この仕事は続けられてあと5年か、10年
――松田さんと知り合ったきっかけは「CoCo-Life☆女子部」というところだそうですが、こちらはどういった団体なのでしょうか。
和久井 CoCo-Life☆女子部は「施無畏(せむい)」というNPO法人が運営している編集部で、障がいのある女子たちに向けたファッション・情報誌を作ってます。もちろんその紙面に登場するのも全部当事者だし、ライティングをするのも当事者。女の子の、当事者目線でものを作るっていうのが1つの特徴なんですけど、それだけだとクオリティーが担保できないので、そこをプロの方たちがプロボノ(ボランティア)という形でサポートしています。
――現在、ライターは女性ばかりのようですが、ブラインドライターズには男性でも参加できるんですか?
和久井 現在も新人ライターを募集してますが、男性も大歓迎です! 残念ながら継続することが難しかったようですが、過去にも男性からの応募はありましたよ。
――「ブラインドライターズ」では全員目に障がいがあるんですか。
和久井 ライターさんはそうですが、校正で入ってくれてる咲坂美緒さんは下肢障がいの方です。みんな得意不得意があるので、そこはうまく配分してます。
――依頼はどういったものが多いのでしょうか。
和久井 いろいろですね。最初は知人を介したお仕事が多かったですが、最近はメディアさんからのお仕事が増えてきました。サイトがあちこちで取り上げられた直後はさまざまな分野の方からの依頼が増えたのが意外でしたね。「そもそもこんな仕事があったのか」と知っていただけたようで。
――料金が良心的ですよね。通常料金が15分1500円、誤字校正ありが3000円、完全書き起こしが8000円と。
和久井 ただ、通常料金で受けている限りどうしてもライターさんに満足いく月給がお支払できないんですよね。プラス1万円で「特急料金」というコースがあるのですが、こちらが合わさってくることで、ようやく専門的な仕事としてのお給料になってくる。基本料金の値上げも考えたことはありますが、同じような値段でやられている方もいらっしゃるので、競争力がなくなるよりは、他の依頼よりも優先して作業する「特急」で、お急ぎの方にはその分をお支払いいただくほうが双方メリットがあるのではないかと思って。なので「通常」や「校正付き」のご依頼の場合は、納期を少しお待ちいただくこともあります。一般のライターさんは今の金額がギリギリだと思うんですよ。あと、完全書き起こしは、そもそも「通常」のクオリティが高いので、依頼が来てもお勧めしていません。
――ご自身がライターをやられているからこその視点ですね。運営の観点から見て、今後の「ブラインドライター」「ブラインドライターズ」はどうなっていきそうですか。
和久井 結局、目の前の仕事に全力で取り組んでいくしかないと思ってます。音声読み取りソフトがすごい勢いで発達しているので、たぶんこの仕事は続けられてあと5年か、10年いけばいいくらいかなと思ってるんですけど。同時に他の技術も進んでくるとは思います。視覚を補助する技術が開発されるとか。でも今はそれを考えてもしょうがないので、仕事を誠実にこなしながら次の何かに備えられる、プラスアルファを勉強しておくっていうのが最善かなと。
どんな仕事も5年、10年と同じ状態では続けられないですよね。形を変えていかないと生き残れないので、そこは別にこの業界だからということではないと思います。ではこの先何をしていけばいいかっていうのは現時点では分からないので、取りあえず今この仕事をしながらできることをやるだけですよね。それこそ「語彙を増やす」とか、地道なところからコツコツと。
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