先生と生徒の恋愛物語って昔からありますけども、現実ではそもそもだめなんですよ、アウトですよ。
だからフィクションで楽しもう。『先生、好きです。』(三浦糀)の第1話タイトル「女子校教師になってJKと恋してみたいと一度でも思ったことはありますか」に、果たしてNOと言える人はどのくらいいるのか。
異性として先生が好きなんです
女子校の教師、樋口夕樹。先生になって2年、全然うまくいかない日々が続く中、生徒の市川さんに告白されます。
恋愛経験ゼロの樋口先生。「私は異性として先生が好きなんです!!」と攻めてくる市川さんにたじろぐ。いやいやだめでしょ、倫理的に。すると市川さんの次の手は、こうだ。
彼女の攻め方は超至近距離戦。女性として見てもらうための行動をどんどん取っていきます。女子高生が自分の胸をもませてくる。人生でどんだけ徳を積めばこんな体験できるんでしょうか。いや、とはいえこれ、他人に見られたらアウトですね。
ピュアな瞳で、グイグイせまる市川さん。
本人は「女」アピールをしているようですが、彼女の真の凶器は無垢の方。揺れるセミロングの髪。大きく開いた瞳。あどけない口元。ゆるめの胸元のリボン。真っ赤な頬。本人、そこは意識していないからこそ、怖い。胸の「ふに」も本人わかってないんじゃないかなあ。
一生懸命背伸びして、女としてドキドキさせようとするけど、子どもっぽさが前に出る。このアンバランスが、人を惑わせる。
市川さんによる恋心猛攻撃
市川さんによる、樋口先生への好き好き猛ラッシュ。一話だけ見ても、すごい。ガード不能な攻撃しかしてこない。
まずは授業中にこっそり手を握る。巧みなのは、吊り橋効果抜群なところ。だってギリギリ見つかるか見つかんないかのスレスレじゃないの。心臓破れかねん。そしてこの上目遣いの「せんせ」。男子高校生なら確実にイチコロ。ここの市川さんは「わざとやっている」方。
他にも「キスって気持ちいいんですか? 教えてください」と唐突に迫ってきたりと、先生なら無理としか言えない詰め寄り方をしてくる。ある意味ガン攻めなのは、子どもっぽいところかも。
極め付きは、市川さんが体操着に着替えている最中。こう迫ってくる。
市川さんの攻めは、全部「ダメ」って言われるの前提なものばかりです。彼女が求めているのは、男として欲望を返すことではなく、なぜダメなのかを誠意を持って応えることなんでしょう。やりすぎな攻めを積み重ねることで、先生が何を考えているか、引き出して自分のものにしたいんじゃないかな。それで、2人のきずなを作っていきたいんじゃないかな。
だからこそ、彼女の行動にはイヤミがないし、愛らしい。
熱くてはかない恋
えっちなシチュエーションが次々起きるラブコメディーなんですが、作品全体の空気のしっとり感が胸を突いてきます。
市川さん、自分からは先生の手を握ろうとするのに、偶然手が重なるとすごくびっくりします。
「急に触らないでください!!」「私から触る時は、心の準備をしてるからいいんです! 好きな人に触れるには覚悟がいるんです!!」
かなりガードが固い。このセリフが入ることで、市川さんの貞操観念がはっきりします。
市川さんは真面目な先生が好き。先生として接してくれる部分も、好き。そんな先生に、触れたい。スキンシップを取りたい。先生として返してほしい。
女性として見てほしい、とは言うけれども、もしそう見られたら彼女、逃げちゃうかもしれない。生徒じゃなければ、と市川さんは言うけれど、もし樋口先生が先生でなくなったら、本当に好きなままでいられるんだろうか。
先生を振り回しているようで、実は一番ゆれゆれなのが市川さん。彼女の不安定な恋心、かわいいけど同時に、不安になる。言動全部が儚くて仕方ない。だから、読んだら彼女のこと、好きになってしまう。
応援していいのかすごく悩ましい。シチュエーションとしてはニヤニヤものなんだけど、今後の状況を考えると苦しさの方が強くなる。内緒で付き合い始めたら、その時点でうまくいかない可能性が出てきそう。追われている現状のバランスが良すぎる。
しかも一話のラスト、意外な展開も待ってます。「JKに好きって言われて参っちゃうなーコメディー」とはいかなさそう。市川さんの、初々しくて生々しい恋心、もっと見たい。
(たまごまご)
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