「韓国ではSFが流行らない」――韓国のSF&ファンタジー図書館館長Jeon Hong Sikさんは話す。韓国において、これまで「SF」に分類されている小説はわずか本棚1個に収まる程度。なぜこのようなことが起きているのか。8月29〜30日に開催された「第54回日本SF大会 米魂(こめこん)」のプログラム「韓国SF入門」で語られた内容をレポートする。
韓国でSFが流行らないのには理由がある。それは儒教を切り開いた孔子の教えと深く関係しているという。孔子は「怪しい力」「超自然的なこと」を語らなかった。例えば、韓国では何か願いごとをするときも「大学に合格しますように」「出世しますように」といった内容がほとんど。「今」を見る人が多く、空想的な小説を「大人が見るものではない」「おかしい話」として捉えられている。
しかし、「有名な韓国SF作品は多数あるはず」と疑問を抱く人もいるだろう。例えば、2002年2月に公開された「ロスト・メモリーズ」や2003年「地球を守れ!」、2006年の「グエムル-漢江の怪物-」、2014年の「スノーピアサー」、そして「星から来たあなた」など。実はこれらの作品は韓国において「SF」として扱われてはいない。代わりに「アクション」「恋愛」「コメディ」作品というジャンルに分類されているのだとSikさんは述べる。
韓国では「SF」に分類された途端見られなくなる。それを象徴するかように、5年ほどの年月を経て13億円かけて作られたSFアニメ映画「Wonderful days」(2003年公開)は大失敗に終わった。日本の「攻殻機動隊」などのイメージを受けて映像はキレイだったが、全く流行らなかったという。さらにそこに追い打ちをかけるかのように不法ダウンロードの問題が後を絶たず、DVD販売などによる製作費の回収が難しいといった背景もあるそうだ。
韓国ではSFジャンルで1000冊売れれば多いほう。SF雑誌もまだ存在せず、書いても載せる本がないため書き手も少ない。しかし、日本のSF人口高齢化に比べはるかに若い層が中心となって集まっているのも事実。これから韓国ではどのように「SF」が受け入れられていくのだろうか。または「SF」というジャンルから外れた部分でどのような展開がなされるのだろうか。歴史や文化がもたらす「SF」の視点が非常に興味深い。
(太田智美)
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