自民党の河野太郎議員が、11月に提起された研究費の使い勝手を損なうローカルルールの問題(関連記事)について、12月2日のブログ記事で実例を募った。その結果、多くの大学での事例が寄せられ、河野議員は12月11日の記事で一部を公開。「店舗などに直接当たればすぐ安価に買えるものでも、指定業者から時間をかけて割高で買わなければならない」といった、外部から見ると不可解に思える多くのルールが明らかにされた。
備品等の購入においては、立て替え払いができないために手間とコストが倍増した事例が多数。香川大学では「コンビニに行けば10分で買える100円の物を、業者を通じて1週間かけて500円で買わなければならない」という。また、東京大学では海外から直接物品を買えないとの報告も。クレジットカードで決済できれば130ドル(約1万5000円)で買える海外品を、代理店を通し4万円で購入しなければならないといった実例が挙げられている。
書籍を公費で購入する場合は、多くの大学が付属図書館を仲介することを原則としている。蔵書の管理上必要と思えるルールではあるが申請の手続きが煩雑で、申請後1カ月もたってから「品切れ」と処理されるケースも(九州大学)。「学会会場で購入した書籍が管理システムへの登録の名目で約1週間取り上げられてしまう」(神戸大学)「洋書をオンラインで直接購入できず、国内代理店などの使用が求められ、割高のうえ入手に時間がかかる」(東北大学)など、研究の進行に支障を来す問題が多く見受けられる。
「コンピュータの購入には原則として見積もりが必要で、故障しても即日買うことができない」(神戸大学)など、機材の導入にも不便がつきまとう。北海道大学では共通機器が故障した場合、「当該課題以外にも利用している場合、科研費の目的外利用にあたる」との理由で修理に科研費を使えず、「購入した機器を有効活用すればするほど、その機器の使い勝手が悪くなってしまう」と、不条理な事例が報告されている。「『発表は研究の一部ではない』と判断され、学会発表のためにノートPCやレーザーポインターを購入できない」(大阪大学)と、公費使用の可不可の線引きが不可解なケースもあるようだ。
「1回の出張で複数の用務をこなすことは時間と経費の節約になるはずだが、その場合は行きの旅費しか出ず、その業務に関する滞在費が出せない」(北海道大学)など、旅費については不正防止のためか、融通の利かないケースが多く見られる。大阪大学では特急を使う場合、在来線を使って特急券代を着服することを防止するために、会計用に特急券を持ち帰るルールがあるという。しかし新幹線の場合は券が自動改札機に回収されるため駅員への説明が必要で、混雑時には乗り継ぎに支障をきたしている。なぜ領収書の提出ではいけないのだろうか。
地方出張時に「始発で間に合うのであれば前泊は禁止」「学会後終電で帰宅できるのであれば延泊は禁止」とする山形大学のルールは深刻だ。5時の始発で間に合うとされるため、ほとんどの学会では前泊は禁止に。延泊禁止に該当するケースもほとんどで、学会が午後に終わる場合、事後に有益なディスカッションもできぬまま帰宅を余儀なくされてしまうという。
取りあげられた「ローカルルール」とされる事例は、着服やカラ出張といった不正を防止するために設けられたものと推察される。しかし、そのしゃくし定規な点が研究者に不便を強いて、研究に悪影響を及ぼしている事実もあるようだ。こうした諸問題をいかに調整するか、河野議員の手腕が注目される。
(沓澤真二)
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