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「こち亀終了」編集部は当初難色も あえて「華々しい引き際」選んだ作者の“両さん愛”

日本中に衝撃を与えた「こち亀」連載終了。その発表が行われた、神田明神での絵巻物奉納式の様子をレポートします。

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 40年にわたる少年ジャンプでの週刊連載が終了することになった「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(以下、こち亀)。その発表は神田明神(東京都千代田区)にて実施された絵巻物奉納式で行われ、報道直後から大きな話題になりました(関連記事)。日本中に衝撃を与えた式のもようをレポートします。


画像 神田明神

 「こち亀」連載40周年を記念して、作者である秋本治さんの描きおろし巨大絵巻物が神田明神に永年奉納されることが明らかになったのは、6月下旬のこと。同神社は「擬宝珠(ぎぼし)家」の経営する寿司屋「超神田寿司」が付近に店舗を構え、作中にも度々登場する関係の深い場所です。現在の位置に遷座したのは1616年(元和2年)のことで、こちらも今年で400周年という記念すべき年を迎えています。

 境内には奉納式が行われる前から、満面の笑顔で腕まくりをした「両津勘吉」を載せた山車が展示されていました。


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 奉納式には秋本さんをはじめ、週刊少年ジャンプの瓶子吉久編集長ら数十人に上る関係者が参加。雅楽の演奏や巫女の舞、時折「こちら葛飾区亀有公園前派出所」というフレーズが混じる祝詞から、少年漫画ながら絵巻物を世に残すことになった同作の偉大さが伝わってきます。


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画像 奉納式のもよう

 これまでの発表では、絵巻物は「7メートルを超える」と表現されていましたが、実際には8メートルとのこと。和紙を使用しているため漫画で培った技法が使えず、「こち亀」の連載を続けながらの制作作業には大変苦労したそうです。「両津勘吉」を通じて戦後から現代までの文化やイベントを描いており、将来的には昭和、平成という時代を伝える貴重な資料になると思われます。

 絵巻物は9月11日まで祭祀殿で展示する予定。山車は4日午後5時まで境内に設置し、5月に開催される神田祭にも登場します。


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画像 奉納された「こち亀」の絵巻物

 瓶子編集長が「読者の皆様にお知らせがございます」と切り出し、連載終了の発表を行ったのは、この後の記者会見。冒頭で神田明神宮司は「これからも本作品が末永く続かれまして、多くの読者に喜びを与えていただきたいと思います」と述べており、奉納式の関係者にも秘密にされていたと思われます。


画像 右端の山中陽さん(担当編集者)が持っているのは、「こち亀」連載終了となる少年ジャンプ42号

 なぜ、突然このような発表を行ったのか。秋本さんは「40年間も描かされて……いや、描かせてもらって」と、ところどころで笑いを挟みつつ、自身の口から語りました。

 連載終了をここで発表した理由は「両さんはお祝いやお祭りが好きなので、皆に祝ってもらったときにスッと消えるのが両さんらしい」から。「両津勘吉」というキャラクターを重んじて、年齢を重ねて読者が入れ替わっていく少年誌では極めて異例な、40周年、200巻到達、そして巨大絵巻の奉納というタイミングでの華々しい“引き際”を選んだとのこと。当初は難色を示していた編集部も、その意思を尊重したそうです。

 「もちろんずっと描きたい気持ちはある」「ネタはまだまだある」と寂しさをにじませつつも、連載終了は「両さんが喜んでお別れを言うめでたいときだと、皆さんに知ってもらいたい」と強調。日本中に衝撃を与えたサプライズ発表の裏側には、秋本さんが漫画家人生をともに歩んできた「両津勘吉」への愛情が隠れていました。

 なお、この際のコメントの一部は「こち亀」公式サイトにも掲載されています。


画像 作者自身の言葉で、連載終了を伝えました

画像 200巻の表紙 (C)秋本 治・アトリエびーだま/集英社

 連載は9月17日に発売される少年ジャンプ42号が最後。「こち亀」はひとまず終了となります。秋本さんは今後も漫画家としての活動を継続するつもりで、新作の制作を行うとしています。また、「こち亀」に関しても「時々、古巣に遊びに行くくらいはいいかな」などと意欲を見せていました。


マッハ・キショ松


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