レビュー

一気読み必至の戦慄ゾンビマンガ『ヒトグイ』レビュー パニックホラーの鬼才が放つ最新作を見逃すな(1/4 ページ)

『食糧人類』『アポカリプスの砦』を手掛けた蔵石ユウ、イナベカズの最新作が連載開始。

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 マンガ『食糧人類』『アポカリプスの砦』を手掛けた蔵石ユウ(原作)とイナベカズ(作画)による最新作『ヒトグイ』が配信開始となった。2024年8月16日からLINEマンガで連載。制作はサイバーエージェントが運営する縦読み漫画コンテンツスタジオ「STUDIO ZOON」だ。

 少年誌や青年誌で次々とパニックホラーを描き続けたコンビが、縦読みマンガへと進出。縦読みマンガならではのディープな没入感やスピーディーな展開がこの2人の作風と実にマッチしていて、新たなヒット作になりそうな予感がする。以下、8月16日時点で公開されている最新エピソード第14話までの内容をもとに、戦慄のゾンビマンガ『ヒトグイ』の読みどころを紹介する。

アクション映画を思わせる展開とビジュアル

 ある晴れた日、のどかな街に突如悲鳴が上がり、通行人が必死の形相で逃げ惑う。そして「ゴリッ ガリッ グチャグチャ」という不気味な咀嚼(そしゃく)音が聞こえる方へ視線をやると……血まみれの男が次々と人を襲ってむさぼり食っているではないか!

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 やがてこの男は「通り魔事件」の容疑者として警察に拘束される。東京拘置所への移送が決まり、男を乗せた護送車に主人公の南雲(なぐも)巡査長が同乗することになる。仕事とはいえ、不気味な人食い男と閉鎖空間のなかで一緒になるなんて嫌に決まっている。そう思いながらも、看守手当と身辺警護手当につられて安請け合いしてしまい、不運な警官・南雲は壮絶サバイバルへ引きずり込まれていく――というのが第1話の内容だ。

 作画を担当するイナベカズは、パース(線遠近法)をきかせた迫力のある構図や、隅々まで描き込まれた緻密な画がすごい作家である。今作でもそれが存分に発揮されており、また、縦読みマンガというフォーマットを生かした大胆なコマ割りや効果音の配置、余白の取り方が印象に残った。しかも、この高レベルの作画が毎話フルカラー(着彩:野渡ひい)で楽しめるというのだからぜいたくなことだ。

 あと、過去作と比べて、今作は「アクション映画的」な作りになっていると感じた。人食い男を乗せた護送車の中は、案の定、大パニックになる。車内は血の海で、運転手は死亡。護送車はガードレールを突き破って崖にダイブし、辛うじて木に引っ掛かる。そして「おい、下手に動くと車ごと落ちるぞ!」という「お約束展開」へとなだれ込む。

 その後、人食いだらけになった街では火の手があがる。3Dエフェクトを駆使した地獄絵図が描かれ、ビジュアルの点からもアクション映画っぽさを感じさせる。

 一気に駆け抜ける第14話までの内容は、映画でいうところの冒頭15分くらいのツカミの部分にあたるだろう。

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 そして、人食いたちはなぜ突如現れたのか? なぜ撃たれても、切られても死なないのか? そろそろ謎を解き明かすキーが描かれそうだな……というタイミングで、まさかの未確認物体が出現! ますます「これからどうなっちゃうの!?」という展開になっている。

今後のストーリーを予想してみる

 『ヒトグイ』はまだ連載がはじまったばかり。そこで、蔵石ユウ&イナベカズの過去作を踏まえて今後のストーリーを予想をしてみよう。

 注目してほしいのが、訳あって護送車に乗り合わせたチンピラ風の男・吉岡正文だ。実は、過去作『アポカリプスの砦』(ゾンビもの × ヤンキーものという異色作)にも登場していた。同じ名前と見た目をしていて、今作でも犯罪歴のある狡猾(こうかつ)な人物として描かれる(両作品は並行世界なのかもしれない)。吉岡はサバイバル能力が非常に高く、今後、主人公・南雲と行動を共にする良き相棒役となることが予想される。


『ヒトグイ』第1話の吉岡正文

『アポカリプスの砦』にも登場した吉岡正文(出典:Amazon.co.jp

 振り返れば、蔵石ユウ&イナベカズ作品では、極限状態におかれた主人公とその仲間たちとのゆるぎない信頼関係が印象的であった。例えば『アポカリプスの砦』のメインキャラである不良4人組は、ケンカばかりで怒鳴り合いや殴り合いが絶えないが、ピンチのときは命を張って互いを守ろうとしていた。今作『ヒトグイ』でも、傍から見れば荒くれ者の奴らかもしれないが、読んでいて胸がアツくなるような男の友情関係が描かれるのではないだろうか。

 それと、劇中世界の設定についても考えてみよう。蔵石ユウ&イナベカズ作品は、とにかく話のスケールがでかい。人間を家畜のように飼う謎の施設が舞台の『食糧人類』は、前半は暴力表現やグロ表現が前面に出ているものの、途中から、往年のハードSFを思わせる展開に突入する。『2001年宇宙の旅』や『幼年期の終わり』(いずれもアーサー・C・クラーク作)のごとく、何百万年というタイムスパンで、宇宙規模の事態に発展していくのだ。

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 『ヒトグイ』でも、先述した第14話の衝撃シーンからして、相当でかい話になりそうな予感がする。『アポカリプスの砦』や『食糧人類』並みの緻密な設定で描かれるとしたら、非常に面白い内容になるだろう。

 これから毎週金曜日にLINEマンガで新しいエピソードが公開されるとのことだ。「毎日¥0」を使って無料でお得に読むのもよし。奮発して課金・一気読みするのもよし。マンガ『ヒトグイ』をどうぞお見逃しなく!

「ヒトグイ」(C)蔵石ユウ/イナベカズ/野渡ひい/STUDIO ZOON

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