京都国立博物館(京都府京都市)は5月10日、幕末の志士・坂本龍馬の遺品として所蔵してきた刀が、近江屋事件で龍馬が暗殺された際に携えていた刀「陸奥守吉行(むつのかみよしゆき)」であることが分かったと発表しました。
同館学芸部上席研究員・宮川禎一さんによると、刀は1931年に坂本家の子孫・坂本弥太郎氏が寄贈したもの。根本に「吉行」と刻印されてはいましたが、当時の刀と違って反りがないこと、刃紋が直刃風で陸奥守吉行の作風と異なることから、懐疑的な見方がありました。
しかし昨年、高知県立坂本龍馬記念館から寄贈の経緯を記した書類が発見。1913年に北海道釧路市で弥太郎宅が火事に遭った際に刀は変形し、後に研ぎ直されていたことが記されていました。刀の根本にある赤焦げた跡はこの時のもので、暗殺時に龍馬が敵刃を受け止めたとして知られる鞘も火災で焼けてしまったそうです。
また昨年秋ごろ、ある学芸員が「刀身の下にうっすらと別の刃紋が見える」と指摘したため文化財用のスキャナーで確認したところ、吉行の作風である拳型丁字の刃紋の跡が見つかりました。宮川さんはこれらの資料と科学調査を照らし合わせ、所蔵する刀が、龍馬が近江屋事件で携えていた陸奥守吉行が火災で変形して研ぎ直されたものだと断定しました。
同館ではすでに刀が龍馬の「陸奥守吉行」であることを展示解説で紹介していましたが、公には話題になっていませんでした。このたび10月15日〜11月27日に開催する特別展覧会「没後150年 坂本龍馬」を告知するにあたって、あらためてメディア向けに発表。同展は陸奥守吉行の実物を展示し、長崎歴史文化博物館(長崎県長崎市)、東京都江戸東京博物館(東京都墨田区)にも巡回する予定です。
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