自費出版を手掛けるパレードブックスは7月23日、絶版や品切れ本の復刊交渉を行う「復刊ドットコム」担当者へのインタビュー記事について、「不適切な表現があった」と謝罪し、該当の記事を削除しました。記事を巡っては、「女性やソーシャルゲームユーザーへの偏見がある」という批判が相次いでいました。
問題になったのは、パレードブックス運営のメディア「本づくり研究所」に7月19日に掲載された「復刊ドットコムに聞いてみよう」。本づくり研究所の「研究員」が、復刊ドットコム編集部長の澤田勝弘さんに、復刊までの経緯や交渉についてインタビューする記事です。
特に批判が寄せられたのは、インタビュー内で「最近のリクエストの傾向」について澤田さんが答えた部分。「SNSに抵抗のない若い層からのリクエストが多いものの、ネットの盛り上がりと実需要は違うため、クールな目で見る必要がある」という趣旨を話す中で、具体例として挙げたのが『サリエーリ モーツァルトに消された宮廷楽長』の復刊リクエストでした。
最近多くの投票が集まった『サリエーリ』。不思議に思った澤田さんが調べてみたところ、スマートフォンゲームにサリエーリをモデルにしたキャラクターが出たことが原因であろうことが分かりました(文中では触れられていませんが、「Fate/Grand Order」と見られます)。そこで澤田さんが「それで彼(サリエーリ)の著書が注目されたんだけど、ガッチガチの学術書なんですよ(笑)。とても投票した層が好きそうには思えない」と話し、インタビュワーも「『文豪とアルケミスト』でも好きな文豪=よく読む作家ではないですからね(笑)」と返しています。
また、実際に復刊した本の売れ行きについて「実際に購入してくださるのは45歳〜60歳の男性です。うちの本は数千円、場合によっては数万円って値段になることもあるし、そんなの『いいな、買っちゃおう!』ってなるのはやっぱり男ですよ(笑)」とコメントしていました。
これらの部分について、SNSで「『女性やソシャゲユーザーが学術書を読むわけがない』という偏見がある」「女性の購買力が低く見られている」「年齢や性別で復刊交渉を選別しているのにがっかりした」「ゲーム人気で本が売れているケースは数多くあるのに……」などの批判が相次ぎました。一方で「復刊までに時間がかかる場合、盛り上がりが沈静することもあるので、経営判断としては理解できる」という声も上がりました。
パレードブックスは、該当の発言箇所について「決して女性を差別・軽視する意図はございません。結果として女性は本を購入しないと決めつけたような表現になり、女性ユーザーの感情を著しく傷つけてしまったことを、心よりお詫びいたします」と謝罪。名前の挙がったゲーム作品についても「特定のユーザーが意外な本に注目する例を示したものであり、総じて『ソーシャルゲームユーザーが本を読まない』と揶揄(やゆ)したものではありません」「具体的な作品名を安易に使用したこと、誤解を招く表現があったことは大変軽率な行為でした」と振り返っています。
同社は「みなさまのご意見はごもっともであり、みなさまの本に対する愛情を否定されたと受け止められても仕方がありません」とし、再発を防止するといいます。
復刊ドットコムは、話題に挙がった本『サリエ―リ』の復刊をリクエストしたユーザーに対し、謝罪のメールを送信しています。「女性会員様を差別している、復刊するタイトルを偏重している、出版物を軽んじている、などのご批判を多数頂戴いたしました」「改めてインタビュー記事を読む限り、上記ご批判はもっとも」であると認めています。
なお、『サリエーリ』の復刊交渉はインタビュー記事掲載の時点で進んでおり、初版から新たな情報や図版を加えた増補・改訂版として、年内の刊行を予定しているとのこと。サリエリの民の思いが届いたのは本当によかったです!
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