漫画海賊サイト対策として、政府がISP(インターネットサービスプロバイダー)に「ブロッキング」(接続遮断)を要請することを検討しているとの報道を受け、日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)は「著作権侵害への対策としてのブロッキングは許されない」とする見解を発表しました。
ブロッキングはISP利用者のアクセス先を監視して一部の通信を遮断する方法。電気通信事業法で禁止されてる「通信の秘密の侵害」にあたりますが、唯一の例外として、「緊急避難」として児童ポルノ流通防止のためのブロッキングが行われています。報道では、政府は漫画海賊サイトへのブロッキングも緊急避難と位置づけ要請する方針とされています。
JAIPAは著作権侵害への対応は重要としつつも、「より影響の少ない他の手段も考えられる中で、必ずしも唯一残された手段とはいえないブロッキングを対抗手段とすることまでが現行法上許容されるとは考えられません」と主張。政府が特定のサイトへの遮断を求めることは検閲にあたる恐れもあるとしています。
「先行実施国でも著作権侵害に対するブロッキングは裁判所の判断に基づいて行うなど、少なくとも民主的な国の中で、行政の要請にISP事業者が応じる形を取っているところはありません」(JAIPA)
著作権侵害対策としてのブロッキングは法的に許されないのみならず、「これまでの国民、ISP事業者、政府の間の信頼関係を政府の側から一方的に壊し、ISP事業者による今後の違法・有害情報対策への取り組みに対しても悪影響を及ぼしかねない」と同団体は述べ、「断じて許されないもの」との考えを示しています。
この問題については、インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)、インターネットユーザー協会(MIAU)など複数の団体が否定的な見解を示しています(関連記事)。
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