「ことこと」煮込んだ文 〜繰り返しのダメ成分〜
同じ表現が繰り返し続くと、文が平板になりますし、読みづらくなります。例えば、次の文をみてください。
この手続きを簡略化することによって、投票の意欲がなくなることがなくなり、期日前投票の投票率が上がることになる。
これは、実際にわたしが読んだレポートを少し改編したものです(元の文は、読点が一切ありませんでした)。
さて、この文の問題点は「繰り返される『こと』」です。なぜかは分かりませんが、文章を書き慣れていないひとは「『こと』を繰り返す」傾向があります。このように、「こと」を繰り返すタイプのダメ文を、わたしは「ことこと煮込んだ文」と呼んでいます。わたしの授業を履修してくれている学生のみなさんには、「文をことこと煮込まないように」と注意しています。
なお、この文ですが、
当該の手続きの簡略化によって投票意欲の向上が見込まれる。そのため、期日前投票の投票率もまた、向上が予想される。
とすれば、すっきりします。
「こと」のほかにも、繰り返すことでダメ文になる成分があります。例えば、「的」がそうです。
世界的に共通する文化が、国境を越えた中性的なルールとなる。そのような普遍的な文化的現象が繰り返されることで、進歩的な局面をきりひらく。
何を言っているか分からないと思いますが、わたしにも分かりません。ただ、ここでは「〜的」が多くて、その「分からなさ」を助長しているのは確かです。
このタイプのダメ文は、文章を書くことが苦痛なタイプのひとよりむしろ、文章を書く意欲のあるひとが書きがちのように思います。おそらく、「的」の前にくる語にバリエーションが必要なためでしょう。ある程度の語彙力のあるひとでないと、このタイプのダメ文は書けません。
ダメ文のポイント
- (文章を書き慣れていないひと)「こと」を繰り返す。
- (ある程度の語彙力があるひと)「的」を繰り返す。
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