滋賀大学にある「時事外国語」の授業がネット上で「めちゃくちゃ楽しそう」「滋賀大編入します」と関心を集めています。内容はというと、ニンテンドー3DSの「とびだせ どうぶつの森」を通じて海外の人と交流しよう、というもの。これはよく学び、よく遊べるやつだ……!
「とびだせ どうぶつの森」は自分の村を作るシミュレーションゲームですが、オンラインにつなぐと「南の島」に行くことができ(通称「オン島」)、そこでは他のユーザーと交流することができます。今回話題になっている講義「時事外国語」では、クラス20人が1人1台ずつ3DSを所持し、「オン島」で毎日会話するような他国の友人を作ります。仲良くなったあとは「日本のゲームはどういうものが好まれているか」など、授業中に決めたテーマに沿って海外の友人に国の事情を尋ねていくという内容です。
この秋学期に経済学部で初めて開講され、すでに講義は第1回目を終えています。担当教員の永田えり子教授によると、受講生20人に対し申し込みは30人以上。締め切り後も「今からでも受けられないですか」と問い合わせがあったなど、大学講義にしては珍しく申し込みが多かったそうです。受講生のうち10人は3DSを持っていなかったため、研究費用から10台買って渡したとのこと。ソフトは全員が自腹で用意しますが、それにしても太っ腹!
しかしネットで交流できるゲームソフトはいろいろあるなか、なぜ「とびだせ どうぶつの森」を教材に選んだのでしょうか。
「グローバル化が進む昨今、LINE、Skypeなど、外国人ともネットで日常的に交流することがメインになると考えています。その際のハードルは国の言語だけでなく、『lol』など世界共通のオンライン上の独特な言語もある。そういったものも含め、学生にもっと言葉の苦労なしに外国人と交流してもらいたいのです」(永田先生)。
その交流を育む場として「とびだせ どうぶつの森」は“極めてよくできている”のだそう。
「こうした交流を育むにはSkypeでただ『天気が良いですね』みたいな日常会話するだけではだめで、共通の話題や目的といった“タネ”が必要なんです。『ぶつ森』ではヨーロッパ版とかアメリカ版とか、その国のバージョンでしか手に入らない特別なアイテムがあります。日本版だと鏡餅、とか。アイテムのコンプリートを目指すにはよそのバージョンの人と交流しなくてはいけないので、互いにコミュニケーションを取ろうとする“タネ”がすでにまかれているのです」(永田先生)。
「オン島」ではこうした理由から能動的に交流をとってくれる人もいるほか、仲を深めるミニゲームもあります。外国人たちと手軽に出会えて日常的に交流できる要素が、このソフトには詰まっている――なんかすごく教養の高いゲームに思えてきた!
それとは別に、永田先生も相当「とびだせ どうぶつの森」がお好きなのでは? 尋ねたところ「一時期めちゃくちゃハマりました」と声を弾ませます。そもそもゲームと社会の関わりを日頃から研究しているそうで、過去には「ドラゴンクエスト3」を題材にドラクエがなぜ社会でブームとなったのか論文を発表しました。「どうぶつの森」もプレイに夢中になりながら「これは講義にいい」と教材価値を見出したといいます。
講義はまだ始まったばかり。次の授業ではクラス内みんなでフレンドになり、お互いの「外フレ」(外国人ユーザー)を紹介し合う予定。永田先生も「たくさんの外フレと知り合って、たくさん日常会話をしまくってほしいですね」と意気込みを見せています。
(黒木貴啓)
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