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あの子と二人きりでホテルへ そして別の子からの告白…「ハイスコアガール」12話(1/2 ページ)

2人とも、しんどい恋をしています。

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ハイスコアガール (C)Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX

 ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作アニメは、当時を経験していた人も、そうではないゲーム好きも、そしてかつて子どもだった全ての大人が、共感できる悩みをたくさん練り込んだ作品です。

 ついに少女2人の恋の戦いが、本格的に始まります。


ハイスコアガール


今回のあらすじ

 家の厳しさに耐えられず、生まれて初めて家出してしまった大野晶。誰も見つけられなくなった彼女を発見したのは、ハルオだった。帰りたくないとダダをこねる大野。終電を逃した2人は、ハルオの母の機転で、ホテルのツインルームに一泊することになる。

 後日、ハルオの家にプレイステーションを持って日高小春が遊びに来た。彼女はたまたまハルオの机の上にあった、大野とハルオが撮ったプリクラを発見。帰り道で、小春は意を決してハルオに自分の思いを告白をする。


初めてのお泊り

 原作連載時にも話題になった、大野とハルオのホテル回。高校生男女でそれはまずい気がしますが、宿を取ったのがハルオのお母さんだから、文句の言いようがない。

 ハルオは母親に、大野を探しに行ったこと、川崎にいること、なぜ帰れないのか、など全部説明済み。こういう基本的な部分は真面目で、親との仲も超良好なハルオだからこそ、今回のツインルーム展開が成立したようです。そもそもハルオが極端に奥手というか、恋愛への興味がない男の子なので、少々お母さんは心配しているくらい。ちなみにハルオのお母さんは、第三のヒロイン扱いされるレベルに、読者にもファンがいます。


ハイスコアガール 高校生には刺激が強すぎる展開……のはず……(4巻P112)

 大野も何も感じていなかったのか? 彼女は無口なのは正確には分かりませんが、少なくともハルオよりはるかに意識はしています。「連れ回したと勘違いされて黒服が来たりしねーだろうな」「深夜の街はいろいろと危なそーだからな」と別の心配をしているハルオに対して、彼女はうつむいて赤面し、震えるばかり。


ハイスコアガール 赤面大野の心中やいかに(4巻P114)

 大野の赤面はたくさんの要素を含んでいる。家に帰りたくないという怒り。ハルオと2人きりで夜を明かす緊張。自分が知らない状況が続いている困惑。

 前回(アニメ11話)、大野が川崎に家出して、ゲームセンターで孤独な時間を過ごしていた時、奇跡のように彼女の前に現れたのがハルオでした。家庭に束縛され続けていた彼女にとって、ハルオは王子様状態です(ハルオ本人はそんなこと微塵にも思ってないけれども)。


ハイスコアガール 間が持たない(4巻P118)

 お風呂に入って落ち着いてからは、彼女の思いはハルオの存在一点に絞られていきます。そしておそらく、自分の気持ちに本当の意味を再確認せざるを得なくなってしまった。


ハイスコアガール 2人の部屋のカーテンだけ、開いています(4巻P123)

 ハルオの寝ているベッドの脇に座り込んで、ただじっとその顔を見つめる大野。これを「恋だよ」というのは大人なら簡単かもしれないけれども、多分もうちょっと複雑。

 そもそも、男女同じ部屋で寝るなんて、悶々が起きやすいシチュエーション。なのにハルオは一切それを見せなかった。となると彼は「女子」ではなく「大野晶」という人間に対して目を向け、迷っている状態を見つけてくれて、助けてくれたのが分かってしまう。下心皆無です。本当に心配してくれているんだ。

 「いつになったらお前ん家の堅っ苦しいしつけってヤツが終わるんだ……?」「俺が何かできればなぁ……」

 自分のことを一切考えず、ゲームしながら率直にそう言ってくれる。ニューファミコンで遊んで寝落ちなんて。一緒にいてこんなに自分を開放できて楽しくなれる相手、1人しかいない。わがままで頭突きしても受け止めてくれるしね。


ハイスコアガール ほんといい子だよハルオは! (4巻P127)

 川崎の工場群の景色が美しい。早朝のバイトに真面目に出掛けるハルオ、それを見送って手を振る大野。今までにありえなかった行動。内側にいる大野、外側にいるハルオのラプンツェル的構図は、ほかにもいろいろな場面で出てきます。


日高小春、踏み出す

 一方小春は、ハルオの家で大野と映っているプリクラを見つけてから、行動を起こします。

 「お……大野さんとは……付き合ってるの?」「私は矢口君の事が好き 大好き」


ハイスコアガール 「ハイスコアガール」が恋愛に振り切れる転機のような瞬間(4巻P152)

 大野とハルオが独特の距離感で、逃げたい・助けてあげたい関係を保っているのに対し、小春は明確に「恋愛」という意識を言葉にします。友達のままでいられない3人の微妙なバランスがここから一気に崩れ、自分の思いに向き合わざるを得なくなります。

 にしても、再戦(以前ハルオは小春に格ゲーでボロクソに負けています)で勝ったら付き合って、という小春の発案、思いっきり悪手。勝ち負けで好意の感情が動くわけがない。

 自分の分が悪いこと、後がないことを悟っての小春の発言です。「強硬手段」と言っているあたり、あがいているのは百も承知。じゃあなんで対戦するのかといえば、前回語っていたようにゲームでしか振り向いてもらえないから。ゲームで乗り越えないと、自分のことを見ることすらしてくれないから。

 「ゲームに没頭しすぎてて 私なんかまるで眼中にない感じ……それでも己の世界にまっすぐな矢口君に……私は惹かれちゃってんだなぁ……」

 最初から敗色濃厚すぎる、厄介な恋をしちゃったもんだ。でも決してマイナスな経験ではないのは、小春自身も気付いています。


ハイスコアガール 小春はすっかり、ポジティブな子になりました(4巻P134)

 中学校時代は趣味がなく、やりたい事が見つからず、ただ勉強をするだけ。アイデンティティが見つからなかった小春。ハルオに出会ってから真剣に練習するうちに、本当にゲームが好きになった。これが今の彼女の自信につながり、消極的だった彼女を超積極的精神の持ち主に変化させました。ゲーセンで「ヴァンパイアハンター」14連勝はすごい。

 なら、突き進むしかないよね!

 ここから先、格闘ゲームは3人にとって「現実から逃げることができる場所」から、「現実と戦う場所」に変わっていきます。

 アニメが終わって続きが気になって眠れない人は、今すぐ漫画の5巻から読もう!(連載は完結したばかりです。コミックス最終巻は2019年3月25日発売予定です)


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