文部科学省は2月14日、高校の新しい学習指導要領案を公開。3月15日まで、同案に対するパブリックコメントを募集中です。
新しい学習指導要領の変更点は、小中学校の学習指導要領や大学入試改革と連動し多岐に渡りますが、中でも注目を集めているのが、保健体育の「プールの飛び込み」をめぐる記述。
学校のプールは比較的浅く作られており、飛び込み時にプール底に頭を打ち、首の骨を折るなどの重大事故が多発し問題視されていました。
記述はどう変るのか
現在の学習指導要領と、新しい指導要領案の本文を比較してみましょう。
一読しただけだと「段階的な指導」の意味がよく分かりません。しかし、文科省が公開している「学習指導要領解説」を合わせて読むと、これが飛び込みの指導を含むものであることが分かります。
学習指導要領解説(現行)
高等学校の段階的な指導による「スタート」とは、事故防止の観点からプールの構造等に配慮し、プールサイド等から段階的に指導し、生徒の技能の程度に応じて次第に高い位置からのスタートへ発展させるなどの配慮を行うスタートのことである。
入学年次は、各泳法に応じた水中でプールの壁を蹴るなどのスタートから、壁を蹴った後の水中での抵抗の少ない流線型の姿勢をとり、失速する前に力強い浮き上がりのためのキックを打ち、より速いスピードで泳ぎ始めることを、その次の年次以降は、生徒の技能の程度に応じたスタートの姿勢から、各局面の動きを洗練させるとともに、一連の動きで行うことができるようにすることをねらいとしている。
すなわち、1年次には水中からのスタートのみを教え、2年次以降には段階的に飛び込みを教えて良い、ということです。
では改定案ではどうなっているのでしょうか。
学習指導要領(改定案)
また、泳法との関連において水中からのスタート及びターンを取り上げること。なお、入学年次の次の年次以降は、安全を十分に確保した上で、学校や生徒の実態に応じて段階的な指導を行うことができること。
こうしてみると、学習指導要領の本文に「水中からのスタート」という記述が現れたことで、「原則として水中からのスタートを教えるもの」という意図が分かりやすくはなっていますが、結局のところ2年次以降は飛び込みを教えて良く、現状とあまり変わらないようにも見えます。
スポーツ庁のコメント
スポーツ庁・学校体育室の担当者によると、「全ての学年で水中のスタートから教えるというのが原則」。しかし「2年生以降については、安全を十分確保した上で、学校や生徒の実態に応じて、最終的には飛び込みも含めた指導をしても良い」とのことでした。
改定案はまだ本決定されたものではなく、前述の通り、国民からの意見をパブリックコメントとして受け付けている段階。
新しい学習指導要領は本年度末ごろに正式に告示される予定で、適用されるのは2022年度入学の1年次の生徒からになります。
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