ニンテンドー3DSダウンロードソフトとして、9月10日より配信される「2048」(税込300円)。スマートフォンで大ヒットしたパズルゲームを3DSへと移植した同作ですが、このゲームが配信されることを受けて、一部のゲーム関係者から戸惑いの声があがっています。
実はこの「2048」、そのオリジナリティをめぐって、少し前にゲームニュース界隈(かいわい)で大論争を巻き起こしたタイトルでした。3DS版の発売元は、Wii Uで「わいわい! みんなでチャレンジ」などを配信しているレイニーフロッグという会社ですが、今回驚きが広がっているのは、こうしたゲームの配信を任天堂が許したという点。これについて任天堂とレイニーフロッグに質問メールを送ってみました。
そもそも「2048」の何が問題だった?
その前に「2048」をめぐるこれまでの騒動についておさらいしておきます。すでに知っている人は読み飛ばしてしまって構いません。
「2048」の元になったのは、同じくスマホ用アプリとしてリリースされ、高い評価を得ていた「Threes!」というパズルゲームでした。「2048」は「Threes!」のルールを少しアレンジしたもので、核となるルールはほぼ同じ。実際、「2048」の作者も「Threes!」を下敷きにしたと公言しており、PC版のページにもその旨は記載されています。
問題は、300円の有料アプリだった「Threes!」よりも、後から無料でリリースした「2048」の方がヒットしてしまったことでした。しかも「2048」の作者はゲームのソースコードをGitHubで無料公開したため、たちまちストアには「2048」の模倣アプリが大量に並ぶ事態に。オリジナルだったはずの「Threes!」は「2048」やその模倣アプリの中に完全に埋もれてしまいました。
最終的に「Threes!」作者はこれを受け、自身のサイトで「Letter to the Rip-offs(盗人たちへの手紙)」と題したエントリを掲載。自分がいかに苦労してこのゲームのアイデアを生み出したか、その開発過程を公開するとともに、「2048」などの後発タイトルを名指しで糾弾しました。これら一連の出来事は多くのゲームニュースサイトで報じられ、アプリ開発者のモラルを問う出来事として、また「パクリや模倣はどこまで許されるのか」といった議論も巻き起こし話題になりました。
一応補足しておくと、「2048」と「Threes!」がいくら似ていると言っても、それだけで罪になるわけではありません。「2048」と「Threes!」とでは微妙にルールが違っていますし、ある意味「2048」は「Threes!」の改良・発展型だという見方もできます。そもそもアイデアは著作権の保護対象ではなく、パクリや模倣というのはもはやモラルの問題だとも言えます。「2048」は今もApp StoreやGoogle Playで普通に配信されていますし、何らかの罪に問われたわけでもありません。
ただ、それでもオリジナルの作者が名指しで糾弾した、という点は無視できない事実です。たとえ法的にはセーフであっても、ゲーム関係者から見れば「モヤモヤする」作品なのは間違いないでしょう。
任天堂「当事者間の問題」「コメントできない」
さて、これら一連の流れを踏まえ、任天堂としてはどう考えているのか質問してみました。任天堂の回答は次のとおり。
「お問い合わせいただいた件に限らず、著作権に関する議論が存在する場合、それは当事者間の話合いあるいは司法の判断により決定されるべき案件でありますので、当社としてはコメントいたしかねます」(任天堂 広報室)
基本的には「著作権については当事者間の問題なので介入しない」というスタンスでしょうか。Twitterでは他にも同様に質問してみたという人がいましたが、やはり同じような答えだったようです。
また同様に、発売元であるレイニーフロッグにも同じような質問を投げてみましたが、こちらは「法的な問題はない」との回答でした。
「当社がニンテンドー3DS向けゲームソフト『2048』を販売することには、特に法的な問題はないものと考えております」(レイニーフロッグ バイアス・トニー氏)
期待が大きかったからこそ
もちろんApp StoreやGoogle Playではこうした騒動は日常茶飯事であって、決して任天堂だけを非難しているわけではありません。スマホアプリのパクリ・模倣は、それはもう目も当てられないくらいひどいもので、現状では「パクったもの勝ち」とさえ言える状況です。
今回の件で開発者たちが困惑しているのは、任天堂ならそういったものとは一線を引いてくれるのでは、という期待があったからでしょう。
「2048」と「Threes!」をめぐる議論に、いまだ答えは出ていません。
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