カラオケで歌唱する動画をYouTubeに投稿した男性に対して、通信カラオケメーカーが訴訟を起こし、男性が敗訴していたことが分かりました。そもそも一体何が問題視されたのか、大手メーカー2社にお話を聞きました。
今回話題になっているのは、通信カラオケ「DAM」を展開する第一興商が起こした訴訟で、カラオケ店内で撮影した動画のアップロードの禁止と削除を求めたもの。
男性は答弁書で、「自主的に動画をYouTube上から削除した。そもそも自身の歌唱の様子を撮影したものであって、原告の利益を明確に侵害したとはいい難い」と主張しましたが、東京地裁は「原告の上記カラオケ音源にかかる送信可能化権(著作権法96条の2)の侵害に当たる」と判断。男性に敗訴を言い渡しました。
「DAM」を展開する第一興商に聞く、訴訟に踏み切った理由
そもそもカラオケをしている様子をYouTubeに投稿することにはどんな問題があるのか、第一興商の代理人・川野智弘弁護士にお話を伺いました。
――なぜYouTubeにカラオケの歌唱動画を投稿してはいけないのでしょうか
川野弁護士:一言にいうと、著作権法上違法だからです。例外的なケースもありますが、今回は第一興商の許諾を得ずに動画を公開しており、明らかに著作隣接権(※)を侵害しているものでした。歌唱動画に関する訴訟に関しては今回が初めてのケースになると思われます。
――今回問題となったのはどんな歌を歌ったものですか、また訴訟に踏み切ったのはなぜですか
川野弁護士:今回はLittle Glee Monsterの「私らしく生きてみたい」を歌唱したものです。当初はYouTubeの削除フォームから削除依頼を行いましたが、任意の削除に応じる気がないことなどを含めて訴訟に至りました。
――YouTube上での削除依頼を年間どの程度行っているのでしょうか
川野弁護士:YouTubeだけで、年間12万件程度です。第一興商としては違法な動画の取締を強化しています。
――インターネット上に歌唱動画を投稿することは許されないということなのでしょうか
川野弁護士:第一興商ではカラオケ歌唱動画をネット上に公開するために「DAM★とも」というプラットフォームを用意していますので、そちらをご利用いただきたいです。
またJOYSOUNDを運営するエクシングにも取材を申し込んだところ、同社が動画サイトに対して行っている歌唱動画の削除依頼は年々増加傾向にあるとのこと。
削除依頼の理由について詳しく聞いたところ、カラオケデータの著作隣接権はカラオケメーカーの資産であることから、動画をアップロードする場合には、ユーザーが個別にカラオケメーカーと契約を締結する必要があるとのことでした。
なお、第一興商と同様にエクシングが運営する「うたスキ動画(歌唱動画を投稿するサービス)」を利用すれば問題はないとのこと。
エクシングではこれまでに訴訟に発展したケースはないとのことでしたが、JOYSOUNDの音源を使用した動画を発見した場合には、動画投稿サイトのユーザー利用規約違反として、投稿サイトの運営者に通報して対応を求めるほか、各動画投稿サイトのユーザー利用規約に従った措置(一定期間の利用停止や、ユーザーアカウント自体の停止なども含めたもの)を求めるとのことでした。
「歌ってみた」などの歌唱動画が人気を集める昨今、今回の判決は大きな波紋を呼びそうです。
(Kikka)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 米YouTuber、子どもへの過激すぎるいたずら動画で炎上 謝罪するも児童虐待と非難殺到で親権を失う
どうしてこうなってしまったのか……。 - 「4分33秒黙ってたら著作権料発生する?」 JASRACにド直球な質問をぶつけてみた
まぁそりゃ発生しませんよね。 - 「FNS歌謡祭でAKB48がダミーマイクを使用?」画像がネットで拡散中→デマです
出回っている画像はFNS歌謡祭のものではありません。 - 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
今後は新曲「ジャンバリましょう」を公開するとみられています。 - SNSアプリ“ゴルスタ”が「独裁的運営」と炎上 中高生に忠誠誓わせ「まるでカルト宗教」の声、個人情報暴露のウワサも
運営批判は「威力業務妨害」?