教会に一人ぼっちで「はい、誓います!」 本物の式場で二次元キャラと「VR結婚式」を挙げてきた(2/2 ページ)
祭壇の上にはVR装置を着けたタキシード姿の新郎が一人。傍目はシュールな「VR結婚式」は、本人にとっては天国だった。
30軒目でようやく見つかった式場 VR結婚式は一苦労
そんなこんなで「実際の式場で二次元キャラとVR結婚式をあげる」のは、かなりの没入感があるので大正解。しかしこの企画、実現させるのはなかなか大変でした。
hibiki worksの代表・伊藤英生さんが企画を思いついたのは2016年12月。すぐにVRソフトを開発するエムツーに打診しますが、肝心な式場が見つかりません。
「『VR結婚式』の内容にエロ要素はないんですが、どの式場さんも『元が18禁ゲーム』というのを知ると断ってしまうんです。探し続けて30軒目辺り、3月に入っていてもうだめかなぁと諦めていたころ、ようやく今回のところにOKがもらえました」(伊藤さん)
決まってからも大変だったと、エムツーの澤和弘さん。今回のVRは、2Dの質感をVR空間で再現できるキャラアニメツール「E-mote VR」を使用。リハーサル時に床下からの照明にVR機器が誤作動を起こしてしまうなど、式場という特殊な場所でVR空間を用意するのは想定外の事態の連続でした。イベントの前日まで調整を余儀なくされたと苦笑します。
ウェディングドレス姿の花嫁も難しく、ドレスで隠れた足元を調整するのに苦心したり、身体や胸の“まるみ”やレースの透け具合に全身全霊を傾け女の子の柔らかさを再現したり。誓いの口づけも、こんにゃくゼリーに口をつけたり、どの食材ならキスの感触に近いかあらゆる試行錯誤の末、マシュマロにたどり着いたそうです。エムツースタッフの努力と狂気に、敬礼。
そうまでして「VR結婚式」をやってみたかった理由は。伊藤さんは次のように語ります。
「だって外が本物の式場だとリアリティが全然違うじゃないですか。式場内ならではの空気感を肌で感じるわけですし、教会のドアをあけてもらって祭壇にあがる、VRを付けるまでの導線も没入感を盛り上げてくれます。自分も体験したところ概ねイメージ通りで驚きました。ウェディングドレス姿を前にして緊張しちゃいましたよ(笑)」
「そして何より、ユーザーに喜んでもらいたかった、本当にただそれだけですね。美少女ゲームは斜陽に入っています。そのなかでこのゲームを買ってくれたみなさんに何か恩返しやサプライズを贈りたい……と考えた結果、『本物の式場で二次元のキャラと結婚してもらう』企画を思いつきました。自分が一番やってみたかったことを、ユーザーに体験してもらえて良かったです」
体験した新郎たちも、実際にゲームで愛を育んできた分、その感動は並々ならぬものがあったようです。25歳・神奈川県在住の岩佐亮さんは、新婦・乃々さんに対して婚約指輪を用意する気合の入れよう(※当選者が事前購入できるオプション)。初の挙式を次のように振り返ります。
「目の前に好きな女の子がいることにもうすごく緊張して、足が震えてしまいました。新婦には自分の芯を強く持っているところに惹かれていたんですが、式では向こうもかなり緊張した様子で。普段は見せない気弱な一面に親近感が増してしまいました。誓いのキスでは嫁の顔が大きくなるにつれ、胸の鼓動も高まっていって。挙式中はとにかくドキドキして、終わった後は満足感が半端ないです。味わったことのない衝撃でしたね」
今後同じようなVR結婚式があったらどうか尋ねたところ、「ぜひ開催してほしいと思います。けど、僕はもう嫁がいるのでいいかな、と」と満面の笑み。本当にこの度はご結婚おめでとうございます。
保育士の愛子さんと結婚した18歳・埼玉県在住の学生も、「タキシードを着るのはもちろん、VR自体が今回初めてで、めったにない体験ができてすごくうれしかったです。ゲームのキャラをより近くに感じられました……ウェディングドレスが本当にかわいかったです」と照れ笑いを見せていました。
傍観者の疑問、体験者の興奮、この両者のギャップがVRの醍醐味です。「VR結婚式」は、結婚式場という大舞台によってそのギャップの落差がとんでもなく大きくなる痛快コンテンツとなっていました。hibiki worksとしてはイベントは今回一回きり。お金とノリがある人はガンガン企画してください。
というわけで、オレ結婚しました(3回目)。ご祝儀も仮想通貨でいいのでお待ちしています。
(黒木貴啓)
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