山梨に拠点をおいて活動している山崎利幸さん。机に向かいながら一心不乱に行っている作業は、なんと鉛筆の芯にほどこす彫刻。そう、山崎さんは「鉛筆彫刻家」なのです。どうやって作ってるの? これ、本当に鉛筆を彫って作ってるの? あとから、くっつけてるんじゃないの? 鉛筆彫刻のあれやこれやが気になります。
―― なぜ、このようなアートに目覚めたのですか?
山崎 5〜6年くらい前の夏、テレビでアメリカの彫刻家の作品を見て、精巧にできてるなー、と驚いたことがきっかけですね。そして、その年の暮れの大掃除の時に未使用の鉛筆がたくさん出てきたので、この機に削ってみようかな、という気軽な気持ちで始めました。
―― それで、削ってみてどうだったのでしょうか?
山崎 最初、普通のカッターナイフでアルファベットの「L」だけを削ったんですね。綺麗に作れると思ったらそうではなかった。芯がなんとなく「L」という形をしてるな〜という程度でした。もうちょっと綺麗に削りたいと思って、1本、1本トライしたところ、カッターだと限界があると気づいたんです。
そこで、文房具屋で使える道具がないかと探しはじめ……、ある時、デザインナイフというものを見つけました。刃先が鋭角になっているので細かいところまで削ることができ、これはいい! と思ってね、今でも使っています。そうした試行錯誤のうちに現在では7〜8点の道具がそろいました。
―― ずいぶん道具が必要なのですね。
山崎 そうですね。まず、鉛筆の木のところだけを削って芯を丸い状態にする。次に、薄い板状にする。そして、そこに文字を掘っていきます。この3ステップでも、使用する刃物は全部違います。道具あって、そこから作品の精度が生まれ始めましたからね。
―― なるほど。では作品ですが、何が得意ですか?
山崎 文字が得意です。ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット。直線や直角が多いアルファベットは初心者にも向いています。曲線は難しいですからね。
山崎 あと、彫っていて楽しいのは鎖のデザインです。
―― え? この鎖、ひと続きの芯からできているのですか?
山崎 もちろんです。ホームセンターに行き、さまざまなタイプの鎖を見て構造を知り、削ってみたんです。たくさん失敗しましたよ。今でもドキドキしながら削っています。うまくできたときは、よし!! と心の中で叫んじゃいますね(笑)
―― 集中力が必要ですね。削っているときはどんなことを考えているのですか?
山崎 折れるという危険性はつきものなので、どの作品でも「折れませんよう」と思いながら削っています。この不安はいつになっても消えないのではないでしょうか(笑)。また、もらった人が喜んでくれるように、とか、びっくりしてもらえたらいいな、と思ってもいます。作品を注文してくれる方は、他の人と一緒にならないプレゼントをしたいからとおっしゃるのでね。
―― 最後にプロ鉛筆彫刻家として、ひとことお願いします。
山崎 作品を見ていただき楽しんでもらえるとうれしいですが、鉛筆を使う機会が少なくなってきた昨今、筆記用具である「鉛筆」を思い出すきっかけにもしてもらえたらとも思っています。
「自称・ケズラーです」と言う山崎さんは、生活にあるものをアート作品にして、私たちが忘れかけていることを思い出させてくれているのかもしれません。今後もどんな作品が飛び出すのか、期待できますね。
(茂木宏美/LOCOMO&COMO)
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