読者の皆さんは「メロウ倶楽部」をご存じだろうか。メロウ倶楽部とは、ネットを通じて生きがいのある生活の実現を目指すとともに、社会の発展に寄与することを目的とした中高年世代(円熟世代)の集まりである。最近ではイベント「TEDxTokyo 2014」でエクセルアートを披露し、パソコンに出会い翼を持ったメロウ倶楽部の会員である79歳のマーちゃんが素晴らしいプレゼンテーションをしたことで話題となった。
メロウ倶楽部は、1999年11月に設立。2014年7月時点で会員は400人ほど。男女の割合は約男性58%・女性42%で、メンバーの多くは一般に「高齢者」あるいは「シニア」と呼ばれる世代である。年齢分布を見ると、40〜59歳が約3%、60〜64歳が約6%、65〜69歳が約15%、70〜74歳が約24%、75歳〜79歳が約27%、80歳以上が約17%と、65歳以上がなんと会員の約91%を占める。北は北海道から南は九州まで、それから米国、欧州(スペイン)、アジア(フィリピン、台湾)と、世界中から人々が集まり構成されている。事務所は持たず、活動場所はネット上。1年に1回の総会を始め、幹事会などの全ての会議はサイト上で行われている。
そんなメロウ倶楽部がシニア向けのITイベント「これからのデジタル技術とアクティブシニアのライフスタイル」を7月22日に開催。ゲストには慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 古川享氏を迎え、1時間半にわたって最新技術について学ぶ会を開いた。古川氏は会場に集まった円熟世代の方々に向けて、さまざまなデバイスを例に挙げながら最新技術動向を紹介。古川氏の講演が終わると、会場からは手が真っ赤に腫れあがりそうなほどの大きな拍手と歓喜の声が飛び交った。その一部の最新技術をここで紹介したい。
ロボットスーツ「HAL」
HAL(Hybrid Assistive Limb)は、人間の身体機能の拡張・増幅を目的として開発されたロボットスーツ。HALを装着することで人間の身体機能を拡張し、いつもより大きなチカラが出せるようになる。
これを応用し、医療福祉分野におけるリハビリテーション支援や身体訓練支援、身体機能に障害を抱える人たちへの自律動作支援、介護支援、工場などでの重作業支援、災害現場でのレスキュー活動などに生かせるとして注目されている。
「過去に、欧米ではこのような技術が兵士が人を殺すためのパワーとして使われたこともあった。しかし現在の日本では、介護など『人を救うための道具』として注目されている」(古川氏)。
手術ロボット「Da Vinci Xi」
「Da Vinci Xi」は手術をするロボット。医者が執刀するのではなく、4つのアームを持ったロボットが実際に手術をする。
医者は別のブースに入り、ディスプレイに映る三次元の立体映像を見ながらロボットを操作。非常に高度な手術も失敗なくできるとして、また教育にも役立つとして注目を集めている。
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薬剤を患者に届けるロボット「HOSPI」
「HOSPI」はパナソニックが開発したロボット。薬剤師の代わりに、患者に必要な薬品を届けるロボットだ。
薬剤師の仕事は本来、薬を間違えなく患者に届けるという単純作業ではなく、薬の説明や患者とのコミュニケーションなどが望まれているという。そういった時間をより多く作り出すために、このようなロボットが生まれた。
HOSPIは、エレベーターを呼ぶことも可能で、自分で薬剤部からナースステーションに薬を届けることができる。
世界のお掃除ロボット
日本では「Roomba」(ルンバ)がお掃除ロボットとして有名だが、実は世界ではいろいろなお掃除ロボットが活躍している。
床のワックスがけをしてくれる「Scooba」、雑巾をかけてくれる「Braava」、プールの中の掃除をしてくれる「Mirra」、屋根の下の雨戸専用の掃除ロボット「Looj」などさまざまな種類のロボットがある。「iRobot DNA」で検索すると、他にもたくさんのロボットが出てくる。
家庭用ロボット「JIBO」
「電動歯ブラシや車と同じように、もしも家庭にロボットが来たら……?」――そんな未来を想像して作られたのが家庭用ロボット「JIBO」。足もなければ顔もないが、表情があって会話もしてくれるロボットだ。
例えば、パーティーのとき「ちょっとこっち向いて私の写真撮って」と言えば、誰が言った言葉なのか、誰を中心に写真を撮ればいいのかなどを全部分かった上で写真を撮ってくれる。また、スケジュールと連動して「もうすぐ旦那さんが帰ってきちゃうよ!」などと、夕食の準備の時間を知らせてくれたりする。
他にも、顔を認識しセキュリティシステムを作動させたり、留守中に届いたメールを動画で再生してくれたり。ときには、絵本に出てくるキャラクターになりきって子どもと会話をし、従来の「本を読む」という体験まで変えてしまう。
そんなロボットが499ドル(約5万円)で売られる時代だ。「これまで映画やテレビの中で言われてきた『将来のロボット』がようやく現実のものになった」と古川氏は言う。
1600万色以上の色彩表現ができる電球「hue」
「hue」(ヒュー)は自由に色が変わるLEDで、1600万色以上の色彩表現ができる電球。しかも、スマートフォンやタブレットに入っているお気に入りの写真にタッチするたけで、色を直観的に選べるという。
例えば、読んでいる絵本と同じ雰囲気で色が変わっていくといった設定ができたり、旅行に出かけているときに家に人がいるようにライトを付けたり、パーティーのための特殊な空間を演出したりできる。これまで何十万何千万かかっていた演出が、hueを使うことで簡単に実現できてしまうのだ。
知識がなくてもUstream配信ができてしまうカメラ「GV-LS2」
「GV-LS2」は、JVCから販売されているライブストリーミングカメラ。特別な知識がなくても、これ1台で本格的なライブストリーミングができてしまうという優れものだ。スマートフォンやタブレットから操作でき、加速度センサーによってタブレットの動きとも連動する。スマートデバイス1台で、4台まで操作可能だ。
カメラやサーバーなど全てがこの1台に完備されており、後ろにイーサーネットのコネクタや無線LANも付いている。
電気自動車「Tesla Motors」
「Tesla Motors」からは、運転席のすぐ横に17インチのタッチスクリーンディスプレイが付いた電気自動車が登場している。最近では、充電ができるTesla専用の駐車場が設けられたレストランも増えているそうだ。
記憶の銀行「MEMORO」
「MEMORO」は、もともとヨーロッパで始まった取り組み。「第二次世界大戦の思いを全部記憶に残そう」というのがこのプロジェクトが始まったきっかけだが、日本ではそれをもう少し幅広く「自分自身が生きていたことの記録を残しておこう」というものに変化したそうだ。
「例えば、大好きだったおばあちゃんとの思い出の本を開いたらおばあちゃんの声が聞こえてくるとか、そういう環境作りに自分も協力できたらいいと思っている」(古川氏)。
写真からオリジナルアートがすぐに作れるサービス「PhotoFunia」
「もしも自分の顔がラテアートになったら……」「街中の看板に自分が掲げられていたら……」そんなことを想像したことはないだろうか? 「PhotoFunia」は写真からオリジナルアートがすぐに作れるサービス。好きなテーマを選択し、お気に入りの写真を選らんだらわずか数秒でオリジナルアートを無料で作ってくれる。
Webサイトの他、iOS/Androidアプリも無料で手に入り、気軽に自分だけのアートを楽しむことができる。
自分の顔がスタンプになる「StickerMe」
「StickerMe」はLINEのスタンプメーカー。写真で撮った自分の顔をスタンプにしてくれるサービスだ。iOS/Androidアプリともに無料で配布されている(アプリ内課金あり)。
複数の写真から3D映像を作成できる「Photosynth」
もともとMSR(マイクロソフトリサーチ)で開発された「Photosynth」は、複数の写真から3D映像を作成できるサービス。デジタルカメラで写真を撮りながら対象物の周りを1周すると、360度の立体映像ができてしまうというものだ。
特殊な機材などは必要とせず、一歩ずつ横にずれながら1コマずつ写真を撮ればOK!! 本格的な立体映像が自分の手で作成できる(iOS/Windows Phone)。
「これから先、こういうものがカメラに標準で入るようになるだろう」と古川氏は語る。
聴覚障がい支援装置「dayon」
「dayon」は音を触覚に変え音を触れるようにする装置。付属のモバイルケーブルを使えば、さまざまな音を携帯電話で送受信することもできる。
なくし物を見つけるための「hipKey」
出かける前に、「iPhoneはどこだ!」「鍵はどこいった!!」などと大騒ぎしたことはないだろうか。そんな人のために作られたのが「hipKey」。これを鍵に付けておけば、鍵をなくしたときにiPhoneで探すことができる。逆に「鍵はあるけどiPhoneがない!」というときには、鍵にとりつけられたhipKeyを押せばiPhoneを見つけることができる。
後からピントを合わせられるカメラ「Lytro」
「Lytro」は、後から対象物にピントを合わせられるカメラ。「撮った写真を後で見てみたら肝心なところがぼやけてしまっている……」というピンチから救ってくれるカメラだ。
このカメラの仕組みは、一度シャッターを押すと小さな画素で遠くのものも近くのものも全てのものを撮影することで、あとからその対象物をクリックするだけでそこにピントが合うというもの。これを応用すれば、「1枚のカタログの中にある商品を触ると、周りがぼやけて気になった商品だけが見える」というような新しいカタログも作れるようになる。
これを作ったのは、ボートピープルとして漂流し、アメリカにたどり着いたのちスタンフォード大学で研究者として活動していた人物。ここで使われている技術は研究発表論文としても公開されており、「自分のアイデアを商品にしたい」という思いからこの商品が生まれた。
古川氏は言う――「これまでは新しい技術が生まれて商品にする際、開発者は知財をライセンス化して大きな会社が製品にするというものだった。しかし今は、『マイクロファンディング』という形でお金を集め、商品を作り、それを世の中にデビューさせるというところまで全てを自分自身でプロデュースできる世界に変わってきている。『見ているだけの人生はつまらないよ!』ということを、ここにいるみんなで語っていこう」。
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