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プリキュア恒例の入れ替わり回は「自分らしく生きる」ことの意味を問うサラリーマン、プリキュアを語る(2/3 ページ)

猫になっても全く動じないゆかりさん、さすがです。

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琴爪ゆかりが、わからない


 自分は「琴爪ゆかり」というキャラクターが本当にわからないのです。

 当初はミステリアスなお姉さん、という感じで、第16話「キケンな急接近!ゆかりとリオ!」においては、敵である「ジュリオ」を翻弄(ほんろう)し、手玉に取り、1枚も2枚も上手であることを見せつけました。

 しかし、その後の第25話「電撃結婚!?プリンセスゆかり!」では、かなりの不安定さを見せ、弱さを吐露し、迷うキャラへと変貌するのです。

 さらに、第29話では過去のトラウマを克服し「楽しさは与えられるものではなく、自分でつかみ取るもの」との心境に至ります。

 そんな彼女が、今回「自己犠牲」ともいえる“崖から飛び降りて、場を丸く収める”なんて行動を取るのです。

 琴爪ゆかりというキャラは、「自分を中心に(良い意味でも悪い意味でも)周りを翻弄するタイプ」で「自己犠牲」とは最も遠いところにいるキャラだと思っていたのですよね。

 もう、おじさんには理解不能なキャラクターなのです。

 そもそもプリキュアが「自ら死を選ぶ」ということは考えにくいのですよね(でもよく考えたら「猫のクリスタルアニマル」と入れ替わっているため、猫ゆかりは「飛べる」はずなので崖から落ちても大丈夫だったのかな?)。

 しかし、そんな悪くいえば「一貫性の無さ」、良い意味での「気まぐれさ」が、彼女の魅力なのかもしれません。

 まさに第5話タイトルにあるように「気まぐれお姉さまは、キュアマカロン」なのです。


女性の視点で描かれる琴爪ゆかり

 今回脚本を書かれた森江美咲さんは、「アイカツスターズ!」でも女児向けアニメの脚本を手掛けていますが、キラキラ☆プリキュアアラモードの脚本は初参加です。

 キラキラ☆プリキュアアラモードの「ゆかり回」といえば、坪田文さん(「魔法つかいプリキュア!」や「映画プリキュア ドリームスターズ!」でも脚本を担当)が書かれることが定番だったのですが、森江さんの手により、また新たな琴爪ゆかり像が垣間見られました。(2人とも、心理描写や、ちょっとしたしぐさなどの女性視点の繊細な描写が魅力的です)


 ちなみに、今回絵コンテを担当された今千秋さんは、名作映画「映画ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ」の監督さんですね。こちらも女性です。(ちなみに「人形の国のバレリーナ」は「プリキュアにも出来ないことがある」というテーマが秀逸で、挿入歌からのラストバトルが最高に熱く、感動するのです! おすすめの映画です)

 プリキュアのプロデューサーである神木優さんも女性ですし、琴爪ゆかりは、女性による女性のためのキャラクターなのかもしれませんね。(そう。自分のようなおじさんには共感が難しいのも当たり前なのです)

 昨今のプリキュアは3年連続で女性がキャラクターデザインを手掛ける等「女性の感性」で作られることが多くなってきましたね。それもプリキュアが多くの女性ファンを引き付ける要因の1つなのでしょう。


キュアマカロン、子どもに大人気

 さて、そのキュアマカロンですが、実は、子どもに大人気なのです。

 プリキュア公式YouTubeチャンネルの動画再生数も、変身シーン動画はキュアホイップに次いで僅差(きんさ)の2位。子どもが踊りを覚える際に使う「ダンスレッスン動画」では、圧倒的な再生数1位です。


プリキュア公式YouTubeチャンネル、ダンスムービーの再生数(2017年10月1日23時30分現在)。グラフは著者作成(キュアパルフェは7月に追加されたので再生数が少ない)


 幼児誌『たのしい幼稚園』の表紙でも大きく取り上げられるなど、キュアマカロンの子ども人気はかなり高いようです。


『たのしい幼稚園 2017年11月号』。キュアホイップ(下中央)、キュアパルフェ(左)、キュアマカロン(右)が大きく取り上げられる(Amazon.co.jpから)

 やはり「ミステリアスな雰囲気」と「きまぐれ加減」が女児の心をもつかむのでしょうか。かつて、「Yes!プリキュア5GoGo!」(2008年)でも、紫色のお姉さんキャラ「ミルキイローズ」が子どもに大人気だったと聞きます。もっとさかのぼれば、同じニチアサ同時間帯に放送されていた「おジャ魔女どれみ」でも、紫色の小悪魔系キャラ「瀬川おんぷ」は子どもからの支持率が高かったようです。

 やはり「紫色」「お姉さん」「ミステリアスさ」は大人の象徴、憧れの対象として子どもの目に映るのでしょうね。


ビブリーちゃん、どこいった?

 ただ1つ、今回のお話で残念だったのは、前回仲間になってキラ星シエルのパティスリーで同居することになったビブリーに全く触れられなかったことです。

 せっかく悪側から善側へ転向し、キラキラルは「人から奪うもの」ではなく、「自分で作り出すもの」という物語の根幹を成す大切なことに気が付いたキャラクターです。

 1シーンでも出て、なにか一言でもしゃべれば、きっと物語に厚みがでていたのではないでしょうか。(でも、そのうちきっと大活躍するでしょうから、それを待ちましょう)


第33話「スイーツがキケン!?復活、闇のアニマル!」から、ビブリー(左)とキラ星シエル(右)

 ところで、第34話で一番面白かったのは、このシーン。

 敵がいちご山にいることを察知した5人が戦いへ向かう場面です。



 左上の(中が猫の)ゆかりさんが、「煮干し」の袋を大事そうに抱えています。煮干し大事。「この煮干しは私が守る」って思ってそう。

 キラキラ☆プリキュアアラモード第34話は、一見プリキュア定番の入れ替わり回で、面白い絵が満載で小さな子どもも大喜びするであろう、シュールな回ではありました。

 しかし、その根底には、「自分らしく生きるとはどういうことか?」を問われていた気がするのです。あと、ゆかりさんが、やっぱりわからない。

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