イタリアの高級宝飾品ブランドの“BVLGARI”は、もちろん「ブルガリ」と読みます。腕時計や香水などで有名ですよね。
ところで、「ブルガリ」と普通に書くと“BULGARI”となりそうなところですが、実際には“BVLGARI”と表記されています。“U”を“V”で表現しているのですが、これはなぜなのでしょうか。
古代ローマ字由来
ブランド名「ブルガリ」自体は、創業者であるソティリオ・ブルガリ(Sotirio Bulgari)の名前に由来しています。彼は、ギリシャのエピルスという古代ローマ時代から銀細工が盛んな街で生まれ、彼の実家も銀細工師でした。
古代ローマで用いられていたアルファベットには、“U”という文字はなく、母音はA,E,I,O,Vの5つで表されていました。さらにIとVはそれぞれ子音としての役割もあり、Iは今で言うYを、Vは今で言うWの音を表していました。
1884年の創業当初は商号を、彼の名前から“S.BULGARI”としていましたが、1934年に、自分のルーツでもある古代ローマからの古典様式や伝統に大切にするという思いから、古代ローマ時代のアルファベット表記“BVLGARI”にあらためました。
“U”ではなく“V”を用いる背景には、長い歴史や伝統が隠されていたんですね。
26文字になったのはほんの600年前
現在使われているローマ字アルファベットは、ローマ人がギリシャ語のアルファベットを、自分たちの言葉であるラテン語を表記するために使用したことから始まります。
紀元前1世紀ごろには「ABCDEFGHIKLMNOPQRSTVX」の21文字からなりました。4〜5世紀ごろになると、外来語を表記するために、YとZがギリシャ語から導入されます。10世紀ごろには、日本語でいう「ウ」と「ワ行」の音に使われていた“V”が、「ウ」の音を“U”、「ワ行」の音を“V”とわけられ、ここでようやく“U”が登場します。
しかし、“V”を「ヴァ行」の音とする地域が増え、ヨーロッパの中で混乱が起きました。そうして11世紀ごろに“V”を「ヴァ行」とするため、「ワ行」を表す“W”が考案されます。
“J”の誕生はさらに後の15世紀ごろといわれています。この頃にようやく現在の26文字がそろいます。
今では当たり前のような26文字ですが、これも長い歴史の中のほんの断片にすぎず、遠い未来にはさらなる変化を遂げているかもしれませんね。
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