今回は"世界一有名な美女"ともいわれるあの人について。
そう、みなさんご存じモナ・リザさんです。たとえ美術に興味がなくとも、誰もが見たことがあることでしょう。世界一有名な絵画と言っても過言ではないかもしれません。
この<モナ・リザ>が飾られたルーヴル美術館の展示室には、世界中からこの絵を求めて多くの観光客が人だかりを作りました。また、1974年に日本にこの絵がやってきた時には、展示された国立西洋美術館の来館者数が150万人を記録するなど大盛況となりました。
<モナ・リザ>は人々をひきつけてやまない、まさに名画中の名画なのです。
ですがこのモナ・リザ、結局何がそんなにすごいのでしょうか。傑作だといわれても、どこがどう傑作なのか、いまいちピンと来ないような気さえします。
今回はそんな「モナ・リザのどこがすごいのか」「なぜみんなモナ・リザを褒め称えるのか」を、3つのポイントに分けてご紹介したいと思います。
モナ・リザとは?
最初にこの絵について基本的なことを見てみましょう。
<モナ・リザ>はルネサンス期のイタリアの画家レオナルド・ダ・ヴィンチによって、1503年頃から数年の歳月をかけて描かれた人物画です。縦77cm×横53cmと小さい木の板に油彩で描かれています。
タイトルの<モナ・リザ>はダ・ヴィンチ本人によって名付けられたものでなく、後世に便宜的に名付けられたもの。<モナ・リザ>の”モナ”とはイタリア語で「婦人」(原語では"Monna")という意味があります。フランスやイタリアでは、描かれているとされる人物の旦那の名字をとって<ラ・ジョコンダ>(ジョコンダ婦人)と呼ばれるのが一般的です。
ではなぜこの1人の人物を描いた作品がこんなにもすごいといわれるのでしょうか。
1.技術がすごい!
まず第一に類まれなる作品の完成度にそのすごさがあるといえます。
ダ・ヴィンチは<モナ・リザ>を描く際、スフマートという技法を用いました。スフマートとはイタリア語で「ぼかした」「煙がかった」などという意味のある言葉で、輪郭をぼかして物体を色の境界が分からないように柔らかく描く技術です。
ダ・ヴィンチはこのスフマート技法に非常に長け、筆をどう動かしたか跡すら残らないような緻密な重ね塗りによって<モナ・リザ>の顔に神秘的な表情を与えました。
顔に注目してみると、目のくぼみや口元が、ぼやけた黒い陰影によって表されていることが分かります。
<モナ・リザ>の持つ本質的な魅力はダ・ヴィンチの持つ卓越した技術によるものなのです。
2.謎が深い!
ダン・ブラウンによる小説『ダ・ヴィンチ・コード』がかつて話題になったように、<モナ・リザ>が人々をひきつけるのには、そこに潜む“謎”も関係しています。
最も大きな謎は、「描かれている女性は誰なのか」というものです。
<モナ・リザ>と呼ばれる理由となったリザ・ジェラルディーニ(ジョコンダ夫人)のほかにも、ダ・ヴィンチのパトロンであった「ジュリアーノ・デ・メディチの愛人説」、マントヴァ公妃の「イザベラ・デステ説」、はたまた「レオナルド自身説」など、<モナ・リザ>のモデルには数多くの説が存在しています。
最新の研究では、リザ・ジェラルディーニが最も有力だと考えられていますが、モデルの謎以外にも「背景はどこなのか」「下地には何が描かれているのか」といった疑問など、われわれを悩ませる疑問や謎は多く残っているのです。
3.評価されている!
「すごいといわれるものはすごく見える」というのはどの分野でもいえることです。もしかしたら同じことが、この<モナ・リザ>でもいえるかもしれません。
16世紀のルネサンスを代表する画家・建築家に、ジョルジョ・ヴァザーリという人物がいます。ヴァザーリは美術史家のはしりともいわれる人物で、当時の有名な芸術家の伝記をまとめた著書『芸術家列伝』の中で、レオナルド・ダ・ヴィンチをルネサンス最大の画家とし、<モナ・リザ>を最高傑作だと評価しているのです。
ヴァザーリの著作は美術史を語る上で今日でも欠かせないものであり、彼のダ・ヴィンチに対する評価が現在に影響を与えていることは間違いありません。
また、19世紀のイギリスの作家ウォルター・ペイターが著作『ルネサンス』の中で<モナ・リザ>をべた褒めし、その『ルネサンス』を「黄金の書」だとオスカー・ワイルドが絶賛したことから<モナ・リザ>がダ・ヴィンチの代表作として認知され、今のイメージにつながったともいわれています。
実のところ<モナ・リザ>がここまで有名になったのはここ100年くらいのことです。それ以前はダ・ヴィンチといえば<最後の晩餐>の方が有名でした。
絵に関する多くの逸話や魅力、それを伝えた著作家や批評家たちによって、<モナ・リザ>はここまで有名な絵画になったのだともいえるのです。
<モナ・リザ>がすごいと言われ、褒めたたえられる理由は、もちろん絵の完成度や技術もありますが、絵にまつわる謎やそれに魅了された人々、絵を評価し後世に伝えた先人の物語があるからなんですね。
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