漫画家のふじた渚佐(@asakotofuji)さんが公開した創作漫画「螢」(ほたる)が、Twitterで「心に響いた」「尊くて泣いた」と話題になっています。
舞台は昭和初期。飛行機乗りを目指す勇(いさお)が、けなげ・従順・しとやか・旦那には逆らわない、そんな女性像が当たり前の時代に、「おれの嫁は違った」と話す女性が、昔からの幼なじみでいいなずけでもある久子(ひさこ)。子どもの頃には、泣き黒子があるというだけで勇のことを「泣虫野郎」と呼び、その性格は結婚してからも変わりません。
勇は海軍に入り、目指していた航空隊に所属。一方で久子は家事はできるが得意ではなく、勇いわく「きっと久子は、不器用だった」とのこと。夫婦の会話では、相変わらずハッキリと物を言い、旦那をニヤニヤといじる久子が見られ、「ほんとうに可愛げのかけらもない女だった」と思う勇。またそれを口に出して言うと、「そんな可愛げのない女に惚れたのはどこのどいつだ」と返されてしまいます。
そして時は流れ昭和20年初夏、太平洋戦争(大東亜戦争)末期。出撃命令が下ったことを伝える勇に、久子はおめでとうと言ってから「敵艦の核にブチ当たれよ」と、当たる前に撃ち落とされるな「螢になって帰って来い」「螢だぞ、蝿だったら叩き潰してしまうからな」と平気そうな様子で伝えますが、徐々に顔をうつむかせます。するとその姿を見ていた勇は黙ったまま、しゃべり続ける彼女に近づいて目を合わせ、そのまま抱くのでした。
久子に“螢”になることを約束した翌日、<出撃前に読め>と書かれた手紙を戦闘機の中で開く勇。そこには、
最後クラヒ、素直ニナッテ
ヤッテモイゝデセウ
オ慕ヒ申シテオリマス
久子
という、短くも彼女からこれまで聞いたことのないような言葉が、流れ落ちた涙のあととともにつづられていたのでした。
また同じく手紙を残していた勇。一人になった静かな家で久子が読むその手紙には、対照的に長い文章が書かれ、最後の最後には、軽々しくてあまり使いたくはないが、最後くらい素直にと、
愛シテイマス。
海軍少尉 斉藤 勇
と思いを伝える言葉が。「最後の最後まで、不器用だったな。おれたち」という勇のモノローグと、手紙を握りしめて涙を流す久子が描かれ物語は終わりへ。
暗くなりだした空の下、「ばーちゃーん」と何度も呼ぶのは幸雄という、泣き黒子のある男の子。光る虫を捕まえたことを報告しにきたようですが、その“おばあちゃん”は「逃がしてやりな。そいつは螢だ。蝿は叩き潰していいが、螢は潰すなよ」と男の子に言うのでした。もう途中から夫婦2人の言葉とセリフ一つ一つに涙が……。
同漫画は、ふじた渚佐さんが2015年11月開催の「コミティア」にて頒布したコピー本(同人誌)で描いたもの。今でも気に入っている話なのと、再版できる機会がしばらく作れないため、今回Twitter上での公開に踏み切ったとのことでした。ちなみにあとがきでは、印刷代等の関係で仕方なくページ数を短くしたといった経緯も書かれています。本文13ページとは思えない内容が詰まった展開に、すぐに再読したくなる……!
コメントでは「静かに涙がでてくる…」「号泣した」とたくさんの感動や称賛の声が寄せられ、その鉛筆でのイラストに趣を感じる声や、細かい部分まで作り込まれた内容に「素晴らしい」「すごく良い作品」といった声が集まっています。
ふじた渚佐さんは他にもさまざまな漫画やイラストをTwitterやpixivに投稿していて、現在はTwitterでも話題になった『ド直球彼氏×彼女』を月刊ComicREXにて連載中。またコミックス第1巻も発売中です。
画像提供:ふじた渚佐(@asakotofuji)さん
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