日本には、わずか12歳ながら、過酷な勝負に挑む小学生たちがいます。
そう、それは中学受験組。彼らは毎日のように塾に通い、志望校を目指してしのぎを削っているのです。
特に進学校と呼ばれる学校の入試問題は、一筋縄ではいきません。中には大学生や大人でも苦戦してしまうような問題も。
今回は、全国トップレベルの偏差値を誇る西の名門校・灘中学校の2018年度入試から、ユニークな問題をチョイス。皆さんは小学生に勝てますか?
問題
初日の出を2回見る方法についての問題です。
10mののぼり棒に登ると、他の人より何秒早く日の出を見ることが出来るでしょう?
(平成30年度 灘中学校入試問題・理科-改題)
登り棒を登ると地上にいる人よりわずかに早く日の出を見ることができます。
その後すぐ登り棒を降りると、もう1度日の出を見ることができ、結果初日の出を2回見ることができます。
つまり、この問題を解くと、何秒以内に登り棒から降りれば初日の出を2回見ることができるのかが分かるのです。
条件
- 地球は完全な球体とし、半径6400km、円周40000kmとして計算してかまわない。
- A地点とB地点はともに赤道上とする。
- hは十分に短いので、ABの長さ=ACの長さとしてよい。
- 観測者の身長は無視できるものとする。
- 斜辺の長さc、他の二辺の長さa, bの直角三角形について、a×a+b×b=c×cが成り立つ(三平方の定理)。
- 小数点第一位を四捨五入して整数で答えること。
解説
そもそも「日の出を見る」とは、問題の図の「太陽光」に接するということを意味します。図ではA地点とC地点で同時に日の出を迎えています。
B地点はこの時点では夜側なので、まだ日の出を迎えていませんが、地球の自転により、間もなく日の出を迎えることでしょう。
この問題で訊かれているのは、C地点ではB地点より何秒早く日の出を見られるか。図の時点ではちょうどC地点で日の出を見ているので、この問題は、「B地点でも日の出を見られるのは、この図から何秒後のことか?」と言い換えられます。
つまり、B地点が図のA地点にたどり着くまで、何秒かかるのか、を計算すればよいのです。
地球の自転は、24時間で1周します。
今回は地球の1周は40000kmと定められているので、地面は24時間で40000km動いていると考えられます。
いま知りたいのは、B地点からA地点までの自転はどれくらいかかるのか、なので、ABの長ささえ分かれば、あとは計算するだけですね。
AB=ACとしてよいので、三角形OACについて、三平方の定理を使ってACの長さを求めましょう。10mは0.01kmなので、
ACの2乗=OCの2乗-OAの2乗
AC^2=(6400+0.01)^2-6400^2
AC^2=(6400^2+6400×0.01×2+0.01^2)-6400^2
AC^2≒6400×0.01×2
AC^2≒128
AC≒11.3
つまり、ABの長さは11.3kmとなります。もう答えは目前です。地面は24時間(=86400秒)で40000km動くことを考えると、11.3km動くのにかかる時間は、
11.3÷(40000÷86400)≒24.4秒
小数点第一位を四捨五入するので、正解は24秒となります。
いやー、小学生が解くとは思えない計算量でした。方針は分かっても、どこかでミスしてしまいそうです。
ちなみに
この問題は、地上10mの地点から地面まで24秒以内に降りると、地上10mで一度昇った太陽がいったん沈み、地上でもう一度昇ります。これはすなわち「東の方向に沈んでいく太陽」を見ることができる、ということも表しています。
これを逆にいえば、日の入りの直後に高いところに登ると、地上で沈んだ太陽がいったん昇り、高いところでもう一度沈みます。そう、すなわち「西から昇る太陽」を見ることができるのです。
入試問題とはいえ、ただ計算や暗記をさせるだけでなく、面白さも追求した良問でした。とはいえ、試験を解いている受験生たちはそれどころではないでしょうけど……。
もっと詳しい解説は以下の動画からどうぞ。
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