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輸送は人力、飛ばすまでが一苦労! 琵琶湖のほとりで「鳥人間コンテスト」の舞台裏を見てきた(5/5 ページ)

台風接近により開催が危ぶまれた「鳥人間コンテスト2018」現地レポート。

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 パイロットが寝そべった形でペダルを漕ぐ機体が多い中、通常の自転車のように立って漕ぐタイプの機体を用意したのが、チーム「アルタイル」。鳥人間コンテスト経験者が集まった社会人チームである。風貌の下につけられたインテークから外気を取り込み、パイロットの頭の熱を冷やすというコクピットが特徴的だ。

 コクピットの上下にはGPSセンサーや高度計を搭載し、測定結果をパイロットの前方のタブレットに投影する。10m以上の高度で飛行すると失格になる鳥人間コンテストにおいて、特に高度計は重要。ていうかタブレットを積んでるってことは、これは完全にグラスコクピット(※)じゃん!

※情報がデジタルディスプレイ上のみに集約されている、アナログ計器を用いないコクピットのこと

 アルタイルのパイロットは自転車の競技選手なので、普段自転車に乗っているフォームをとった方がいいのでは……というのがこの機体のコンセプト。ただしこの形状だと空気抵抗的には不利なので、空力的に優れた発泡スチロール製カウルを搭載している。カウルの外形はエンドミルで整形し、内側は根性の手作業でくりぬいたという力作だ。



全体が発泡スチロールで作られたアルタイルの機体のコクピット周辺。前方の窓の下にあるスリットが、コクピット冷却用のエアインテークだ

操縦桿の前には各種計器の数値を表示するタブレットが配置されている


コクピット内部のフレーム。下側に取り付けられている電子部品が高度計だ。ペダルはパイロットの靴に直接接続される、ビンディングペダルになっている

 芝浦工大 Team Birdman Trialの機体は珍しいタンデム機。前後に2人のパイロットを乗せ、2人分のパワーで進む。その分主翼の幅は40m、機体重量は70kgと、通常鳥人間コンテストにエントリーする人力プロペラ機のおよそ倍のサイズである。パイロットが2人乗っていると、地図を見たり機速を見たりという仕事を分担できるのも大きなアドバンテージだ。

 芝浦工大のチームは埼玉のホンダエアポートで5回テストフライトを行い、タンデム機の強みを確認している。深夜に機体を組み立て、日の出と同時にテストするという強行軍。5月から2週間に1度ほどテストを行い、50mほどの飛行に成功した。

 ちなみにタンデムの大型機ということで機体の価格はおよそ400〜500万円、全経費を計算すると1000万円ほどかかったという。そのため毎年宿泊は琵琶湖の湖畔に野宿。今回は懇意にしている近くの工場に寝泊まりできたので「今年は屋根がありますね……」とのこと。この予算は部員から集めた部費と、学校や協力してくれる企業からの補助金で賄われているという。



前後に2人パイロットが乗る芝浦工大の機体。コクピットの形状自体はオーソドックスな形だが、とにかく機体がでかい

コクピットにはスマートフォンを搭載し、GPSのデータなどを確認できる

天井付近にはハイドレーションのパックを装備。ここから水を飲む

悪天候に阻まれた今大会、来年こそはちゃんと飛んで……!

 しかし、今までに書いてきた各機体は、残念ながら台風による天候悪化が原因で飛行できなかった。実際15時前ごろの現地は明らかに風が強くなっており、湖面の波も高くなっていたのである。



大会終了間際の琵琶湖。朝とは打って変わって、見ての通りの大荒れに

 エントリーしたチームのうち、5つ目の静岡大学ヒコーキ部はプラットフォームの上に機体を運ぶところまではいっていた。しかしその状態で飛行が取りやめになり、急遽機体をもう一度担いでプラットフォームを降りることになってしまった。



飛行を取りやめて降りてきた、静岡大学の機体。主翼のビニールがビリビリに破れているが、これは風で機体フレームが壊れないようにプラットフォーム上でわざと破いた結果。フレームさえ無事なら、来年ビニールを張り直してまた使えるのである

 どう考えても、あの風の強さでは大会の中止は妥当な判断である。しかし、かなり酷な決断でもあった。

 社会人チームはまた来年来ればいいが、鳥人間コンテストにエントリーしているチームの大半は大学生なのだ。来年は卒業していたり、卒論や就活で鳥人間どころではないメンバーも多数いるのである。

 なんせこっちも現場で必死に機体を組み立てている彼らを見ているので、「さぞかし悔しかろう……!」と勝手に感情移入してしまった。

 大会2日目が中止された今年の鳥人間コンテストだが、それだけにテレビ放送版では、飛べたチームたちの熱意が例年にも増して強く伝わってくることだろう。取りあえず来年は変な経路で進む台風が琵琶湖に寄ってこないことを祈りつつ、現場でのことを思い出しながらオンエアを見たいと思う。

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