漫画家の作画テクニックを伝授するコーナー「漫画家直伝イラストテクニック」。第二回は漫画『折れた竜骨(原作:米澤 穂信)』や『アルマディアノス英雄伝(原作:高見粱川)』を連載中の漫画家、佐藤夕子(@makaidaibouken4)先生に、“リアルな葉”の描き方を教えていただきます。
- 漫画家直伝イラストテクニック:第一回:誰でも描けるリアル背景、「山」の描き方
第二回:「リアルな葉」
第二回は漫画などの屋外シーンで見かけることの多い“葉”がテーマ。一言で“葉”と言っても針葉樹や落葉樹などさまざまなタイプがありますが、今回はその中から「笹の葉が密集しているところ」を描いてみます。
STEP1:カケアミ風の目安を入れる
まずは紙、鉛筆、ペン(ボールペンや漫画用ペンなど)を用意し、どれくらいの大きさで描くかを想像しながら、鉛筆を使ってざっくりと目安を描いていきます。
目安とは葉の形や影を入れる場所を決めるためのガイドライン(下書き)のようなもので、これを描くことにより描きたいものの大きさや遠近具合などを把握しやすくなります。
カケアミ(※)の要領で等間隔に線を引き、線を4本重ねた「4カケ」の状態になればOKです。このとき間隔は大きくても狭くても大丈夫です。間隔の大きさによって、その中に描く葉のシルエットがまばらになるため、後の描きこみ作業で自然なばらつきが出ます。
(※)カケアミ:濃淡を付けるためのテクニック。重ね合わせた線の数により、1カケ、2カケと呼び方が変わる。漫画やイラストで多用される技術。
STEP2:葉を描き込む
1で描いた目安のマスに収まるようにペンを使って葉を描いていきます(心配な場合は下書きをしても構いません)。目安の線を「葉の中軸」や「葉の向き」の参考にしていくのですが、この段階ではまだ“ざっくりと描く”程度にとどめ、最後まで葉の形を描ききらないのがポイントです。こうすることにより、葉の重なりなどを後で描き足しやすくなります。
STEP3:影を描き込む
2で描いた葉の輪郭をベースに影を描き込んでいきます。このとき重要なのが光源の設定です。どの方向から光が当たっているのかを考えると完成形がイメージしやすくなります。
影の表現には前回も使用した「カケアミ」を使用します。今回はグラデーション的に濃淡を付けるところが少ないので、主に1カケや2カケを使っていきましょう。また葉が重なっているところは奥の葉に影ができますが、上に重なっている葉の形を少しずらしたような形状の影を入れるとリアルな仕上がりが期待できます。
STEP4:目安を消す
影入れをしたインクが乾いたら、最後に鉛筆で入れていた目安を消しゴムで消して完成です。鬱蒼と生い茂る笹の葉の群生が仕上がりました。
「植物を描くときにはいろいろな目安を使って描いていますが、今回紹介した方法も描きやすいです」と佐藤先生。笹以外にも葉の形、葉の向き、群生パターンなどのバリエーションを増やせば、さまざまなシーンで活用できると話してくれました。
編集部でも描いてみた
プロの漫画家である佐藤先生のテクニックは素人にも活用できるのか――。今回も編集部員が実際に“葉”を描いてみました。
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