前回は「ヨットの選び方、買い方」を紹介しました。今回は船長の維持費、ヨットを係留するための「港、マリーナ」を解説します。
日本で「マリーナ」と聞くと、「君といつまでも」が脳内に流れ、「葉山マリーナ」や「逗子マリーナ」といった名門・老舗マリーナを想像してしまうかもしれません。これらの名門マリーナは確かにお高いです。
参考までに、日本ヨット発祥の地をうたう葉山マリーナの年間艇置費は最も安い33フィート以下のヨットで192万1374円(税込、2018年9月時点)です。月額換算で約16万円ですね。ちょっと一般会社員では難しそうな額です。
しかし最近はかなり事情が変わってきています。第三セクター方式で運営される大規模マリーナや、漁港が併設したマリーナが登場してきており、かなり安価に利用できるようになりました。
例えば、関東地方に第三セクター方式の大規模マリーナとして登場した「横浜ベイサイドマリーナ」(横浜市金沢区)があります。大規模アウトレットモールの草分けとしても知られるこのマリーナは、横浜市とマリン関連企業、IHI(石川島播磨重工業)、横浜港木材倉庫といった港湾所有関係企業などが出資して1996年に設立されました。
横浜ベイサイドマリーナの収容隻数は1378隻。東洋では最大規模とされます。第三セクター方式の公共マリーナという立ち位置と、1378隻収容というスケールメリットのおかげで、年間係留費は8メートル専用桟橋で42万円とかなりの低価格を実現しました。月額換算で3万5000円。月極駐車場情報サイト「駐マップ」によると、東京都の月極駐車場の平均賃料は3万1067円だそうです(2018年9月時点)。それにちょっとプラスαという感覚でしょうか。
このほか、神奈川県の出先機関・東部漁港事務所と三浦市にあるみうら漁業協同組合が管理する「みうら宮川フィッシャリーナ」は、年間利用料金が艇長6.5〜8.5メートルで32万4000円です。
月額換算で2万7000円。これくらいならばいかがでしょう。「港に泊めるお金は月々2万円“くらい”だよ」といえば、家族の同意が得られる可能性がぐっと高まるのは筆者の実体験で確認しています。
このような一般市民も憩える施設であり、マリーナとしても整備された「フィッシャリーナ」のほかに、自治体が漁港を指定して個人艇の係留を認める場合もあります。
例えば茨城県には、平潟、大津、会瀬、久慈の港で「繋留許可制度」を導入しています。全長7〜8メートルの船ならば年間6万9720円、月額換算で5810円(!)で係留できます。収容できる船の隻数が限られており、2018年9月現在は募集していませんが、今後、那珂湊、磯浜、波崎の港でも導入予定としています。
では、何が違うのでしょう。係留にかけるコストに応じて利便性が変わってきます。葉山マリーナや逗子マリーナには利用者専用の豪華ラウンジやシャワールームがあるだけでなく、有名人さんとお知り合いになれたり、名門ヨットクラブの会員というステータスを得ることができます。横浜ベイサイドマリーナにも専用ラウンジやシャワールームがあり、また、広大な整備エリアを備えます。併設するアウトレットモールでゲストをもてなすことも可能です。
一方でみうら宮川フィッシャリーナは、都内、横浜川崎といった人口の多い居住区からはやや遠く、施設のグレード、利用できるサービス、スタッフの数などにどうしても差が出ます。漁港係留も同様で、係留した船は自分で管理することになります。そして、遠いということは、港まで行くのにも時間とお金が余計に掛かってしまうかもしれません。ただし、いい意味ではこう捉えましょう。「自分でやれば、ちょっとガマンすれば、費用は抑えられる」ということです。
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