サークル「ふらいんぐパンジャンドラム」による戦略シミュレーションゲーム「覇県を握れ 〜47都道府県大戦〜」が設定やゲーム内容の面で大変とんがっていると話題です。独立した47都道府県が天下統一を目指して戦うという小学生のような発想から繰り出される本格的なゲーム内容が魅力です。これはまさに、現代版「信長の野望」!
47都道府県は現実の人口や財政、食料状況を反映しており、「圧倒的な物量を持つが電力不足と大量の国債、食料維持で開幕瀕死になる東京」「発電量が潤沢な千葉」「とにかく食料だけは豊富な北海道」といった個性付けがなされています。そして何より、「財政赤字を抱えるほぼ全国」という悲しみに満ちた日本列島がプレイヤーに開幕から涙を誘います。地球は青かったが日本は赤かった……。
取りあえず今回は、筆者の生まれ故郷でありいろいろ安定していそうな神奈川県を選択して始めました。覇県の暁には、日本全国の王将を崎陽軒に立て替えてやろうと思います。北海道民から沖縄県民まで皆肉シューマイを食らうがいい。
ゲームの基本的な流れは、「地域振興」で任意の国力(ステータス)を1つアップ→内政や外交、侵攻の実施→全国の1カ月間の出来事の報告→地域振興、の繰り返し。最終的に覇県(クリア)条件を満たすことが目的となります。
同作の特徴は、勝利条件が多数用意されていること。具体的には、以下の通りです。
- 首都勝利:首都の人口を1600万人以上にする
- 財政再建勝利:債務がなくなりプラス1500に転じる
- 領土勝利:15エリア以上保有
- イデオロギー勝利:残存する全ての県がプレイヤーと同じイデオロギー(後述)になる
- 総合力勝利:4年以上経過時に総合力最高の県になっている
- 統一勝利:他県を全て滅ぼす
こういったゲームでは武力による天下統一こそがクリアとなりがちですが、県によっては他の勝利を目指す方がはるかに効率的だったりするようです。むしろ統一勝利については、「面倒くさいだけで楽しくないのでおすすめしない」とまで書かれている始末。その前段階的な「領土勝利」もありますしね。
しかし、初プレイではどのクリア条件に進むべきかの指標もまだない状況なので、将来のことは考えず目先の問題を解決していく方向で進めていきます。神奈川県は首都圏らしく食料自給率が大幅なマイナスとなっていますが、財政状況や電力、軍事生産力などなど全体的に良好な様子。
これはなかなか初心者向けな県かな……と思ったのですが、1つ大きな問題が。隣接する東京の存在です。圧倒的な物量を持つ東京が攻めてきたら、ひとたまりもないはず。何か策が必要です。
ここで開始と同時にいきなり攻められたらどうしようかと思ったのですが、両県の関係が「中立」や「友好」の場合はすぐには開戦できないようになっていました。滋賀県で始めて京都に開幕「琵琶湖の水止めたろか!」と殴りかかる全滋賀県民の夢をかなえるようなプレイはできないようです。ただし、プレイ開始時の両県の相性は毎回ランダムで変わるため、開幕開戦できるケースもあるもよう。
東京に友好的な態度を取って先延ばしにすることもできますが、その間に千葉と埼玉を落とされようものならもはや手がつけられなくなるのは必定。ここは外交を使い、「東京都に隣接する千葉、埼玉、山梨と同盟結びつつ3県と東京を敵対させる」という大変性格の悪い工作“首都圏の怒りを思い知れ東京作戦”を仕向けることにしました。同時に東京に妨害工作を仕掛け、国力を奪います。
序盤は内政と外交がメインとなるため、ひたすら工作を進めていきます。進めていると毎ターンのように各県から食料や燃料の援助を求められることがあり、応じれば外交で有利になるようです。工業力を生かして燃料を各県に援助しつつ、食糧援助は全て断っていきます。こっちが援助してほしい。
そして工作を続けること7カ月(7ターン)目、全く準備が整わないうちに東京が神奈川に宣戦布告してきました! ぐえー! 同時にこのターン、愛媛県が広島に、鹿児島が熊本に攻略され消滅。いつの間にか日本国内は戦場となっていたようです。
舞台設定がシュールなので戦闘では「奈良の大仏を兵器に改造して仏ビーム発射」とか「奈良県の兵が鹿に乗って突撃」とか「京都の舞妓軍団が最強」とかを期待したのですが、そういうのはありませんでした。戦闘に関しては、真面目に軍隊と軍隊のぶつかり合いとなります。
東京相手に1人で立ち向かうのは分が悪いため、しばらくは防衛に専念することに。とにかく工作を進め、東京包囲網の完成を急ぎます。
そうこうしているうちに、山形、岐阜、鳥取、山口、香川、熊本、宮崎と次々に県が消滅。首都圏が東京とのにらみ合いで膠着状態に陥っている内に、どんどん地方が平定されていきます。そして次々にいろんな県が食糧援助を求めに来るのを、ことごとく断っていく神奈川県知事。頼むから皆北海道行ってくれ。神奈川にそんな豊富な食料はない。
13ターン目。2年目に入り、ここで「イデオロギー」を決定できるようになりました。これは県の方針を決定するもので、戦争に強くなる「覇権」、国力を上げられる「繁栄」、他県と協力や合併を進めやすくなる「平和」のうちから1つ選べます。勝利条件にも関わってくる重要なもののようですが、まだよく分からない今回はどの方向にも進めそうな「繁栄」を選びました。
14ターン目、ついに包囲網が完成。東京が隣接全県と敵対状態になり、山梨と開戦しました。これに呼応して神奈川も防戦を解き陸軍で侵攻を開始。東京の戦力はなぜか非常に少なく、1ターンで首都の体力を半分近く削れました。これは完全に勝った! ……と思ったその次のターン。
「千葉県が東京都の東京を攻略した!」 Noooooo!! 漁夫の利をかっさらわれたぁぁぁ!! コーエーの「三国志」とかでよくあるやつー!
さらに同ターン、千葉と茨城が合併。東京、千葉、茨城が三体合体し一夜にして圧倒的最強戦力へと成長してしまいました。……というところで初プレイは若干心が折れ、現在この記事を書いています。
その後ちゃんとマニュアルを読んでみたのですが、「東京は電力事情が最悪なので千葉や新潟など発電力が高い県と友好関係を結ばないとあっという間に財政破綻する」といった感じのことが書かれていました。どうやら筆者の工作は当たりだったようです。予想外に最悪の結果を招いてしまいましたが。
ちょっとプレイしてみた感じですが、今のところこれはかなり面白いのではないかという印象です。ステータスで各県の特徴を反映し格差をつけながらも、複数用意された勝利条件により地方でも十分勝てるよう考えられています。また、外交により厄介な敵同士を敵対させたり、妨害工作で弱らせたり、友好関係の県を強化したりとさまざまな戦術が取れます。
実際にプレイした人のツイートを検索してみたところ、「合併を繰り返して最初に始めた県と別の県になりながらもクリアした」「戦争は割に合わないので合併クリアはむしろ推奨されているのでは」といったものもあり、奥深さを感じます。従来の戦術シミュレーションゲームとは、一味違った遊び方ができるのかもしれません。
「覇県を握れ」はSteamで4200円(11月30日まで2940円)、DLsiteで4320円(12月6日まで3024円)で発売中。
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