広告に小さく書いてある「※個人の感想です。効果には個人差があります」などの“打ち消し表示”は、景品表示法上の問題はないのだろうか。
消費者庁が2017年7月に95ページにも及ぶ報告書を公表した。この報告書は「※個人の感想です」だけではなく、「※エリアにより使用できない場合があります」「※オプション加入が必要です」など、大きく宣伝されている宣伝文句を打ち消す注意書き、いわゆる“打ち消し表示”全般について調査している。実に90%近くの人が打ち消し表示に気付いてない実態がこの調査で浮かび上がったのだ。
この実態をふまえ、消費者庁はこれらの表示に対する景品表示法上の考え方も示している。具体的にどのような“打ち消し表示”が問題となるのか、報告書を読み解いていこう。
“打ち消し表示”を見落とせばトラブルにもなる
新聞広告、電車内の広告、テレビ、Webサイトを見たときに、大きく書いてある宣伝文句の下に、小さく注意書きがあるのはよくある光景だろう。この小さな注意書きが“打ち消し表示”である。
例えば、「入院保障が一生涯続く! 何回でも受け取りOK」という宣伝文句を見れば、誰もが入院したら必ず給付金がもらえる保険のように感じるが、よく見れば「医療行為、医療機関などによっては、給付対象とならない場合があります」と宣伝文句を打ち消す、例外条件が書いてある。
実際に打ち消し表示を見落としたことによるトラブルも起きている。
- スマートフォンの端末が割引されていたので購入したが、割引を受けるためには別途有料サービスの契約が必要であった。
- 何かのサンプルを安価で購入できるとあり、申し込んだが、小さく定期購入が条件とあったのを見落としていた。
- 通販サイトで送料無料とあったので1個購入したが、送料無料は3個以上の購入の場合のみだった。
この例を見れば、誰もが自分にも起きそうなことと受け取れるだろう。
そういったトラブルが起きている実態があるにもかかわらず、普段から57〜70%の人は打ち消し表示を見ようと意識していないのである。
94%が気付かない Web広告の打ち消し表示
消費者庁は、架空のインターネット回線を宣伝するWeb画面をつくり、1000人のモニターを使って評価をしている。
「18カ月間 月々320円割引!」という大きな宣伝文句の下に、小さな文字で注意書きが書かれている。そしてスクロールしなければ見られない下の方に、金額や通信速度の大きな宣伝文句とともに、打ち消し表示がされている。合計4カ所の打ち消し表示がある。
調査の結果、一番気付いた人が少ない打ち消し表示は94%もの人が見落としていた。一番気付いた人が多かった打ち消し表示でも84%は見落としている。想像以上に気付かないことに驚いたのではないだろうか。大きな字で書かれている宣伝文句だけに意識が向いてしまい、小さい打ち消し表示に気付くことができなかったようだ。
ちなみに、この打ち消し表示の文字の大きさは10ポイント程度で作られている。同報告書で実際の広告の調査もされているが、PC向けのWeb広告の打ち消し表示の文字サイズは10ポイント未満が80%を占めている。決して消費者庁が作った架空の広告が現実離れしているわけではない。
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