会社更生とは 〜民事再生との違い〜
会社更生は、破産しかない状態になる前に、民事再生と同様に返済プランを作り、従う点は同じです。では、民事再生と会社更生ではどこが違うのでしょうか。
(1)経営陣の進退と返済プランの作成者
1つ目に、民事再生では、それ以前の経営陣が続投でき、返済プランの作成も会社の関係者が行うことができます。
それに対して、会社更生では基本的に経営陣は一新され、返済プランも外部の専門家が作成します。
これだけ見ていると、どの企業も経営陣が続投できる民事再生を選べばいいじゃないか、というお話になってしまいますね。さらなる違いを見ていきます。
(2)会社の財産がどのくらい残るか
借金をするときには何かしらの財産を担保(借金が返済できない場合に備えた保証)に入れます。
民事再生では原則、その会社が債務を返済できなかった債権者に対して、担保に指定していた財産(例:土地や建物)の競売を申し立てる権利が与えられます。
一方で会社更生では、この競売権が債権者のものではないため、債権者自ら競売を申し立てることはできません。
(3)会社の形態をどこまで変えられるか
会社が合併されたり事業を再編するには、「会社法」で決められた「株主総会の同意」などの別の手続きが必要です。しかし、会社更生の場合は、「会社法」で決められた手続きなくして事業再編や合併が可能です。
まとめると、民事再生では「身内の権利を守る代わりに、会社の再建のための手段が減る」、会社更生では「会社の身内の意見を締め出す代わりに、より確実に会社自体を再建できる」という具合です。
会社更生によって再建した会社として、近年で最も有名な例は日本航空(JAL)です。
JALは2010年に経営破綻すると1月に会社更生法の適用を申し立てました。同年2月には代表取締役社長や会長らが交代し、新経営陣が発足しています。JALは日本の輸送を担う重要な企業であり、確実な再建が求められたため「会社更生」を選択しました。
「会社更生」は、民事再生と比べて強力な再建手段なので、債務に関する権利関係が複雑な会社や、大きな株式会社がよく選択する傾向にあります。
まとめ
各用語の違い、つかんでいただけたでしょうか。
これ以外にも、借金の貸方と借方が直接話し合う「私的整理」や、株式会社が解散したうえで手続する「特別清算」などの手続きもあります。最近ではパナソニックの子会社「パナソニックプラズマディスプレイ」が「特別清算」の手続きをしていますが、ニュースで耳にすることは少ないのでここでの紹介にとどめます。
倒産処理のなかでも、「破産」が債権者の資金回収を重視しているとするなら、「民事再生」や「会社更生」はその後の会社の再建をより重視した手続きであることは、覚えておいて損はありません。
新しい企業が生まれていく一方で、経営破綻する会社も少なからず存在します。このとき、その会社が選択した手続きに注目することで、世の中を少しだけ理解できるかもしれません。
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