「臭すぎた」 大量のトチの実を拾ってトチ餅を作ったら…… 人類の執念を感じる“とてつもない手間暇”に「こんな大変な食べ物だったのか」(1/3 ページ)
先人の知恵ってすごい。
トチの実を拾い集めてから手間暇をかけてアクを抜き、実際に食べる様子が「勉強になる動画」とYouTubeで話題です。動画は記事執筆時点で23万回以上再生されています。
トチ餅作りに挑戦
動画を投稿したのは、野草を食べることが好きすぎるあまり、野草料理に関するYouTubeチャンネル「野草研究所」を開設した道端つくしさんです。
これまでも雑草の豆からずんだ餅を作ったり、お茶の木から紅茶を作ったりと、さまざまな挑戦をしてきました。今回は、ひたすらトチの実を拾い集めて、トチ餅作りに挑戦するようです。
トチの実はアクが大量
生き物系YouTuber・ホモサピさんと一緒にトチの実を拾っていきます。トチの実は、小学校の授業で出てきた『モチモチの木』の題材になったムクロジ科のトチノキになる実で、9月ごろにたくさん地面に落ちるのだそうです。
トチの実はそのままかじると苦い、トチにもさまざまな種類がある、といった話をしていると、一見するとライチにも見えるトチの実を発見。外皮は手で割れないほど硬いため、軽く踏んでみると中から栗のような実が出てきました。
道端さんによるとトチの実にはアクが大量に含まれていて、そのまま食べても全くおいしくないとのこと。そのため米の収穫量が少ない年に食べる、かさを増す用の食べ物として使われてきたのだそうです。
2人でさまざまな話をしつつトチの実を拾い集めると、30分もかからずに大量のトチの実が集まりましたが……実は本当に大変なのは、ここからなのだといいます。
大変なのはここから
まずはトンカチを使って外皮をむきつつ、穴が開いている虫食いの実をはじいていきます。その後は水に入れて中に虫がいる実があるかチェック。そのまま水につけて1日放置し、虫の卵まで窒息させる作戦でいくようです。
……といいつつあまり時間がないため、ここからの作業は“3分クッキング”形式で進めていくことに。本来はここで1日水につけたトチの実を乾燥ネットに入れて1週間ほど干し、水分を抜いてカラカラの状態にする作業が入るのだそうです。
今回はあらかじめ干しておいたトチの実を保温容器に入れ、熱湯を入れてじわじわと温度が下がるまで待つ、そしてまた熱湯を入れる……という作業を何度か繰り返し、ふやかしておいたトチの実が登場。発泡スチロールの容器を開けてみると水は茶色く濁っていて、なかなかの悪臭がするようです。
その後はトチの実の殻をむいていきます。トチの実の殻をむく専用の道具もあるそうですが、今回はゆでて殻を柔らかくして、力業でむいていくとのこと。15分ほどトチの実をゆでたお湯は黄色く染まり、でんぷん質が溶け出したのかドロッとしていました。
ゆでたトチの実の殻をペンチや火ばさみを使ってむこうとしますが、どうにもこうにもむきにくい様子。2人で黙々と作業を進めましたが、終わるまで1時間半ほどかかり、さらに実がボロボロになってしまいます。
むき終わったトチの実はおいしそうな見た目をしていますが、まだまだ苦くておいしく食べることはできないそうです。道端さんによると、おいしく食べるためには10日ほどかけてアク抜きをする必要があるとのこと。皮をむいたトチの実を洗濯ネットに入れ、ここから1日に3回ほどのペースで水を換えていきます。
10日かけてアク抜き→調理&実食!
翌日。水は黄色く濁って泡立っており、まだ悪臭がしているようです。水を取り換える作業を繰り返して10日経過すると、まだ漬けた水に若干の悪臭があるものの、ようやくアク抜きの最終工程に入れる状態になりました。
まず1時間ほど煮込むと、煮込み終わったトチの実からコクのある濃厚なチーズのような香りがしたそうです。お次は広葉樹の木を燃やして作った「木灰(きばい)」をお湯で溶かし、そのお湯にゆでたトチの実を入れ、ようやくアク抜きの全工程が終了。ここから丸1日漬け込み、ようやくトチ餅作りに取り掛かれるのだといいます。
この翌日に再びホモサピさんと合流し、トチ餅作りに取り掛かります。まずは木灰を溶かした液体からトチの実を取り出して洗い、もち米と一緒に炊きました。
そして1時間後。栗ご飯のような見た目に炊き上がったトチの実ともち米をすり鉢に入れてすりつぶすと、だんだんと粘り気が出て餅状になってきました。そこに餅とり粉(米粉)を入れて丸めると……ついに念願のトチ餅が完成です!
手作りのトチ餅を焼き、温めたお汁粉をかけて「トチ餅のお汁粉」が完成。実食すると「経験者が作ればもっとおいしくなることが分かる味」ではあるものの、トチの実からトチ餅を作ったここまでの努力も相まって、感動的なおいしさがあったそうです。
トチの実を食べられるようにするためには、とてつもない手間暇をかける必要がある。そんな事実を知ると、何とかしてトチの実を食べられるようにと試行錯誤した先人の知恵や、市販のトチ餅を作る人への感謝の気持ちが湧いてきますね。
「人類の執念がすごい」の声
拾ったトチの実から大きな労力を費やして作り上げたトチ餅に、コメント欄では「絶対に食わせないという木vs.絶対に食ってやる人類」「ここまで全力で『食べないで、おいしくないよ』と言っている木の実を、とてつもない手間暇をかけてアク抜きしてまで食う人類の執念がすごい」「トチ餅ってこんな大変な食べ物だったのか」といった感想のほか、「広葉樹と針葉樹の木灰を混ぜるとちょうど良い苦味と後から若干の甘みが出てくると思います!」「工場ですと温水洗濯機と乾燥機をフル稼働させてます、もちろん木灰は針葉樹と紅葉樹のブレンド」といった参考になる声が寄せられています。
道端さんはYouTubeチャンネル「野草研究所」のほか、X(旧Twitter/@wild_grasses)でも野草に関する情報を発信しています。
「野草研究所」動画まとめ
動画提供:YouTubeチャンネル「野草研究所」
(三日月 影狼)
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