10月13日にPlayStation VR(PS VR)が発売され、大きな話題を呼んでいます。そんな中、Twitterをきっかけとして浮上したのが「VRを対象年齢に満たない子どもがプレイすると斜視になる危険性がある」という説。VRゲームを低年齢層がプレイするとどんな危険性があるのか、あるとすればどのように回避できるのか、PS VRの発売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメントと生理学の権威にお話を聞きました。
VRゴーグルに警鐘を鳴らしたのはあるPCパーツ販売員の「13歳未満がVRゴーグルを使用すると斜視になるリスクがあるが、それほど告知されていない」とするツイート(現在は非公開)でした。この指摘自体はOculus RiftやGear VRなどが発売された当時からされていたものですが、今回PSVRが発売されたことをきっかけに再注目を浴びることとなりました。
この指摘について、生理学の権威である新潟大学名誉教授・医学博士の板東武彦先生は「6歳までの幼児については二眼式の両眼視映像を見るときに注意が必要とされている」と説明します。板東先生によると、6歳(場合によっては8歳まで)までの子供は視覚の発育過程で環境の影響を受けやすい「感受性期」にあり、この時期に、例えば片目に眼帯をした場合には、その側の眼からの刺激を大脳視覚領に伝える回路に変化が起こって、両眼視をすることができなくなるとのこと。つまり二眼式の立体視はあくまで疑似的に視差を錯覚させるもののため、目の使い方を学んでいる最中に通常とは異なる方法で立体視させると異常を起こす可能性があるということです。
実際に起こった症例としては赤緑式の立体映画を見た4歳児がその後、斜視になったという報告がされています。この症例はのちに行った斜視の手術により治癒したとのことですが、先天的に斜視の要素を持っている場合、強い刺激を受けると、斜視の症状が顕著に現われることが知られています。立体映像と斜視との因果関係が完全に証明されたわけではありませんが、注意が必要だと板東先生は喚起します。
またPS VRは12歳以上、Oculus Riftは13歳以上、ハコスコは2眼の場合7歳以上(単眼は全年齢)と多少のばらつきはあるものの、ほとんど全てのVRゴーグルが対象年齢を12歳〜13歳以上に設定しています。このことについては「動揺病」が関係する可能性を示唆しました。動揺病とは、いわゆる船酔いや車酔いのような状態を指し、VRゴーグルを使った際に発生する映像酔いもこの一種です。動揺病について感受性が高いとされるのが、2歳〜12歳程度とされているため、12歳を境にしているのではないかと板東先生は推察しています。
この対象年齢の設定についてSIEの担当者は「さまざまな面から検討して設定した」と詳しい設定理由を明かしませんでしたが、プレイによる健康への影響については「通常VRゲームに関わらず、ゲームを1時間プレイしたら15分程度の休憩をとっていただくことを注意喚起している」と話します。
また「不快感を感じたらすぐに使用を中止すること」や「現在までにPS VRを使用して体調に異変が生じたという問い合わせは来ていないが、できれば商品の購入前に体験会に参加するなどしてご自分に合う、合わないというものを確かめていただきたい」と購入前に商品の感覚を試すことを推奨しています。
また、前述の「低年齢層のVRゴーグル使用の危険性を十分告知できていないのでは」という指摘に関しては、「体験会では必ず年齢確認を行っていること」や「販売店にも、商品販売時に対象年齢は12歳以上であることを告知するよう求めている」としています。これに加えて製品パッケージ、説明書、起動時のノーティスにも12歳以上対象であることが記載されています。
確かに筆者が以前PS VRの体験会に参加した時も、画面酔いの可能性や異変を感じた際は知らせることなど、丁寧な注意告知を受けました。
楽しいはずのVRゲームで負担を感じないためにも、まずは「対象年齢を守ること」「映像酔いという現象を認識すること」「異常を感じたらすぐにプレイを中止すること」など基本的な遊び方を守ることが重要です。
(Kikka)
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