「プラモにしたいんで図面ください」ホンダ「ありません」 異色の『美少女×耕運機』プラモデル誕生の秘密(前編)(1/4 ページ)
やりたい放題の結果生まれた、「オーバースペックな耕運機」の物語。
2018年5月にマックスファクトリーから発売された、「minimum factory みのり with ホンダ耕耘機F90」。これまでアニメなどに登場するキャラクターをプラモデルという形で商品化してきたminimum factoryシリーズの新機軸となる製品だ。
というのも、このキットのコンセプトは「メカ×女子」。山下しゅんや氏によるオリジナルキャラクターの“みのり”ちゃんと、1966年に販売されたホンダ製耕運機である“F90”とが組み合わされたキットなのである。これまでキャラクターのみを扱ってきたminimum factoryシリーズにとって、そしてマックスファクトリーにとっても、実在のメカを縮小して模型にするというのは初の試みである。
しかし、「なんでいきなり耕運機、それも半世紀以上前の耕運機をいきなりプラモデルに……。大体F90って何……?」という疑問が次々に湧いてくるのもまた事実。
というわけで、マックスファクトリーにてキット企画を担当した高久裕輝さん同行のもと、栃木県のレースサーキット「ツインリンクもてぎ」に併設されているホンダコレクションホールへ直行。コレクションホールに保存されているF90の実車や膨大な展示物を前にしつつ、本田技研工業パワープロダクツ事業本部所属の中島茂弘さんにお話を伺った。
そこで明かされたのは、ホンダの「エンジンで暮らしを豊かにしたい」という理念と、それが具現化されたオーバースペックなある耕運機の姿だったのである。
“願ったりかなったり”だった、耕運機のプラモデル化
――まず大前提からお聞きしたいんですけど、なんで耕運機をプラモデルにしようと思ったんですか?
マックスファクトリー・高久:もともと弊社で「minimum factory」という1/20スケールフィギュアのプラモデルシリーズを出してたんですけど、これって需要がキャラクター人気に左右されちゃうんです。お客さんがキャラを知ってるかどうかで売り上げが決まってしまうんですね。
フィギュアだけだと遊び方が伝わりにくいし、人気のあるなしだけでプラモの売れ行きが左右されるのもアレだし、可能であれば何かメカをつけたほうがより模型的な応用力が上がるだろうと。
――1/20スケールで、しかも女の子と絡ませやすいメカが必要だということになるわけですね。
高久:1/20スケールのメカというとバイクや車が思い付くんですが、1/20だと車は大きすぎるしバイクは小さすぎるんです。もっというとバイクの模型とかはもう存在するので、今度はそっちと比べられてしまう。
そういう条件のもとにアイデアを出し続けた結果、「耕運機、どうすか?」となったわけです。耕運機って、耕運機のことは何にも知らなくても、シチュエーションがパッと浮かぶじゃないですか。そういう機械ってあんまりないんですよ。特定のどこか停まっているシチュエーションがすぐ想像できる車やバイクってあんまりない。でも耕運機はフィギュアの服装も決まるし、シチュエーションも決まるし、非常にコンセプトがクリアだと。
――確かに、畑以外にはあんまりいないですね、耕運機……。
高久:で、一番かっこいいのはなんだろうといろいろリサーチをしているときに、2015年のモーターショーでF90が展示されてて、その写真を見て作ろうと思ったんですよ。そのときは今の耕運機の「こまめ」とかと並べて展示してあって。で、ホンダさんに声をかけたら初っぱなで中島さんに当たったんで、もういきなりすごい人に出てきていただいたという感じです。
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