまつわる動きは脚本家・俳優たちにとっても死活問題。今、闘わなければ、自分たちも未来のクリエイターも苦労する(どころか、その職自体がなくなってしまう可能性すらある)という緊急性を使命感を伴うものなのです。

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