「チョロQみたい」「ハコフグかなこりゃ」 東南アジアの港々で出会える「変な船、ちっこい船」コレクション(3/4 ページ)
現地っぽいこれらを見てほっこりするのも船旅の楽しみ!【写真81枚】
いざとなったら救命艇にもなる「テンダー」で、われプーケットに上陸す
さて、今回の船旅で上船したゲンティン ドリームは、シンガポールを出てからタイのプーケット島に寄港します。ただ、プーケット島には全長335メートルの大型客船が接舷できる規模の港はありません。このような島へ上陸するのに使うのが戦争映画でもおなじみの上陸用舟艇……ではなく「テンダー」と呼ぶ艦載艇です。日本では「通船」「足船」と呼ばれることもあります。
現代客船のテンダーは万が一時の救命艇としての機能も持ちます。ゲンティン ドリームにはドイツのHatecke社が建造した救命艇兼テンダーを6艇、救命艇を12艇搭載しています(他に高速インフレータブルを2隻)。救命艇兼テンダーの定員はテンダー使用時で220人、救命艇使用時で258人になります。
テンダーは救命艇としても使えるだけあって、多少時化た海況でもぐんぐんと航行します。でも丸っこい船型だからか、ちょっと、いや、けっこう揺れます。テンダーに乗るのは本船から港に着くまでの10分ほどですが、実は「船旅でここが一番きつい航海だった」という声も聞こえてきたりします。
ですが! このときが地元の珍しい船に接近できるまたとない機会でもあります。船好きとしてはここを見逃してはなりません。プーケット島の港もシンガポールと同様に、チョロQのようなタグボートや巡視艇、タイ海軍のフリゲートを間近で視認できました。
というわけで、かわいくて珍しい東南アジアの小型船舶をずらりと紹介してきました。
最後に、もし皆さんがプーケット島を訪れることがあるのならば、「船乗りの酒といえばラム」の工房をお勧めしたいです。ラム酒はサトウキビから作るお酒。大きなラムメーカーの製品の多くは、一年中安定して入手できるモラセス(サトウキビのしぼり汁から砂糖を生成するときにできる残り汁を)を原料にしますが、プーケットの工房ではサトウキビのしぼり汁そのものを原料とした大変珍しいラム酒が手に入ります。このアグリコール製法で作られるラム酒はラムの世界総生産量の3%にすぎないそうです。
長浜和也
IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。
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