「常識的に考えて溶ける訳ないでしょ」 “焼き鳥とビールが水になる”痩せサプリ、販売会社が効能ないと認める(2/2 ページ)
編集部でサプリを購入し、焼き鳥が水になるのか実験してみました。
――効能がないということは、詐欺広告ということですか。
社長:今初めて聞いて、見て、いかがなものかなとは思います。
――広告は初めて見たとのことですが、「こういうので良いですか」と広告代理店からお伺いはないのでしょうか。
社長:全くないですね。
――でもサプリの名前で検索したりすると、このGIF動画がついていない広告はほとんどありませんでした(取材当時)。
社長:そうなんですか。
――このGIF動画を誰が作ったのかはご存じですか。商品を注文する際のリダイレクトページに、Mというタグが入っているので、編集部ではG社という広告代理店が関与しているものだと考えているのですが。
社長:それは分からないですね。この広告については分かりかねるので、それに対してとやかく聞かれても僕は分からないです。内容については僕も問題があると思うので、もしG社が出している広告なのだとしたら、「こういった広告は控えていただくように」とお話しする以外、対応はないと思います。
――例えばですけれども、私はこの広告で「ビールと焼き鳥が水になる」と思って商品を購入しました。でも実際は効果が得られていません。そういった場合、返品や返金対応は受け付けていただけるんでしょうか。
社長:基本的には食品なので、開封後のキャンセルは受け付けていないんですけど……。広告の存在自体を把握していなかったので、キャンセルの料金を僕が負担するのか、G社に請求するのかどうかも分かりません。まずは事実確認をしてからということで……。
――ちょっとお話が変わりますけれども、製造元H社の問い合わせダイヤルにお電話したら、「販売店に聞いてくれ」という自動ガイダンスが流れるだけでした。これは問題ないんでしょうか。
社長:H社は製造元という位置付なので、詳しくは販売店などに聞いてもらうっていうことにしています。
――成分について問い合わせたいという場合に、販売元に聞いても答えられるものなのでしょうか。
社長:何ですか、成分の事が聞きたいんですか。
――例として「焼き鳥やビールが透明になる成分は入っていますか」と聞きたい場合はありますよね。
社長:あのね、常識的に考えてそんなことないでしょ。飲んだら胃、溶けちゃいますよ。そんなの分かるじゃないですか。重箱の隅をつつくの止めてくださいよ。
――重箱の隅ということではなく、この広告はまずいのではないですかという話の取材です。
社長:まずいんじゃないですか。だから広告を止めるって言ってるじゃないですか。
――もうこの広告で何カ月もサプリを販売していますよね。そして使用してはいけないような過激な表現もたくさん使っていますよね。
社長:だから僕の方で関知していないじゃないですか、この広告。
――広告の出稿に関しては、広告主に一定の責任があるといわれています(関連記事)。お金を出して掲載している広告を見たことがないっていうのはちょっと不思議です。I社かH社の広告のご担当者は把握されていると思いますが。
社長:そうなんですか。でも僕しかいないですよ、この会社は。申し訳ないですけど、責任ないですよ、僕。
――責任ないんですか。どういう広告で売れたのか把握してないってことですよね。
社長:だって、この広告知らないもん。(どういう広告で売れたのかは)分からないですけど、それをつぶさにチェックするのは僕の仕事なんですか。それはアフィリエイトの管理をしているG社の責任なんじゃないですか。僕はG社を信用してやってるじゃないですか。なんか問題あるんですか。言えることは、もうG社にこういった類の広告を止めてっていうことだけですよね。
――その広告をもとに私が実際に商品を購入して、同じ実験をして効果がないという問い合わせを今社長が受けているわけですよね。
社長:責任ないとまでは言わないですが、改善するように僕が対応するだけなんじゃないですか。あなたが返金したいというのなら僕は対応しますよ。送ってくればいいじゃないですか。
――これまでに広告を見て購入してしまった人に対しては責任を取るのでしょうか。
社長:G社が取るしかないんじゃないですか。
――どういうことですか。
社長:返品の話はG社に言うことなんじゃないですかね。
――それは一般の消費者は分からないですよ。私たちは偶然広告の取材をしてきたことから、Mというタグを見つけて広告代理店がG社と分かりましたが、一般の方は製造元のH社や販売元のI社の出しているものだと思います。
社長:僕の立場からしたら、G社に責任があると思います。広告のページにG社の名前とか書いてないんですか。悪いですけど、僕も被害者ですよ。だってこんな広告知らないもん。「特定商取引法に基づく表記」のところに書いてある「K委員会」。こんなの全然知らない。こいつに聞けばいいんじゃないですか。
――大事なことなので確認しておくのですけれども、社長から「ビールと焼き鳥を使って消してくれ」っていう指示はしていないんですよね。
社長:そんなわけないじゃん。記事でネタにしたいだけでしょ。そんなの指示すると思います? ある程度常識持ってますよ僕も。僕が大事なのはこの広告をやってたG社をどう……どうしてくれるのかな、ということだけです。
販売元社長は、このように広告の存在や動画については関知していないと繰り返しつつも、広告代理店G社に対しては広告を取り下げるように伝えると回答しました。ところがこの取材のやりとりがあってから数日たった7月2日11時現在でも社長に伝えたURLの広告は取り下げられていません。
7月2日16時15分追記:該当のURLの広告が取り下げられたことを確認しました。
実際に効果のない効能をうたうことは、景品表示法の「優良誤認表示」に該当する可能性があり、不当表示が認められると行政処分を受けることがあります。
実際に「7日間飲むと1カ月体重が減少し続ける」などの不当表示を行ってサプリメントや健康グッズを販売していた、インターネット通販企業「ブレインハーツ」は、6月15日に消費者庁が課徴金2229万円の納付を含む行政処分を受けました(関連記事)。
これはアフィリエイトサイト上の表記も景品表示法の規制対象であることを明記した画期的な処分でしたが、このように課徴金の対象となる悪質な行為が確認されたとしても、課徴金は、「事業者が不当表示をした商品・サービスの『売上額』に3%を乗じた金額」と決められており、中には“景表法上等”といった態度の事業者も後を絶たないとの情報もあります。
I社についてはネット上でも「取扱商品に問題がある」という意見が多数あがっており、広告業界団体や行政の対応が待たれます。
画像は一部編集部で加工しています
(Kikka)
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