全国の小中学生を対象とした理科自由研究コンクール「自然科学観察コンクール」で2002年に文部科学大臣奨励賞を受賞した「38℃の日は暑いのに38℃の風呂に入ると熱くないのはなぜか」が話題を呼んでいます。2002年に発表された自由研究ですが、SNSで拡散されたことをきっかけに注目を集めたようです。「外部の温度と、皮膚温との差が大きいほど熱さ(暑さ)を感じる」にたどり着くまでの過程が見事。
あまりにも熱くて汗が出たある日、シャワーを浴びて「お湯の温度は38度なのになぜ熱いと感じないのか」と疑問に思ったところから研究が始まりました。そこで、「風呂の場合は頭が38度のお湯の中に入っていない」「風呂の場合は服を脱ぐが、気温の場合は着ている」「水の熱伝導率は空気と比べ25倍ほど大きい」「風呂は入ってる時間が3分から10くらいだが、気温は数時間に及ぶ」など、風呂と気温の違いをあげ、検証が始まります。
お風呂の場合は頭だけお湯につからない状態になるため、最初はシュノーケルを付けて頭も含めた体全体が38度のお湯につかる状態にしたり、頭を入れた箱にドライヤーで熱風を送り38度にしてみますが、いずれも体全体が暑い(熱い)とは感じられません。服を着たときと着ていないときの違いや、長時間お風呂に入った際の検証も行いますが、結論にたどり着くことはできませんでした。
研究を続ける中でインターネットで情報を集めていたところ、名古屋大学の環境医学研究所の岩瀬先生と話す機会を得ます。そこで聞いた「暑さを感じるのは深部温と皮膚温の違いからではないか」との話をもとに、「深部温と皮膚温の違いが暑さを感じる理由」と仮説を立て再度この視点から検証を行うことに。すると、38度のお風呂に入ると皮膚温はすぐ38度に近くなることが分かり、一方で38度の部屋に入ったときは一度皮膚温が高くなるものの、汗によって34度近くまで下がることが判明します。仮説が正しいと証明されたかに思えましたが、皮膚温と深部温の違いが暑さを感じる要因だとすると、皮膚温が下がるはずの冬に寒く感じるのは説明がつかないと考え、もう一度始めから考え直すことに。
そして立てた仮説は「外部の温度と、皮膚温との差が大きいほど熱さ(暑さ)を感じる」というもの。38度の気温では汗の気化熱で皮膚温が下がりはじめ、34度から35度で皮膚温が安定しますが、38度の風呂の場合は入ってすぐに皮膚温が38度になるため、実際の感覚にも仮説にも一致します。また、41度のお風呂や、22度の冷房が効いた部屋でも実験し、「皮膚温と外部の温度の差で暑さ・寒さを感じるから」という結論を出すのでした。
身近なテーマをもとに実験を重ね、結論を導き出す姿には「自然科学の原点」「仮説検証のサイクルがきちんとできている」と絶賛する声が多数あがっています。
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